幣経物語
祇園精舎の金の声、商業無情の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。おごれる成金も久しからず。ただ春の夜の夢のごとし。政商等も遂にはほろびぬ、ひとえに風の前の塵に同じ。 多くの銀行が倒産した。
人々は失業し、街は荒れた。貧困層が多くなり不良が溢れた。
国の借金は年々増加し、その有り様日を負うて苦しくなる。
税金は高い、そしてなおかつサービスが悪い。
多くの人間が戸籍を登録しなくなった。悪雲が空を覆い続けていた。怪しいオーラが取り巻いていた。
私は元銀行員だ。メガバンクで出世ルート一直線であった。
当時は儲かっていた。しかし、アイツらのせいで…俺達の銀行は、俺達の銀行は!
あれは2347年の事だ。当時、我が国は順調であった。経済格差は比較的無くなっていった。素晴らしい政治家による統治が行われていたのだ。今澤新三郎総合行政官が治めていた。
経済は潤い、不良も居なかった。黄金の時代であった。
しかし、今澤はいい人であったからスキャンダルを否定できず、総辞職してしまったのだ。
次に出てきた奴が、我々を破滅の道に誘い込んだのだ。
鍬嶋タケル…名目上は政党として活動している統一連盟会、通称統連の党首である。
しかし、奴等は政治家というものではない。
鍬嶋会の初代と名乗っており、暴れまわる悪党である。
警察のトップの船木仁は鍬嶋会より送られた警察を無力化させるために送られた人であるという噂が流れている。
彼、鍬嶋は殺人は起こしていないが、強盗はしていた。1年刑務所に入るべきところを半年で抜けられるという奴であった。船木による命令だからだ。
「どうも。皆さんこんばんは。統連の代表の鍬嶋タケルです。この度は更なる飛躍の為に是非我が党に票をお願いします!」
当然、票は入ると思わなかったが、何と第一党になってしまった。
そしてあの事件が起こったのだ。
「なぁ、来栖よ。命令だ!未来活性銀行を潰せ!」
「ですが!何の恨みがあるんですか?総理。」
「さっさとしろ!じゃなかったらお前をこの議事堂の下に埋めてやろうか?」
「い、いえ。そ、それは。止めてください。」
「わがっだよ。じゃあな。これを記者会見で読め。アイツらは党運営に支障をきたす団体に金を貸しているんでねぇ。宜しくな。これでクリーンな政治を行えるぜ。」
そして、「では、鍬嶋首相より重大なお知らせが有ります。」
「私、内閣官房長官を務めている寺田と申します。先程、首相からこのような伝言を承りました。大変申し上げにくいことですが、午後二時頃に未来活性銀行が倒産しました。」
嘘の言葉を言われてしまったのです。それにより我が銀行以外にも株価の暴落を引き起こし、スタッグショックと呼ばれる現象を起こしました。そのあと直ぐに辞職し経済を混乱させて三日で解散した幻の内閣となったのです。
これからどうなるんでしょうか。それは分かりません。