第五話 祝・ギルド加入!!
数ある作品の中から興味を持っていただき、本当にありがとうございます!
人間だとバレないようにしようとクロエさんと約束した矢先.........さっそくギルドのみんなに正体がバレてる!?
今回はどういう結末になるのか.......乞うご期待!!!
「..........おおっ!!!! おい!! お前らぁ!!!!! タヴァータさんが来たぞォ!!!!!!」
「........おおおおおっ!!! すげえ!!!! ホンモノの人間だ!!!!!!」
「......え、あれが人間!? 見た感じはエルフの子どもか小人族みたいだけれど.......」
「........いや、エルフや小人族にしちゃ耳が短い。 それに、あの綺麗な黒髪と黒い瞳.......伝説とまったく同じだ!!」
「........きゃぁっ.....!!! 初めて見たぁっ!!! かーわいい〜〜っ♡♡」
「.....あ、あのっ!!! わたしにも、ガーネッコさんたちが話してたあの書物について詳しく教えてくださいっ!!!!!!」
なにがどうして、こうなったのだろう。
僕とナキシーさんの周りにこれでもかと敷き詰められた、超大勢の人(?)たち。
みんな、初めて見る “ 人間 ” という存在に目を輝かせている。
「..................オトリア、マサリー、ガーネッコ。 こっちへ来い。」
「「「.................っ!?!?」」」
ナキシーさんが、能面のような表情で鋭く言い放つ。
人の輪のはしっこのほうで面白いくらいに冷や汗を流して焦りまくっていた3人が、今にも泣きそうな顔でぷるぷると震えながら前に出てきた。
「.........オトリア。こうなった原因を、30秒以内で説明しろ。」
「.......は、はひぃぃ........!!!!」
オトリアさんが、半泣きになって声を震わせながら話しだした。
「.............だ、団長がタヴァータさんを連れてクロエ様のところへ行った後、わたしたち3人は夢中で “ まんが ” のお話をしていまして.........
そのあまりの盛り上がりようを不思議に思った冒険者の方になんの話をしているのかと尋ねられ、マサリーちゃんとガーネッコちゃんがすべて話してしまったんです...........!!!!」
「.......なっ!!? オトリアてめー!! 裏切りやがったな!!?!?」
「........友達を売るなんて、ひどいですぞぉっ!!!!」
「..........オトリア。 “ 全部 ” とは、一体どこまでのことを指しているんだ?」
「.........タヴァータさんが人間で、空間のゆがみによって異世界から迷い込んできたということまでですっ..........
タヴァータさんっ........ほんとうにっ..........もうしわけっ...........ひぐっ.........ぐすっ.........!!!!」
「..........................そうか。」
泣き出してしまったオトリアさんを冷たい眼差しで一瞥した後、ナキシーさんが言い放つ。
「.......オトリアは減給一ヶ月。 マサリーとガーネッコは半年だ。」
「....なっ......オトリアだけずりいぞ!!! 自分だって嬉々として勇者のカッコよさ語ってたくせによー!!」
「.........拙者たちは........ただタヴァータ殿がみんなと打ち解けられるようにと思って.........!!!」
「........そーだ!! ここのギルドのやつらはみんないいやつだぜ!! 襲っちまおうなんて思わねえはずだよ!!!」
「..........黙れ。 お前等の軽はずみな発言が噂になり、悪党の耳に止まってタヴァータが攫われたり殺されたりしたらどうするんだ。
騎士であろう者が軽はずみな判断で人の秘密を打ち明けるなど言語道断だ。 恥を知れ。」
ナキシーさんが、静かに......そして鋭く怒りをあらわにさせる。
ようやく自分たちのしでかしたことの重さに気づいた二人が、顔を真っ青にさせながらぽろぽろと涙をこぼし始めた。
「..........タヴァータぁっ........ごめんよぉ...........オレ、そんなつもりじゃっ...............!!!」
「..た......たゔぁーた.........どのぉっ.............ご......ごめんなさっ..........うぇぇ.......っ!!!!!」
.........まあ、ふたりとも全く悪気はないんだろうということは痛いほど伝わってきた。
さすがにいたたまれなくなってきたので、2人にフォローの言葉をかけようとするが.........
