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少年探偵とサイボーグ少女の血みどろ探偵日記  作者: 小夏雅彦
燃え上がる怒りと憎悪の炎
133/149

13-ミラー・イン・ザ・ワールド

 サンライトロスペイルが危険な光を放つチョップを繰り出して来た。僕はそれを屈んで避け、拳を跳ね上げた。アッパー気味の拳がサンライトの顎を捉える。


「イヤーッイヤーッイヤーッ!」「アバーッ!?」


 最初の二撃でサンライトの防御を崩し、最後の一撃で首を刎ねた。爆発四散しようとするサンライトの体を掴んだ。続けて放たれたレインメーカーロスペイルの攻撃を防ぐためだ。サンライトの体を雨傘めいて持ち上げる。


 レインメーカーは天井に向かって2つの大きな物体を発射した。花弁のような形のそれが開き、中からいくつもの散弾が吐き出される! 文字通り雨粒のように隙間のない攻撃をすべてサンライトが受け止め、そして爆発四散した。爆炎に紛れ僕は駆け出す。


「イヤーッ!」「グワーッ!」


 レインメーカーの胸に飛び蹴りを叩き込み、吹き飛ばす。壁に叩きつけられたレインメーカーをそのまま押し付け、顔面に何度も拳を叩き込んだ。


「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」


 レインメーカーロスペイルは爆発四散。これで艦内の防衛リーダーは倒した、あとはブリッジにいるガイラムのところに行くだけだ。僕はエリヤさんたちと別れ、ブリッジへと向かった。どちらか片方を放っておけば、必ずまた悲劇が繰り返されるからだ。


 それにしても、二人は『十三階段』の一人とは思えないほどの弱さだった。僕たこれまで戦ってきたロスペイルに比べれば雲泥の差。オーバーシアという巨大な敵に向けた僕の拳は、少なからず成果を上げていたのだろう。


(この先がブリッジだ。

 ガイラムが待ち構えているはず、決して油断するなよ)

「分かっている、朝凪さん。

 そっちも頼みましたよ、あなたが要なんですから」


 ブリッジの扉を警護するロスペイルはいなかった。大した自信のせいか、それともエンジンルームに向かっているのか。出来ることなら、前者であってほしいと願った。僕はブリッジの扉に手を置いた。軽い機械音がして、重い扉がモーター音を立て開いた。


「イヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤッ!」「イヤーッ!」


 開けると同時に、僕は大の字になって床に転がった。僕の少し上を、致命的な威力が込められた弾丸が通り過ぎて行く。開くと同時に攻撃してくるとは予想していたが、まさか本当にやって来るとは。開けたのが味方だったらどうするつもりだったのだろうか。


 四肢で床を蹴り体を持ち上げ、ブースターを生成し自らの体を押し出す。加速を乗せて放った拳を、しかしガイラムは容易く受け流し、回した。僕の体が空中でぐるりと回転し、制御を失った。ブリッジのコンソールに叩きつけられ、僕はようやく止まった。


「やれやれ、キミは人類の遺産を破壊しているという自覚はあるのかね?」

「あなたはその人類の遺産とやらに、僕を突っ込んだ自覚はあるんですか?」


 頭を振り立ち上がり、ガイラムを見た。奴はあの時と同じ、余裕を秘めた笑みを浮かべている。まずはこの面を歪ませるのが第一目標。そのために何をすればいいのだろうか。


「メルカバナインは単艦でシティの全兵力を破壊出来るだろう。

 完全にこれが浮上した暁には、オーバーシアの勝利は約束される。

 そして、それはもうすぐだ」

「残念ながらそんなことにはならない。

 こいつの結末は墜落、ただそれだけだ」


 ガイラムは苦笑して構えを取った。ゼブラと同じ構えを。


「その鎧を着るものは現実が見えなくなるのかな?

 10年前も同じ理想を、妄想を抱いて我々に挑みかかって来た者がいた。

 彼は我々との戦いに敗れ、無様に壊走し、そして死んだと風の噂で聞いている。

 負け犬らしい名誉なき死だとは思わないかね?」


 構えにはまるで隙がない。だが、それでもやるしかない。

 僕も構えを取った。


「現実を見ぬまま死んでいった連中のことならば、僕も知っているぞ。

 理想と妄想の区別がつかない、子供のまま大人なったような連中だ。

 薬物中毒者の方がまだ分別がある」


 ガイラムは不快そうに眉を歪めたが、それだけだった。僕の放つ殺気と、ガイラムの放つ殺気とがぶつかり合い、ただならぬ緊張感が辺りに張り詰める。そして、弾けた。


「イヤーッ!」「イヤーッ!」


 僕とガイラムは同時に駆け出した。両手に片刃剣を生成し、ガイラムに切りかかる。ガイラムはそれを硬質化、ソリッドの力で受け止め、跳ね除けた。僕はその勢いを殺さず転がり、素早い前転で体勢を立て直した。ガイラムの掌に危険な熱球が浮かび上がった。


「セプテントリオン+ベヒモス」


 プラズマ球体が大気を焼き焦がしながら僕に迫る。片刃剣を投げつけ球体を消滅させ、再びガイラムに躍りかかった。小刻みな刺突を繰り返し、跳ね除ける隙を与えない。


「いじましい努力。

 思うに格闘技と言うのは、力のない者の遊戯なのではないだろうか」


 僕とガイラムの間に光り輝く障壁が立ち上った。障壁は僕の剣を容易く受け止める。その隙にガイラムは連続バック転で僕との距離を20m以上離す。


「確かに美しい。芸術的とさえ言っていいだろう。だが戦闘には向かんな。

 真の強者には力の強さも動きの素早さも、何一つとして不要!

 この身から溢れ出す光があればいい」


 ガイラムの両腕に危険な光が収束し、それは細かな球体の形を取った。


「コンバット+サンライト+レインメーカー+セプテントリオン」


 まずガイラムの腕に虚像の銃口が浮かび上がり、そこにセプテントリオンのプラズマ球体とサンライトの光が宿る。ガイラムはそれを天井付近に打ち出し、レインメーカーの力で拡散させる。『白屋敷』で僕たちを追い詰めた力。だが、二度目はない!


「イヤーッ! イヤーッ!」「なにっ!?」


 レインメーカー本体の力も、先ほど見せてもらった。あの力は一定距離を飛んでから炸裂する、ならば炸裂する前に打ち落としてしまえばいい! 二本の短刀が光球に向かって飛んで行き、命中。炸裂しかけたそれを爆発四散させた! 光の中僕は駆ける!


「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」


 繰り出して来た策が実を結び、ガイラムの顔面に拳が突き刺さる!

 しかし!


 甲高い音を立てて、ガイラムの体が砕けた。いや、これを僕は前に……


「残念だったね、虎之助くん。

 いままでキミが相手にしていたのは、私の虚像だ」

「……マジか」


 隣を見ると、5人のガイラムがいた。

 彼らはそれぞれ別々の構えを取っている。


「映し出せるのは何も他人だけではない。

 そして私の鏡が映し出すのは真実だけだ」


 彼らは一斉に飛びかかって来た。

 打開策は……? まるで思い浮かばなかった。


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