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少年探偵とサイボーグ少女の血みどろ探偵日記  作者: 小夏雅彦
第二章:黄と赤と幻の都
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07-東の果てへ

 黄の戦士、セラフ。正体不明の赤い戦士。

 何が起こっているんだろう、この街で。


 とにかく、一度集合しなければ。携帯端末でエリヤさんとクーに連絡を送り、僕は御桜さんを探した。人波に飲まれて怪我などしていなければいいのだが、と思っていたがそれは杞憂だったようだ。御桜さんは道の片隅に立っていた、あの時のまま。


「御桜さん!

 大丈夫ですか、怪我とかしてませんか?」

「結城さん……うん、あたしは平気。

 心配してくれてありがとね」


 そう彼女は力なく笑った。

 今回の件は、彼女にとってもショックが大きいのだろう。


「帰りましょう、家まで送りますよ。

 お父さんとは連絡が取れましたか?」

「うん、ギリギリのところで市庁舎に逃げ込めたって。

 何だか変なもの見たって言ってて、大分混乱してるみたい。

 うん、おかげさまで家族一同、何ともなかったよ」


 よかった。僕たちは二人を待った。周囲の喧騒が、まるで別世界で起こっていることのように感じられた。僕と御桜さんは押し黙り、それをぼんやりと見ていた。


「……結城さん、あなたが変わったあの姿って、いったい」

「やっぱり、見られてたか。

 他の人には言わないで欲しいな、厄介なことになる」

「分かってるって、言いませんよ。あなたはずっと、その……

 あんなのとの戦いを?」

「ええ、ここ半年ばかりずっと。

 こんな日にこんなことになるとは思ってもみなかった」


 あの5体のロスペイルを召喚したのは、セラフだ。クローカーの時と言い、彼は人の命をまるで考慮していない。むしろ要道のために積極的に殺そうとさえしている。


 許せない、あの男。

 必ず見つけ出して、この報いを受けさせてやる。


「ずっと結城さんはあたしたちのことを守ってくれていたんだね」

「守り切れたわけじゃないよ。今回だってそうだ。

 僕は結局、間に合わない」

「そんなことないですよ。

 あたしも他の人も、あなたがいなきゃ死んでましたから」


 御桜さんは僕の顔を覗き込んだ。

 碧色の綺麗な目で見られて、ドキッとする。


「あなたはあたしたちにとっての、ヒーローですから」


 英雄(ヒーロー)、違う、救い主(ヒーロー)、か。この言葉に囚われて、歪んでしまった人を僕は知っている。なるほど、確かに心地いい。求めてしまうのも分かる気がする。


「おっ、いたいた。

 すまんな、どうも面倒なことになっていたみたいだな」

「と、トラさん大丈夫ですか!?

 どこか怪我とか、してないですか?」

「落ち付いて、クー。

 ロスペイル相手に怪我してたら僕はとっくに死んでるから」


 狼狽するクーをなだめつつ、僕は御桜さんに二人を紹介した。気さくで人当たりのいい御桜さんは、すぐにエリヤさんにも気に入られた。僕たちは御桜さんをウェストエリアに送ってから、事務所に戻って行った。




「エラいことになったなぁ。無事に帰って来れたようで何よりや」


 ごく自然に不法侵入をしていたエイファさんが僕たちの労をねぎらい、合成コーヒーを淹れてくれた。苦い液体を喉に流し込み、思考を整理する。それにしても、不味い。尾行の間それなりにいいコーヒーを飲んで来たのが響いているのだろうか。来客用に上物を揃えておくよう、エリヤさんに進言しておくべきだろうか?


「まず今回の事件を整理しよう。

 セレモニー開催の直前にファイアロスペイルが出現。

 結構な数の市民が被害に遭って、死人もおる。

 それをエイジアが市庁舎前まで運んだ」


 やはり死者が出ていたか。

 セラフの残虐さに、僕の弱さに怒りが湧き上がる。


「市庁舎前の戦闘で、正体不明の赤い戦士……

 恐らくロスペイルが介入。

 直後にセラフを名乗る敵が乱入して来て、ロスペイルを呼び出した」

「エイファさん、セラフがどこに逃げたか分かりませんか?」

「都市の監視網は絶対やない。

 死角に入られたらそれ以上の追跡は不可能や」


 エイファさんは首を横に振った。

 さすがに、そう簡単にはいかないということか。


「ただ、セラフを名乗るテロリストの存在を確認することは出来た。

 これを見てみぃ」


 エイファさんは紙束を取り出した。それは警察のデータをプリントアウトしたものだった。人目に触れればヤバいタイプのものだ。ここ数週間で、都市の大物が何人も殺されているらしい。やはり、あの会合に関係する人間が殺されているようだ。


「ドーンオブナイトメアって、どういう性質の組織なんですか?」

「現在この世は闇に包まれておる。

 そこに経済という名の光をもたらす……やったか?

 宗教的やが、やっていることはただの政治結社と変わりはないはずや」

「主催者であるオーリ=ガイラム氏の情報は何かありますか?」

「実のところ、ガイラムの情報は殆どない。

 経営者と思ったんやけど、そんな名前で登録をしておる奴はおらん。

 まあ、謎だらけやな。胡散臭さじゃ誰もあいつには勝てん」


 僕は少し考えた。正体不明の主催者、オーリ=ガイラム。彼が主催する政治結社のメンバーが、続けて殺されている。その裏に隠された真実とは、いったい?


「……オーリ=ガイラムはロスペイルについて何か知っているのか?」

「あるいは、あいつが意志を持つロスペイルを作り出してる元凶かやな」


 なら、セラフが彼らを狙うのはロスペイルを殺すため?

 やはり確証が持てない。


「やっぱり考えているだけじゃダメだ。実際的な情報を手に入れないと……」

「やはりあいつを追うしかないな。実は、ノア=ホンについて動きがあった」


 エイファさんはノアのメールを違法に受信しており、その情報を僕たちに見せてくれた。それによると、彼は明日の約束すべてキャンセルしてある場所に向かうらしい。


東端(イーストエンド)……鉱山開発地区にいったいどんな用があるのでしょう?」

「さてな。だが、臭うのは確かや。行ってみるしかないんやないか?」


 今回の件で危機を覚えた相手が、何らかの動きを見せようとしているのかもしれない。例え無駄だとしても、重ねていくしかない。次の目的地はイーストエンドだ。


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