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少年探偵とサイボーグ少女の血みどろ探偵日記  作者: 小夏雅彦
燃え上がる怒りと憎悪の炎
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14-シティ総力戦

 僕は右手をオリジンに向けた。掌に小さな重力スフィアが生成される。僕はそれを追陣に向けて放った。オリジンは黄金に輝く障壁を展開する、だが障壁は重力球によって歪まされ、それを通した。体表で重力スフィアが炸裂し、小さな傷が穿たれる。


「なるほど、ダメージを受けていないわけじゃなさそうだな。だけど……」


 穿たれた傷が急速に塞がって行く。さすがはロスペイルの頭目、これまでも敵が持っていたような力は持っているということか。オリジンの体からいくつもの目が現れ、僕達を射竦める。眼球が光り輝き、そこからいくつもの光線が発射された。


「ウワッ! あれはさすがに、気持ち悪いですよ!」


 光線を寸でのところでかわしながら、僕達は更に接近する。避けられないスピードではないが、当たれば即死は免れない。これでもまだ寝起きなのだろうか、完全覚醒すればどれほどの被害がもたらされるか、想像することさえ出来ない。

 クーがミサイルを発射し、僕が小刻みな重力スフィアを放つ。オリジンは尚も金色の障壁を展開し防ごうとするが、しかしスフィアによって開けられた穴を掻い潜り、クーのミサイルが体表でいくつも爆発した。オリジンは苦し気な悲鳴を上げる。


「よし……! 効いている、押し込めるぞ! クー!」


 そう思った。だが、それはまだ早かったようだ。オリジンが開いた目をすべて閉じると、オリジンの体を光の輪が包み込んだ。輪は段々と広がっていき、広がって行くにつれてそれがいくつもの光球が高速で周囲を旋回しているものだと分かった。あまりにも早すぎて、僕達の目には残像しか映っていないということだろう。

 光球は翼を持った怪物の姿を取った。オリジンの持つ、ロスペイル生成能力だ。光の怪物は僕達に向かって真っすぐ飛び、格闘戦を仕掛けて来た。


「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」


 そこかしこで裂帛の気合(シャウト)が聞こえて来る。飛び込んでいた怪物の放った蹴りを上から叩き落とすようにして防ぎ、更にそこを軸にして前転。跳ね上げた足で情報から強襲を仕掛けて来た怪物の首を叩き折り、蹴りを放った怪物の後方へ。

 クーはチェーンソーブレードを展開し、迫り来る怪物の腕を、足を、体を、頭を切り払った。一体一体の力はそれほど強くない、せいぜいが武装ロスペイルくらいだろう。だが、それらの端末を使って時間稼ぎをするのがオリジンの目的だ。事実、先ほどの攻撃によって与えたダメージが徐々にだが復元されつつある。僕は歯噛みした。


「放っておくわけにはいかないが、しかし相手をしていると……!」


 光のロスペイルたちは徐々に数を増やしつつある。

 このままでは……


 そう思っていると、けたたましいローター音が聞こえて来た。そして、凄まじいモーター音。弾丸の雨が光のロスペイルたちを襲い、ズタボロにした。見ると、市長軍のマークを付けた戦闘ヘリが旋回しつつ航空支援を行っていた。


「市長からの要請でこっちに来てみりゃあ……!

 オイ、いったいあいつは!」


 オリジンはそれを嫌い、光の矢を放った。僕は重力スフィアを生成、軌道上に放った。過剰重力によって光さえも軌道を変えられ、攻撃は僅かにヘリを逸れた。


「光の怪物の相手をお願いします!

 オリジンには近づきすぎないようにして下さい!」

「分かっている、俺たちだってあんなのと打ち合うのはまっぴらごめんだよ!」


 ヘリパイロットとガンナーは笑い、僕達から少し遠ざかって行く。置き土産に対空榴弾砲を放ち、光のロスペイルたちを牽制するのを忘れない。更に続けて、地上からの支援砲火がオリジンたちを襲った。金色の障壁に阻まれオリジン本体に砲撃は届かない、だが光のロスペイルは防御のために動きを止め、そして障壁にもノイズが走った。


「どうやら、あの障壁には耐久限界みたいなものがあるらしいな。

 それならば……!」


 光の輪が地上に向けて放たれる。あれでどれだけのロスペイルが地上に放たれたのかは分からないが、しかし確実に空中戦力は減じつつある。僕は手甲を強化しながらオリジンに向かって飛んだ。目指すは黄金の粒子障壁、クーのミサイルが僕を援護する。


「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」


 粒子障壁上でミサイルが炸裂! 更に地上から放たれた曲射支援砲撃が障壁とぶつかり合う! 障壁は揺らぎ、その存在感を薄れさせる。僕は連打を障壁に向けて打ち込んだ。一撃一撃を打つごとに、手甲が削れていく感触があった。だがそれは徐々に弱まって行く。クーもMWSを腕に巻きつけ、渾身の力を込めて放つ!


「イヤーッ!」「イヤーッ!」


 同時に放たれた拳、そして再度の支援砲火が、オリジンの粒子障壁を一時的に無効化した。薄い皮膜のような粒子障壁は段々と再生していく、僕達はその隙間から内側へと入り込んだ。これならば障壁を使って僕たちを弾き飛ばすことは出来ない!

 光のロスペイルが呼び戻され、光線がオリジンの体から放たれる。僕達はそれをかわす、光のロスペイルはまだ遥か後方だ。陶器めいた体表に降り立ち、拳を振り下ろす。打たれた箇所がひび割れ、切られた箇所から光が漏れる。僕達は何度も、何度も、何度もオリジンに向けて攻撃を繰り返す! ゼロ距離では光線を放つことが出来ない、これなら!


 そう思った時、オリジンは身じろぎした。本能的な危機感を覚え、僕達は同時にオリジンの体を蹴り、後方に跳躍した。彼の体が波打ち、変形。鋭い刃が僕たちがいた場所を襲った。あそこに留まっていたら、串刺しになっていただろう。

 限界まで体を逸らしながら重力スフィアを生成、後方に放つ。粒子障壁をすり抜け入り込んできた光のロスペイルの心臓部にそれが撃ち込まれた。クーはガトリングガンとミサイルで入り込んで来たものを撃退。再び戦いは2対1に戻った。


 その時、不思議なことが起こった。光を放つオリジンの体が、内側に折り畳まれて行くのだ。僕達は目を見張り、それを見守った。迂闊に動けば死ぬ、そんな感覚があった。オリジンの体が100m近いそれからどんどんコンパクトになっていき、最終的には180cmくらいの大きさに変わった。もちろん、内在するエネルギー量は変わらない。


「……なるほど、存在を圧縮し力を収束させるための形態……

 あれがオリジンの本気モード、ってことか。クー、油断しないで。

 あいつはまだ、強いから……!」


 クーは無言で頷いた。人間大になったオリジンの圧倒的な力を感じているのだろう。彫刻めいた均衡のとれた体つき、いかなる生物であろうとも魅了するであろう力強さ。肉体は内側から発される光によって、極彩色の輝きを放っていた。


 オリジンは構えを取った。

 極めて攻撃的で、隙のない構えを。


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