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駐在所

「死んでいる彼が発見された時、玄関に鍵がかかってなかったの?」

それを聞いた時、私は愕然とした。

「だったら自殺じゃないかもしれないじゃない。誰かに殺されたのかもしれないじゃない。」

私の剣幕に怯えてしまった哀れなコンちゃん。

「あっ、そっか。でも警察が自殺と断定したから…」

「なんで警察は自殺と断定したの?」

「それは知らない…」

コンちゃんといい、アッキーといい、なんでこんなに頼りないの。当てにならないの。全く自殺する兆候なんてなかった。遺書もなかった。それで玄関に鍵がかかってなかったのなら、殺人の疑いがあるじゃない。なんで警察が自殺と断定したか知りたくないんだ。

「よし!警察に聞きに行く。」

私は単刀直入な性格だ。

「はっ?警察ってどこの警察だよ。」

「翔のアパート近くの駐在所。」

言い忘れたが私たちは地方に住んでいる。特に翔はゴルフ場に勤務する為、まだ駐在所がある田舎に住んでいた。さすがの私も警察署に乗り込む度胸はなかった。”駐在所”と聞いたらハードルが下がったのか、アッキーが意外な一言を言った。

「俺も一緒に行くよ。晴ちゃん同じ一人に行かせるわけにいかないし、晴ちゃんの話聞いて俺も警察に聞きたくなったし。」

結構男らしいことも言うじゃん。かくして私たちは駐在所へ向かうこととなった。

2月の寒い日二人は車の中にいた。いつもなら芸能人のスキャンダルだのその日のトップニュースだのをしゃべりまくる二人なのだが、その日だけはどちらも何も語らず無言だった。車は田舎道を行く。アッキーは駐在所の前で車を停めた。

「すみません。」

駐在所の中にはいかにも人の良さそうな40代くらいの警官が一人書類を書いていた。私はいきなり切り出した。

「先日この近くのアパートで自殺した田益翔の友人です。亡くなった知らせは他の友人からもらいましたが、その友人も細かいことは何も知らず、おしえていただきたいことがあって伺いました。」

「おしえてもらいたいことと言いますと。」

「翔の遺体が発見された時、玄関の鍵が開いていたと聞きました。それなら殺人の可能性もあると思うのですが、警察はなぜ自殺と断定したんですか。」

いきなりな私に警官は驚いたようだった。多分個人情報の関係で漏らしてはいけないこともあったと思うが、私の勢いに圧倒され口を開いた。

「発見した友人二人が日頃から自殺するんじゃないかという様子があったと言うんでね。あの日も何度も電話して出ないんで、もしやと思いアパートを訪ねたそうで。」

日頃から?翔から受けた傲慢な印象とはあまりにも違う話に私は困惑した。発見者の二人が嘘をついているんじゃないかとさえ思った。

「発見したお二人はアパートの中に入ったんですか。」

「いや。玄関を入ってすぐの所で死んでいる田益さんを発見して、驚いてすぐこの駐在所へ知らせに来たと言ってましたよ。お二人の話を聞いて、私はすぐアパートへ向かいました。玄関を上がってすぐの所にトイレのドアがあって、そのドアノブに紐をかけて座るように首を吊ってました。まるで眠っているような安らかなお顔でしたよ。」

「安らかって…睡眠薬でも飲んでたんですか。」

「睡眠薬は飲んでませんでしたが、たいぶ酒を飲んでいたようです。飲まないとあんなことできなかったんでしょうね。鍵をかけなかったのも、もしかしたらすぐ誰かが見つけてくれて、助かったらと思う気持ちがあったからでしょう。」

なるほど。警察はそう判断して自殺と断定した訳だ。親族とは疎遠で最近の様子がわからず、発見した友人二人の証言だけでかたずけてしまったということだ。私はますますその二人に疑いと怒りが湧き上がり、痛いくらいに握りこぶしを作っていた。もしや遺書はあったのにその二人が処分したんじゃないか。まさかその二人が…

帰りの車で急にある考えが浮かんだ。

「アッキー、私発見した二人に会いたい。」

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