第六話 僕と奴隷と奴隷商
数ある作品の中から興味を持っていただき、本当にありがとうございます!
ギルドに加入し、冒険者の人たちと仲良くなることができたタヴァータ。
しかし、そんな彼を狙う怪しい影が忍び寄ってきて..........!?
「..........ふぅ.........よっこらしょ............っと...........。」
ふらふらと僕が泊まる部屋のドアを開け、抱えていた重い木箱をゆっくりと地面に下ろす。
僕のギルド歓迎パーティー兼マンガの朗読会の盛り上がりは、なかなか衰えるところを知らないどころか、さらに熱狂的な盛り上がりをみせていた。
しかし........良い子は寝る時間になってしまったので、僕は一足先に宿に戻ることになったのだ。
(......みんな、いい人たちだったなぁ。)
木箱の中にたくさん入っているみんなからいただいた物たちを眺め、僕が心のなかでつぶやく。
しばらく感傷にひたっていると、僕の部屋のドアからノックをする音が聞こえてきた。
「.......タヴァータどのっ!!! 少しお邪魔してもよろしいですかな?」
「.......おーいタヴァータぁーっ!!! 夜這いにきたぞー!!!」
「........よばっ..........!?!? ..........こ、こらっ!!! マサリーちゃんっ!!!!」
部屋着に着替えた騎士団の3人が、僕の部屋に遊びにきてくれた。
日中の鎧を着ているみんなと違って、かなりラフで新鮮な印象を感じる。
「........こんばんは!! あれ、今は鎧すがたじゃないんですね。」
「おふろ入ってきたので、今は部屋着です。 お見苦しくてすみません..........」
「...鎧はムレますからなぁ......... 任務がないときは、基本的にこの姿ですぞっ!!!」
そういって、ガーネッコさんが大きな胸をぽんぽんと叩く。
3人とも薄着なので.......なんというか........その.............かなり目のやり場に困る。
「.......そういやよぉ、タヴァータの後ろにある木箱ってなんなんだ?
なにやらお金がたんまり入ってっけどよー...........」
「..........ああ、これですか?
ガーネッコさんと冒険者のみなさんから、色々いただいちゃったんです!!」
「........こんなにたくさんっ.........すごいですねっ!!!!!!」
「.....何がどんぐらいあるか、ちょっと数えてみよーぜ!!!!」
そういうわけで、箱の中身をひっくり返してみんなで調べてみたのだが.........
「..............えーっと......... お金が637850Gに、火、水、雷、風の魔石が10個ずつ.........
この短剣と盾も加護がついているので、どれだけ少なく見積もっても全部で2000000Gくらいの価値はありますね.........」
「「「.................に、にひゃくまんっ!?!?!?!?!?」」」
オトリアさんの口から、えげつない単位の金額が発せられる。
この世界のお金の価値はわからないが、干し肉が売店で300Gで売っていたのであまり日本と物価の差はないように感じる。
「...........拙者の給料の半年分ですぞぉ..............はえぇーっ...............」
「........タヴァータ..........おまえ、ほんとすげーなぁ...........」
「...........あ.........あはは.......」
このお金は、大事に貯めておこう...........
そして、日本に帰れたらたくさんグッズ買って作者の方に還元しよう..............
僕は全身の震えをおさえながら、強く誓った。
そんな誓いを立ててから、約1時間後。
その後もたくさん騎士団の3人たちとおしゃべりをしていたのだが、さすがにみんな眠くなってきたので今日のところは解散することになった。
「................寝る前に、トイレだけ行っておこうかな。」
僕は誰もいない部屋の中でそうぽつりとつぶやき、トイレへと向かった。
「..............うわぁぁ...........広い.......そして暗いっ..........!!!」
用を済ませてトイレから出ると、あたり一面はすっかり夜の漆黒の闇に覆われていた。
つい先程まで残った大人たちがどんちゃん騒ぎをしていたのだが、そんな気配が微塵も感じられないほどに暗く、人の気配が完全に消え去っていた。
(...............もう、みんな帰っちゃったのかなぁ.......
........ううぅ...........嫌だなぁ..........怖いなぁ..............!!!)
そんな強い恐怖の中で、自分の部屋めがけてまっすぐとぼとぼと歩いていたのだが..........
「............旦那ぁ.....? そんなトコロで、一体何してるんですかぃ.......?」
「...............うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
背後から急に誰かに話しかけられ、あまりの恐怖におもいっきり絶叫してしまう。
トイレを済ませる前だったら........確実にチビってたと思う。
「..............だだだだだだだ誰ぇ!!? どなたですかぁっ!?!?!?!?!?」
半泣きになりながら、急いで思いっきり振り返る。
「........あーしですよ。 さっきまでパーティーに参加させていただいてた.........アクド商会リーダーのヴィーラ厶ってんでさぁ。」
振り返るとそこには、ハイライトが消えた黒目と濃い目の隈が特徴的な、エルフのお姉さんが立っていた。
そういえば、こんな感じの人がさっきのパーティーにいたような........?
