固有能力とうたた寝
「我が校が設立されて、今年がちょうど100年目となります。
遠い昔、まだ人々が陸にいた頃の感覚だと、創立100年の学園は珍しい事もあったそうです。
しかし、今は「海洋歴」です。
その海洋歴もまた、来年で2000年とゆう節目の年となります。
この華々しい節目の年より一足先に、我が校は新たな一歩を踏み出しました。
皆さんもよくご存知のように、
氷塊隕石の落下と、その氷塊から海に流出したウイルスにより、男性の出生率が激減し人類は格段に衰退しました。
その世界的危機からおよそ2000年。
決して短くは無い時間ですが、
確実に人類は変わっています。
それは世界という広い目だけではなく、
我が校も同じです。
皆さんもご存知でしょう。
今年から、このアプサラス高等学校付属中学は共学となったのです。
中等部は36人の、高等部では6人の男子生徒が入学しました。
高等部に至っては「エヴォギア専科」になんと1人の男子生徒が入学しており、
新たに入学した彼ら男子生徒たちも、
これからの時代を担うにふさわしく、輝かしい成績を修めることが出来るように、
我々教師陣一同も、生徒同様に、切磋琢磨していく所存です」
学園長なる上品さをまとった女性が、凛としながらも優しい声で、全校生徒へ演説をしている。
さすがに眠いね。
それに専科の男子ってマジで俺だけなのか…。
〜〜〜〜〜
入学式自体は、まぁよくある普通のもので、
学園長を始めとした、アプサラス全体の偉い人やらなんやらの挨拶、新入生挨拶、その他学園における最低限の校則などなど、
つまりは眠くなる行事だった。
1時間ちょっとの間、
意外と尻や腰に優しい、クッション性のある椅子に座り続け、
式の後はそれぞれ割り振られたクラスへ行きホームルームを行う。
うん、至極普通の流れだ。
このまま普通の流れを汲んで、帰りたいものだ…。
「17時まではまだ時間がありますが、何か準備するものはあるでしょうか?」
ニャルの予想は的中し、俺たち3人のクラスは同じであった。
「準備つってもなぁ…まぁ最終調整くらいかなぁ?
とは言っても、固有能力の適正はまだ出てないしな…」
「まったく。ターニャさんはなんでずっとファウンギアなどで…固有能力も無いんじゃ勝率が下がるのは必然じゃないですか…」
固有能力。
エヴォギアの特殊性を示す1つの能力だな。
カスタムパーツやら調整ではどうにもならない物で、
要するに、
戦闘データから割り出した使用者に適した能力だ。
こればっかりは用意しようにも用意できない代物だからな…。
なんせ、
いつ発現するか分からない。
発現後は使える様になるが、使える様になるまでは使えない。
まぁそんなとこだ。
更に言えば、ファウンギアのシステムの中…いわゆる「ブラックボックス」の中に固有能力に関する情報があるわけで、
まぁ巷の噂だと、カスタムの仕方も固有能力発現に一枚噛んでいる可能性が高い、とか言われてるしな…
その噂が本当なら、ターニャが固有能力を使えるとは思えないし…実際、調整した時にそんなデータは無かった。
「まぁターニャ自身の戦闘センスに頼るしか無い…かな」
当の本人は、俺の後ろで寝てやがる…。
その寝顔がやたらと幸せそうで、且つ、ヨダレなんか垂らして嫌がるので、
なんかイラッときた俺は、彼女に対してそれなりの威力の鉄拳を与えてやった。
「ひぎぅ!!??
な、なにするのよ!アラタ君!!」
「なんか良い夢みてる感じだったから」