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少年探偵とサイボーグ少女の血みどろ探偵日記  作者: 小夏雅彦
第二章:黄と赤と幻の都
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09-VSトキシックロスペイル

 僕は危険な汚濁を放つロスペイルを睨んだ。

 向こうも構えを取り、僕を待つ。


「逃げてください、エリヤさん。その男のことは頼みましたよ」

「任せた、虎之助くん。そいつの汚濁液には触れるな、溶かされるぞ」


 僕が頷くのを見ると、エリヤさんはクーを促し男と共に屋上に向かった。

 僕とトキシックロスペイルは静かに睨み合う。


 不意に、相手が口を開いた。


「その姿、知っているぞ。ジャッジメントを殺した鎧の男。

 まさか俺の前に現れるとは」

「僕のことを知っているようだな。そして、ジャッジメントのことも」

「そうとも、俺は詳しいのだ。あの爺さんも関係のない奴じゃあないからな」


 ジャッジメントだけでなく、その正体である野木楽太郎も知っている。

 何者だ。


「ジャッジメントのことを知っているなら、話は早い。

 惨たらしく死にたくなかったら、そこを退け。

 色々とごたついているからな、お前を殺しに戻ることはないだろう」


「ふん! 老いぼれの新入りを殺した程度でいい気になるなよ!

 この『十三(アンダー・ザ・)階段(サーティーン)』にとってみればあの爺など|新入り(ニュービ―)もいいところ!

 貴様に味合わせてやるよ、ロスペイルの真の恐ろしさをな!」


 アンダー・ザ・サーティーン。

 聞いたことのない名前だ。あの『目』のシンボルを持つ組織、それと関係があるのだろうか? 少なくともあの男とトキシックとの関係は雇用以上のものではあるまい。上位存在がいるはずだ、確かに。


 思考を断ち切るようにトキシックが動いた。

 重厚な肉体からは想像も出来ぬほど素早く、そして鋭い攻撃。ネコめいて指を広げ振り払う攻撃を、僕は回避しつつ後退した。常人ならば有り得ない構えだが、しかし奴には無敵の汚染物質がある。受け止めたが最後、僕の装甲を確実に焼き溶かし、内部の僕を殺しにかかるだろう。


「フハハハハ! どうしたどうした!

 避けているだけじゃ勝てねえぞォーッ!?」


 トキシックが広げた指を袈裟掛けに振り下ろしてくる、ここだ!

 僕は拳を握り込み、振り上げた。垂直方向からの打撃は打ち下ろしのパワーと衝突することになり、打撃力は半減するだろう。だから僕は横合いから拳を打ち込むことにした。指を完全に破壊しようという攻撃に気付いたトキシックが腕を引いた、ならばそれはそれでよし!


 アッパー気味に振り上げた腕を振り下ろし、ハンマーパンチを繰り出す。トキシックは首を振り頭部への直撃を避けるが、代わりに首筋に手痛い一撃を喰らう。続けて上体を前方に傾け、高速の肘打ちをトキシックの顔面に叩き込む!


「グワーッ!」


 鼻の辺りを潰されたトキシックは顔面を押さえ、たたらを踏んだ。止めの一撃を繰り出そうとするが、しかし汚染物質が先んじた。僕の目の前に黒い池が出来上がり、コンクリートを焼いた。あんな物の直撃を受ければ、エイジアとて無事では済まないだろう。


「テメーがどんだけ頑張ろうがよォーッ……

 俺のトキシック拳は無敵なんだよォーッ!」


 トキシックは拳を打ち付けた。背中のタンクがゴウンゴウンと音を立て震え、そしてトキシックの拳が汚染物質に覆われた。何たる禍々しき拳、トキシックはそれを振るう!


 バックステップを打ち直撃を回避、だが飛沫がエイジアの装甲を焼く。大きなダメージを受けているわけではない、だが連続攻撃を受けるのは危険だ。僕は腰を落とし、トキシックの攻撃を赤熱拳で迎え撃つ!


 汚染物質は高熱であぶられ白煙を立てる。

 だが、無くならない。むしろ増えて行く!


「なにィーッ……!」


 逆に浸食され、エイジアの拳が抉れて来る。僕は拳を引く、そのタイミングを見計らい、トキシックはヤクザキックを放った。重い蹴りが僕の腹に炸裂する! 吹き飛ばされながらも空中で一回転、体勢を立て直し、窓際辺りに着地する。


「テメーの攻撃は既に見切っているんだよ、エイジア!