直接話したことはなかったが、僕のことを知っているのであればおそらくこのギルドの人だろう。
「.........こ、こんばんわっ....... あのー......ぼ、ぼくに何か御用でしょうか........?」
「......いやぁ、あーしも “ まんが ” とやらの話を聞かせていただきやしてね。
これはすごく面白ぇもんだって思ったわけでさぁ。」
「........そうなんですか! ヴィーラムさんも、マンガを気に入って頂けたんですね!!! うれしいです!!」
ヴィーラムさんが、ちょっと不気味な笑顔で話し続ける。
最初こそ驚いてしまったが、案外悪い人でもなさそうだ。
「...........そー、こー、でぇ。 タヴァータの旦那のお耳にぜひ入れておきたいイイお話があるんでさぁ。」
「....? それって、どういうお話でs......................!?!?!?!?!?」
僕が返事を言い終わらないうちに、ヴィーラムさんが僕の肩に右腕を回して身体を寄せてきた。
背中にむにゅっとやわらかい感触が伝わり、顔が真っ赤になってしまうのが自分でもしっかりと感じられた。
「...........ここじゃぁあんまり大きい声じゃぁ言えないんですがねぇ。 旦那にとっても悪い話じゃぁないと思いますぜぇ?」
「..............は、はひぃ.............!?!?」
身体が密着した状態で耳元に囁くように話され、思わず力が抜けてしまう。
僕はただ、こくこくと頷くことしかできずにいた。
「..........その言動は、肯定と捉えてイイってことですなぁ?
.....................ここじゃぁちぃとアブナイもんで、勝手ながら場所を移させていただきやすね。」
「...............!?!?!?!?!?」
ヴィーラムさんが左手の細い指をパチっと鳴らすと、みるみるうちに周りの景色が全く知らない部屋の中へと変化していく。
(............なっ........なにこれっ........!!? 景色が、一瞬でっ.........!?!?!?)
「........ここは、あーしが運営するアクド商会の商談部屋でさぁ。 さ、ここでゆっくりお話ができやすぜ。」
(............どうしようっ.........全く知らないところに連れ去られちゃったっ.........!!!!)
内心でひどくおびえる僕をよそに、ヴィーラムさんが淡々と話しを続ける。
「........単刀直入に申し上げますがねぇ。 今、旦那はだいぶ.......ざっと、200万くらいフトコロに余裕があるとお見受けしやす。」
「........な、なぜそれをっ........!!!!」
僕とガーネッコさんたちしか知らないような情報を淡々と話され、僕の顔がさあっと青ざめる。
「...........まあ、“ 商人のカン ” とだけ言っておきやす。 そういうわけで、旦那に見ていただきたい商品があるんでさぁ。 ........ささ、着いてきてくだせぇ。」
そう言い終わるやいなや、ヴィーラムさんが部屋の奥にある地下へと続く階段に向かい、おいでおいでと手招きをしてくる。
(..........どうしようっ.........でも、行くしかないよねっ..........!!!)
この階段の下には何が待っているのか分かったものではないが、今は怪しまれないのが最優先だ。
そう考えた僕は、おそるおそるヴィーラムさんについていく。
「........足元急なんで気をつけてくだせぇ。 なにぶん、随分古くからある建物でしてなぁ...........」
一歩一歩階段を降りるたび、カーンと言う音が地下室の暗闇に吸い込まれていった。
「........さ、つきましたぜ旦那ぁ。 これが例の 見ていただきたい商品 でさぁ。 」
「...................っ.......!?!?!?!?!?!?!?!?」
(.........そんなっ.......!?!?!?!? う、うそでしょっ...........!?!?)
僕の目の前に広がっている、おぞましい光景。
僕はそれを、到底現実で起こっているものだとは信じられなかった。
「............んんーーーーーーーっ!!!! んむぅーーーーーーっ!!!!!」
「..............ん゛んんーーーーっ!!!!! むーーっ!!!!!!」
「.....んんーーっ!!!! んーーーっ!!! んんんーーーーーっ!!!!!!」
「......うちには、活きが良いのがそろってますぜぇ、旦那ぁ?」
口枷と足枷をされて自由を奪われている、僕と同じくらいかそれより小さい子どもたち。
みんな傷だらけで、涙目で恐怖に怯えてがくがくと震えている。
「............この子たちは、いったいなんなんですか..........?」
「.....旦那のお察しのとおりですぜ。 奴隷売買は表向きじゃぁご法度なんで、お天道様の目に及ばないような地下でやっちまおうって話でさぁ。」
.........ひどい。
...............ひどすぎる。
自分よりも一回りも二回りも小さな子どもたちを、こんな地下に閉じ込めて、恐怖でしばりつけて商品として扱うなんて。
「.........ふ、ふざけないでくださいっ!!!!! こんなひどいこと、今すぐにやめてくださいっ!!!」
思わず怒気をはらんだ声で怒鳴りつけ、キッと鋭い目つきでヴィーラムさんを睨む。
「.........おやおや。どうやら旦那のご気分を損ねてしまったようだ。
........まあ、安心してくだせぇ。 旦那。」
そういって、ヴィーラムさんが少しおどけたように笑いながら話す。
次の瞬間、僕の喉に冷たい金属の感触が伝わった。
カシャン。
「..................え?」
思わず見下ろすと、首元に鉄製の首輪がはめられていた。
後ろを振り返ると、僕の2倍はあるであろう土でできた大男が僕の両腕を掴んでいた。
「........旦那も今から、その商品たちの仲間入りになりやすからねぇ.......♪」
ヴィーラムさんが、にやあっとした薄気味悪い笑みを浮かべて言い放った。
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