「.......なあ、兄ちゃんよぅ。
俺たちゃバカで荒くれモンだが、ウチに帰れなくて困ってる子どもを攫ったり殺したりするほどのゲス野郎じゃぁ無ぇぞ。」
さっきまでの騒動を黙って聞いていた背の低いおじいさんが、鋭く言い放つ。
「.......そうだぜ!!! 俺たちゃそんなに外道じゃねえよ!!!」
「.........困ったことがあったら、何でも言ってくれよ!!! 力になるぜ!!!!」
「........こんな小さくてかわいい子をほおっておけないわっ!!!! お姉さんにまかせてちょうだいっ!!!!!!」
その後も、上半身がドラゴンみたいな体つきをした強面のお兄さんや鬼のような角を生やしたいかついおじさん、犬のような耳としっぽが生えたお姉さんなど.........
沢山の人が次から次へと、僕にあったかい言葉をかけてくれた。
「..........みなさんっ.......ありがとうございますっ.........!!!!」
そんなあたたかい声かけが建物内を包み込み、さっきとはうってかわったとてもやわらかな空気が広がり始めた。
「.......まったく........一時はどうなることかと思ったわぁ.........」
「......同感です。 ギルドのみなさんがいい人で助かりましたね。
......まあ、例え相手が誰であれ、タヴァータくんの命を狙うものは容赦はしませんが。」
その様子を遠くから見ていたナキシーさんとクロエさんが、安堵のため息をつきながらつぶやく。
「........いよぉーーっし!! 今夜はタヴァータくんの歓迎パーティーよぉ♡
今日のお代はぜーんぶギルドが持ったげるから、みんなじゃんじゃん食べてじゃんじゃん飲んでねぇ〜♡」
「「「「「「「「「「「「「「 うおおおおおおおおおおおおっっっっっ!!!!!!!! 」」」」」」」」」」」」」」
クロエさんがそう言い放つやいなや、割れんばかりの歓声と拍手喝采が巻き起こる。
しかし、まだこのときは誰も気がついていなかった。
盛り上がるギルドの人達に混じって、一人だけ不敵な笑みを浮かべた人物がいることに.............。
「.......それじゃあみんな、準備はいいかしらぁ♡
タヴァータくんのギルドの仲間入りを祝ってぇ..........かんぱーーーーーいっ♡」
「「「「「「「「「「「「「「 かんぱああああああああいっっっっっ!!!!!!!! 」」」」」」」」」」」」」」
あの騒動から約1時間後。
ギルドが運営する食堂に集まった僕達は、ギルドの冒険者の方々と一緒に僕の歓迎パーティーを楽しんでいた。
異世界の料理はフシギな見た目のものがほとんどだったが、食べてみると意外とおいしい。
僕は大満足な気分で、美味しい料理を食べたり冒険者の方々と一緒におしゃべりを楽しんだりしていたのだが.................
「........タヴァータさんタヴァータさんっ!!!! 私にも “ まんが ” というお話がどういうものなのか教えてほしいですっ!!!!!」
そうやって、冒険者のお姉さんが僕に話しかけてきたのだ。
「..........あーっ!!! 俺も!!! 俺も知りてえ!!!!」
「........私も!! マサリーちゃんたちから聞いて面白そうだと思ってたのよねー!!!!」
その会話を聞いて、口々に俺も私もと便乗して騒ぐ冒険者の皆さん。
こんなにもたくさんマンガに興味を持ってくれるなんて........うれしい限りだ。 だが........
「.......ええー....... こんな大勢の前で話すなんて.......恥ずかしいですよお...........」
「........何を言っているんだ。 私にまんがのことを初めて説明した時、あんなにいきいきと楽しそうに話していたじゃないか!!!」
「........そうですぞっ!!! 拙者たちにももう一回、話を聞かせてくだされぇ!!!!」
「......わたしも、ナキシーちゃんから聞いて面白そうだと思ってたのよねぇ♡
タヴァータくぅん.......わたしにも......お・し・え・て♡」
「.........おいおい....... ギルドマスター様の直々のお願いじゃぁ........答えねえわけにゃぁいかねよえなあ、兄ちゃん?」
「..........しょうがないですねー.............