 こいつは融点が高い物質で作ったナックルでな!

 手前の炎なんぞ、まるで問題になりゃあしねえんだよ!」

「……そうか、面白い能力に面白い人格。

 なかなかやり合っていて楽しかったよ」


 僕は装甲を分解し、一本の剣を作り出した。

 大きく湾曲した偃月刀めいた剣を。


「剣一本でトキシック拳を破ろうってのか!?

 舐めた真似をしてくれやがる!」


 トキシックは僕に向かって突進してくる。僕は一歩踏み出し、そこを軸に回転。遠心力を込めて、作り出した偃月刀を――投げ放った!


「何だと!? 気でも狂ったかァーッ!」


 トキシックは反射的に身を屈め、それを避けた。僕に向かってスピードを落とさずに突っ込んで来る。武器生成のために薄くした手甲では、敵の攻撃を止めることは出来ない。


 だが、これでいい。

 必要なのは敵の後ろを取ること。そして僕を一撃で殺せると思わせること。トキシックの背後で、投げ放った偃月刀は軌道を変えた。刀身の先端に設置したブースターが作動したのだ。僕が手を放してから3秒後に点火するよう設定しておいたのだ。クルクルと回転しながら、偃月刀はトキシックの首筋を切り裂く!


「グワーッ!?」


 トキシックの首筋から汚濁のスプリンクラーめいて放出される。それは辺りのものを出鱈目に破壊し、焼き溶かした。同時に、腕に纏わりついた黒い汚濁の濃度が低下していく。やはり、トキシックはあそこから攻撃用の汚染物質を送っていたのだ。


 僕はトキシックの左側に回った。奴はいま左手で首筋を押さえている。顔面に向けて放った右フックは、あっさりと命中した。左側に流れて行く体、僕は腕を引き電熱剣を生成、トキシックの左肘を切った。腕が吹き飛び、鮮血が宙に舞う。


「ギャオワァァーッ!?」


 トキシックは苦し紛れに膝蹴りを放った。僕はそれを真正面から抱え、持ち上げた。トキシックは背中から床に落ちる、僕それでもなお押し込んだ。膝関節が折りたたまれ、折れた。悲鳴を上げるトキシックのマウントポジションを取り、拳を振り上げた。


「これがベテラン殿の実力か。

 よく分かったぞ、アンダー・ザ・サーティーンとやら」

「待」


 トキシックの右肩に電熱剣を突き込み、切断。絶叫を上げるトキシックを黙らせるべく、何度も拳を振り下ろした。満身創痍のトキシックは抵抗らしい抵抗をしない。


「さて、洗いざらい吐いてもらうぞ。

 お前たちはいったい何者だ?

 アンダー・ザ・サーティーンとは?

 ロスペイル化の技術を研究しているようだが、何をする気だ?」

「ッハッハッハ! 言うと思っているのか、バカめ!

 俺は誇り高き地獄の十三人!

 アンダー・ザ・サーティーンのクルエル!

 貴様などに口は割らんわいッ!」

「なるほど、では苦しんで死にたいと思える。イヤーッ!」


 時間の無駄だ。全力の拳をクルエルの顔面に叩き落とした。エイジアのパワーを受けクルエルの顔面が押し潰れ、そして爆発四散した。僕は立ちあがり、周囲を見る。


(ミスったかもしれないな。

 あるいはこれもあいつの予想通り……?)


 トキシックが撒き散らした汚濁のせいで、室内は酷い有り様になっていた。これでは機密情報も無事では済まないだろう。そして、眼下の処理場からは至る所から火の手が上がっている。崩壊も時間の問題だ。


「アンダー・ザ・サーティーン。

 十字眼のシンボル。

 ロスペイル……!」


 だがその前にやることがある。壁際にあった緊急避難ボタンを押すことだ。導線がまだ繋がっているかは賭けだったが、幸い警報ベルが鳴り響いた。粉末消火器の白い煙が処理場内の至る所で上がった。パニックが起こり、死人が出るかもしれない。しかし。


 僕は地を蹴り、中央監視塔から脱出した。ほとんど同時に塔が爆発した。着地し、一瞬空を見上げると、脱出していくエアプレーンが見えた。僕は走り、跳んだ。地獄から脱出するために。


 蛇のように迫り来る炎を振り切り、正気の世界へ!


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