生徒会
えー、前回は前書きと後書きを書いていなかったのですが、今回からちゃんと書くようにしたいと思います。暇な時にちゃちゃっとね。
さて、三話まで来ましたが、今回である程度進展します。
東方の合間にも、と思ったのですが、ゆっくり書けるこの作品は結構息抜きにもなります。何気東方が戦闘物なので、テンションが上がっていない状態ならこっちのほうが書きやすかったりします。
無駄話だけでしたが、本編をどうぞ。
昼休み、生徒指導室からようやく解放された俺は、気晴らしに裏庭に出た。
弁当も財布も持ってきていなかったので、教室の食物の匂いは少しばかり辛かったのだ。
裏庭は日陰になっており、夏はじめじめして、冬は寒すぎるので年中通して人影が無い。それが人気を嫌う俺には丁度良く、秋の終わりを告げようとしている寒気を我慢してまでそこを占領しているのだ。
しかし、今日は違った。先客が既にいた。
「あら、こんなところに人が来とはね」
こっちに気が付いた彼女は振り返り、俺を見た。
「まぁ、ここには俺ぐらいしか来ないけどね。あんたは、なぜここに?」
「んー、ちょっと人の多いところが暑くて逃げ出したのよ。ほら、三送会でしょ、今日」
「あぁ、ということは、あなたは2年か3年……ですか?」
「一応、3年よ。
ほら、生徒会長として全校生徒の前にも立ったんだけど覚えてない?」
見えない、全然3年生に見えない。普通にあんたとか言っちゃったよ。それ程、彼女は小さかった。パッと見、身長は145㎝ぐらいといったところ。
というか、どこかで見たことがあると思ったら、生徒会長……?
「と言う事は、あなたがあの天才会長?」
「あー、そんな噂が流れてるんだっけ。
えっへん、私がその天才会長です」
会長が身長と比例した胸を自信満々に張る。
しかし、続け様にこんなことを言い始めた。
「ま、私は特に何もしてないんだけどね」
「? どういうことですか?」
俺の疑問に会長は「ふふん」と意地悪く笑った。
「生徒会に入れば判るよ、幸いメンバーは私以外今期も変わらないし、私の分、1枠空くから狙ってみなよ、『チイト君』」
「なんで、チートのことを?」
会長は「さぁ?」とだけ言って体育館へと戻っていった。
放課後、俺は護の所を訪ねた。
「会長の事を教えろ? 別にいいけど何でまた」
「いや、なんかあの人俺のこと知ってるみたいでさ、話した去り際に俺のことを『チート君』って呼んだんだよ」
「あぁ、なるほど。あの人ならな」
護は1人、納得したように頷き俺を見た。
「たぶん会長は、お前の事を『チート君』と呼んだんじゃなく、『チイト君』と呼んだんだろ」
「はぁ? 何それ?」
全く言っている意味が分からず混乱していると、護は会長の説明を始めた。
「生徒会長、今となっては前生徒会長か、まぁいい。会長こと、『滝丘 紫』。
彼女が生徒会に入ったのは1年の後期からで、彼女が入った途端、この学校が急変した。行事の増加、受験生の増加などの目につくところから、何やらバックのお偉いさんが強化されたとか」
その話は聞いたことがある。その時は理事長が本気を出しはじめたと言うことになっていたが、まさか会長が原因だったとは……。
「会長は何したんだ?」
「んや、特に何も」
「え? 会長が何かしたんじゃないのか?」
そういえば、会長も同じようなこと言ってたな。
「会長の凄いところは、努力と能力にある」
「能力? まさか俺と同じ……」
そこまで言って、「お前の能力なんか話にならんよ」と一蹴されてしまった。ふん、どうせ使いにくい能力だよ。
「彼女の能力は、寝ないこと」
「………………はい?」
「お前、今たいしたことないと思ったろ」
(ギクッ)
「ところがどっこい、」
「言い回し古いよ」
「寝なくても平気、つまりその分人より長く動けると言うことだ。そこに彼女の頑張り屋を加えれば出来ない事はほぼ無いだろうな」
「成る程、でもなんで俺のことを『チイト君』って呼んだんだ?」
「彼女は、全校生徒の名前を暗記している。その時、出来るだけあだ名を付けて覚えてるらしい」
「ふむ、で、だからなぜ俺は『チイト』なんだ?」
「お前、本当に頭固いな。沙千紡の真ん中の字と紡の糸辺を合わせてみろよ」
千と糸? 千糸……ちいと……チイト!
「あぁ、なるほど! って、分かりにくいわ!」
「まぁ、確かにな」と護も苦笑いを浮かべていた。
「バカと天才は紙一重って言うし、ちょっと変わってるんだよ、あの人も」
「あの人も? 他にも変人がいるのか?」
「知らないのか?
いくら寝ないで何でもできる人とはいえ、どうしようもない事があるだろ、お偉いさんの件とか」
確かにいくらなんでも努力だけで人に協力を促すことは出来ない。
ということは……。
護は、ハッとした表情を浮かべる俺に「やっと気付いたか」と少し呆れ顔を見せた。
「だから、会長は生徒会に入れば判るって言ったのか」
「だろうな。あそこは奇才の集まりだから入って損することもないし、立候補すればいいんじゃないか?」
どうだ? といった様に首を軽く曲げてこっちを見てくる。
「んー、考えてみるか」
「よし、これで御船ちゃんと親しくなれるぜ」
「お前、それが狙いか。止めとこうかな、生徒会」
「そういうなよ、あの子とは全然交友を深めれないんだよ。
俺が思うに、彼女がそうとうな鍵を握ってる」
御船 麻理沙。1年生。前生徒会会計、現生徒会副会長。
容姿端麗、お嬢様気質と完璧な才能を持っていて、誰もがお近付きになりたいと思っている全校生徒の憧れ。とまぁ、こんな感じで噂になっているので、俺も気にはなっていたのだ。
確かに来年は確実に会長にまで上がるだろうな。それ相応の物を持っていても不思議じゃない。
「強制はしないけど、入ってみろよ、お前に似たのが多いから楽しいぞ」
護は慌ただしく立ち上がると、「それじゃ、これから出掛けるんで」と言って教室から出ていった。
あの様子だとまたデートか、羨ましいとか思わないけどさ!
てか、最後のどういうことだ? 俺に似たのが多いって、俺が変人と言うことじゃないか! ……帰ろ。
えー、いかがでしょうか?
実は名前には分かりにくいネタバレがいくつか入っています。今回の紡みたいな、チートだったり、紫の『紫』は寝ない人物として有名なナポレオンが愛した花、ヴィオレット=紫から付けています。他にもバラして大丈夫な所では、日和にもあったのですが、なんと見事に忘れてしまいました(笑)
ネームにも残ってないというね、ダメだこりゃ。
では、今回はこの辺でノシ