缶コーヒーを買って飲むだけの簡単なお仕事
更新したりしなかったりですがよろしくお願いします。
謎のコメント主からの贈り物を受け取ってから一夜が明けた。
今日は三郎にとって初の仕事の日だ。
しかし内容は缶コーヒーを買って公園で飲むという至極簡単で意味不明なものである。
三郎は部屋の奥底からがま口の財布を取り出し小銭があるか確認した。
外に全く出なくネットショッピングしかしない三郎にとって現金は必要ない。
久々に小銭を手に持った程だ。
早いうちにその仕事と呼べるか分からないが相手の指示を完結させてしまいたいと思った三郎は目覚ましも早い時間にセットし起床した。
髪や髭は生え放題だがそんなことは気にしていなかった。そう思いながら三郎は財布を握りしめ公園へと向かった。
コメント主はもしかしたら外に誘きだして殺す算段かもしれないと必要以上に周りを気にしながら歩く姿は非常に滑稽なものだった。
公園は三郎の住むアパートから徒歩5分の距離にある。特に目立った遊具はないのだが立地もあり土曜ということなのか砂場で子供が数人遊んでいる姿と近くに母親と思われる女性が二、三人雑談をしているのが見える。
三郎は自動販売機の前に立ち適当な缶コーヒーを買った。
そして公園の中へ入っていく。
砂場で遊ぶ子供達を尻目にベンチへと向かっていく。
幸い誰も座っていなくすぐに腰を下ろせた。
三郎の浮浪者のような姿でただ缶コーヒーを飲む姿はさぞ周りの雰囲気からは浮いて見えたことだろう。
三郎は子供達の母親の話題が自身のことになっているのを感じながら缶コーヒーを飲み干した。
用も済んだ浮浪者風の男は自宅に戻ろうかとすると砂場とは反対方向の木陰に女性が一人いることに気付く。
女性も目があったからか三郎に微笑んだ。
木陰に立つ女性も三郎に負けず劣らず公園の雰囲気からは浮いていた。その年齢は20代そこそこと思われる彼女の服装は純白のワンピースに艶やかな黒髪と清潔感のある姿ではあるがただ何もせず立ち尽くしている様子は違和感がある。
三郎は女性のことが非常に気になったが周りの視線の冷たさの方が勝ったためそそくさと公園を後にした。
帰り道に三郎は思った。
(あの女が例のコメント主なんじゃ。俺を監視するためにいたと考えれば納得できる)
三郎は様々な推測をしながら自宅のドアを開けた。
すると三郎のスマホにメールが届く。例のコメント主からだ。
ブログのコメントでは他の人にも見えてしまうということからやりとりはメールですることになっていた。三郎はメールの文面を確認する。
『たしかに指示通りにしてくれたみたいですね。報酬として1万円振り込ませて頂きます。次回はまた来週お仕事をお願いしますね』