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テイルウィンド  作者: 双子烏丸
第三章 新たな強敵達
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想定外の状況


 車やバイクが多く走る街の中央道路を、バイクは走る。

 この道路はタイヤ付きの地上走行車両向けの道路であり、上空にもエアカーの列が、幾筋も交差しながら飛び交っていた。

 向かうは街の南部、宇宙港を目指してフウマは急ぐ。

 やがて、目の前に円形のターミナルと、広大な飛行場に、幾つもの宇宙船の影が見えた。

 フウマは広い飛行場の敷地を迂回し、裏口から中へと入ろうとした。

 裏口には警備員がおり、バイクに乗るフウマを止めた。

「失礼ですが、許可証はお持ちでしょうか? 関係者以外は飛行場への入場を禁じていますので」

 フウマはヘルメットのバイザーを上げ、顔写真付きの許可証を見せた。

「ここの六番ドックを借りているフウマ・オイカゼだ。普段の恰好じゃないけど、急いでいるんだ、入場には問題ないだろ?」

「失礼しました。身元も確認できましたので、どうぞお入り下さい」

 警備員の許可も得たことで、フウマはバイクに乗ったまま飛行場へ入り、貸しドックへと急ぐ。

 


 ようやく六番ドックにたどり着くと、そこには黒塗りのエアカーが一台、ドックの前にとまっていた。

 それは学校前にあった、あの車と同じものであった。

 バイクから降りると、フウマは車へと近づく。

 しかしそれでも、周囲の様子は静かであり、何か異変が起こっているかのような様子は、全く感じられない。目の前のエアカーにすら、変化らしきものはない。

 そしてエアカーの傍まで来ると、前部と後部のドアの右片方が開けっ放しにされ、その上助手席の窓が割られていることが分かった。

 どうやら、何か起こった後らしい。フウマはまず、開けられたままのドアから後部座席の中を覗いた。

 すると――――、そこには座席で寝そべって意識を失っている、ミオの姿があった。

 フウマは急いで彼女を抱き起す。

「大丈夫? しっかりしてよ、ミオ!」

 心配しながら彼は様子を確認するが、ミオにはどこも怪我はなく、命にも別状はない。ただ、彼女は気絶しているだけだった。

 少し一安心した、そんな時。

「んっ……」

 ミオの瞼が僅かに開き、口元から声が漏れる。

「……あっ、フウ……マ?」

「良かった、目が覚めて。その、調子は?」

 まだ少し朦朧としながらも、ミオは座席から起き上がった。

「私は、平気よ。それよりも……テイルウィンドが」

「分かってる。だから、ここまで来たんだ」

「ごめんなさい、私がもっとしっかりしていれば」

 ミオは、こうなったのは自分のせいだと感じたのか、しゅんとしている。

「違うよ、ミオのせいじゃないさ。そんな事より…………無事で本当に良かった」

 フウマは優しく笑って、あまり無理はしないでと伝える。

 そして今度は、前部座席の方を確認した。

 運転席には誰もおらず、空だった。

 しかし助手席の方には、前に謎の機械装置が設置されており、一人の黒服が席に座ったまま、その装置に突っ伏して気絶していた。

 窓ガラスが割られていた事から察すると、何者かがこの黒服に襲い掛かった後だと、フウマは推測した。

「これは? フウマがやったの?」

 ミオは驚いて、彼に尋ねた。

「まさか! こんな荒っぽい真似、僕に出来ると思う?」

「あっ……それもそうね」

 車にいる黒服がこうなっているのなら、一体、ドックはどうなっているんだ? もしかすると――

 フウマは早速、ドックを調べに行こうと考えた。

「確か、君が襲われたのはドックの中だろ?」

 ミオは頷いた。

「うん。私は抵抗したんだけど、いきなり気絶させられて……」

「成程ね。なら僕は、今から中を調べに行くよ。テイルウィンドの事だって、気になるし」

 ドックへ向かおうとするフウマを、彼女は引きとめようとする。

「待って! 駄目よ! だって中の様子も分からないし、とても危険だわ」

「心配しなくても、危なくなったらすぐ戻るさ。ミオはそこで待ってて。しばらく経って戻らなければ――警察に連絡を」

 そう言うとフウマは一人、ドックへと向かう。



 フウマは音を立てずに、こっそりとドックの中へと入る。

 ドックの扉は、半開きになっていた。これは、あまりにも不用心すぎる。

 中の様子も静かで、人の気配は感じない。

 周囲に警戒しながら、フウマは先へと進んだ。

 正面には三十メートルもの巨体を持つ、テイルウィンドの姿がある。

 とりあえず、今のところ無事らしい。

 ――やはり、誰の姿も見えないな――

 そう思いながら歩いていると、足元に何かがぶつかる。

 下を見るとそこには、先程と同じ黒服の男が倒れていた。

 顔には大きなアザがあり、何者かに強く殴られたかのようだ。

 その後辺りを探すと、全部で三人の黒服が、ドックの中で倒れていた。

 ――これで全員か。一体、ここで何が起こったんだ? それにこの男達は? ――

 この不可解な状況に、フウマが思い悩んでいた時……

 突然テイルウィンドの影から、巨大な物体が現れ、後ろからフウマを組み伏した。

「くッ!」

 いきなり強い力で抑えられ、思わずフウマは呻いた。

 ――まさか、まだ残っていたなんて! 僕が、考えもなしに行動したから――

 彼が自分の行動に悔いていると、ふと後ろの何者かが話しかけた。

「何だ、チビ助のフウマか。てっきり奴らの仲間だと思ったぜ」

 その声とともに力は緩み、フウマは解放された。

 自分の事をチビ助と呼ぶこの声…………。それが誰か、彼はすぐに気づいた。

 フウマは後ろを振り向いた。

 そこにいたのは、かつて戦った強敵――リッキー・マーティスだった。

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