惑星ツインブルー
惑星ツインブルーは、第三テスア星系に位置する、二つに並ぶ青い二重惑星の総称である。
かつて一つのガス惑星が分裂したツインブルーは、他のガス惑星と比べて、かなり小型である。
互いの重力に引かれて、二つの惑星を形成する蒼色のガスが放出され、それぞれの星を中心に八の字を描くその姿は、かなり美しい星の姿であると言える。
そして今、一隻の宇宙船が長いワープ航行を終え、銀色に輝きながら船は高次元となるワープ空間から通常空間に実体化、ツインブルー付近の宇宙空間へと出現した。 宇宙船はツインブルーの片方の惑星へと進路を向けて、船を進める。
向かう先は、惑星上に浮かぶスペースコロニーだ。
ドーナツ型の居住リングを持つ、トーラス型スペースコロニー。中央に長く伸びる太いハブと、そこから幾筋も放射状に延びリングへと繋がるスポーク、この全体像を見るとキノコの一種に見える。
このコロニーは重力制御装置が開発される以前の、リングの開店による遠心力で重力を形成するコロニーであり、建造後数百年経った今でも、改修され続けながら使われている。
その大きさはかなり巨大であり、コロニーのハブへと接近する宇宙船を比較しただけでも、まるでアリと電柱のスケールだ。
接近した宇宙船に反応し、ハブの側面ハッチが開き、そこから一対の誘導レーザーが伸びる
宇宙船は誘導に従ってハッチを潜り、ハブ内部にある宇宙港に入港した。
宇宙港に停泊した船から、フウマ達はデッキに降りる。
周囲は無重力により、多くの宇宙船が内部の壁面一面に繋がれている。一方でデッキには重力制御装置が埋め込まれ、小規模ながらも発生される重力により、デッキの上では地上と同じように歩くことができた。
この場所も、かつてコロニーに改修が施された一つである。
彼ら三人の他にも、道の広いデッキには、別の宇宙船に乗り降りする何人もの人間もいる。
フウマは長いデッキの上を歩きながら、前方後方、上下に並ぶ船を見てまわった。
「……どうしたの? そんなにキョロキョロして」
「せっかくだから、先にどんな機体があるか、レースの前に見たくてね」
「へぇー。確かに、私も少し気になるわ。メカニックの端くれとして
、どんな機能や構造を備えているか、そしてレーサーが機体をどうチューニングしているか、それにね……」
どうやらメカニックとしてのスイッチが入ったらしい、ミオは機体の重量とエネルギー出力性能の比重についてや制御システムについてなど、専門的な事を熱を入れて語り出した。
そんなミオと、彼女にたじたじとなっているフウマに、リッキーは愉快そうに笑う。「
「選手の機体はここじゃないぜ、小型船の停泊区域は別の場所さ。まぁ、そう急がなくても、すぐに見られるさ」
彼は上を指さす。
「会場はこの遥か上、コロニー最上階の多目的ドームだ。時間を考えれば、まだオープンセレモニーには、少し早い。上手く行けば、先に来ている選手とも会えるかもな」
ミオはフウマに笑いかける。
「良かったじゃない。フウマは他のレーサーよりキャリアも少ないし、互いに知り合えるいい機会でしょ?」
「そうだなミオ、この際だから僕の存在を、レーサー達に知らしめてやるさ」
三人そう話していると、前から一人の男が歩いて来た。
体格の良い壮年の男性、彼はフウマ達に話しかける。
「久しぶりだなフウマ、それに、リッキーも。君たちにこうして会えて……私も嬉しい」