じゃあ、聞いてください。 このお話の題名は・・・」
その場の雰囲気にまんまと乗せられてしまった僕は、持ってきたマンガを取り出してみなさんに向けてマンガを朗読し始めたのだった。
「・・・「ぐはは、勇者といえどしょせんこの程度かぁ!!!!!」
そう言い放ちながら魔王が攻撃をくりかえしますが、あまりの攻撃の激しさから勇者はなかなか攻撃をすることができませんっ..........!!!!」
「.......くそっ.......なんて卑怯なやつなんだ......!!! 何回聞いても、はらわたが煮えくり返るっ....!!」
「......勇者ちゃんっ!!! だめよお!! あきらめちゃダメっ!!!」
「.........うおおおおおおおおっっ!!!! 行けっ、今だーっ!!! 勇者頑張れぇーーーっ!!!!!」
「.....きゃーっ!!!!! 勇者さまああああっ!!!! がんばってぇーーーっ!!!!!」
「........あれを使うんだぁっ!!! 必死に修行して編み出した、あの必殺技を使うしかないっ!!!!!」
2回目ともなればさすがに慣れてくるもので、感情をたっぷりこめながらマンガの朗読をしている僕。
それを聞いているみんなも、目をキラキラさせながら固唾を飲んで話の行く末を見守っている。
バトルシーンでは熱い声援、魔王が出てくるシーンでは猛ブーイング、ギャグシーンでは抱腹絶倒レベルで笑ってくれるなど場面に応じて的確にリアクションをしてくれるので、朗読していてとてもたのしい。
「・・・・・・こうして、魔王の奇襲を退けた勇者たちは、世界を救うべく魔王を討つ旅に出かけたのでした。 ご清聴、ありがとううございました!!」
「「「「「「「「「「「「「「 うおおおおおおおっっっっっ!!!!!!!! 」」」」」」」」」」」」」」
僕が1巻分をすべて朗読し終えたとたん、食堂のあちこちから耳が痛くなるほどの大歓声が巻き起こった。
あたり一面、前回の朗読を遥かに上回るようなすさまじい熱狂に包まれていた。
「........やった!!!! 魔王を退けたぞっ!!!!!!
やはり何度見ても、“ まんが ” というものは素晴らしいなっ!!!!! 」
「...........とっても面白かったわぁ.......♡ ひさしぶりに、体がぞくぞくしてきちゃった.......♡」
「.......なあなあ!!! これからどうなるんだ!?!? 早く続き聞かせてくれよぉーーっ!!!!!」
「.....こりゃ驚いたなぁ。 今まで長えこと生きてきたが、こんなに面白え話はなかなか聞けねえぞこりゃぁ!!!」
「.......オトリアさんの言ってたとおりでしたっ!!! 勇者さま......格好いいっ.........!!!!」
「.........ですよねっ!?!? あぁ......勇者さまと一度で良いからお会いしてみたいですっ.......!!!!」
冒険者のみなさんたちが、思い思いの方法で自身の高ぶった感情を発散させていた。
勇者さまの話題で盛り上がる人たちに、今後の展開を予想する人たち。
なにやら大きめの箱に硬貨などを投げ入れる人たちに、紙にマンガの登場人物を描いて売っている人とそれを買っている人たち.............
「...............ガーネッコさん、いったい何してるんですか............?」
ふと食堂の隅に目をやると、冒険者のみなさんが持ってきた紙や盾、鎧などにマンガの登場人物のイラストを描いていたガーネッコさんと目が合う。
ガーネッコさんが座っているところに、冒険者さんたちがずらーっと並んで行列ができていた。
「.....おおっ!!! タヴァータどの!!!
冒険者殿たちのアツい要望にお答えして、“ まんが ” の登場人物の絵を描いてあげているんですぞ!! 有料で!!!!」
「.......ああっ.......!!! 勇者さまの凛々しいお顔っ........感動ですぅ!!!! 家宝にしますっ!!!!」
「.........俺は愛用の盾に勇者様の顔を描いてもらったぜ!!! これで戦いにも力が入るってもんだ!!」
.....なんというか、ちゃっかりしてるな。
まあ.......みんな喜んでるならいいか。
(.........しかし、ガーネッコさん絵うまいなぁ........。 ちょっとしか見てないのに、もう僕が持ってきたマンガの絵柄を完全再現している........。)
ガーネッコさんが販売していたイラストをみてみると、僕が朗読に使ったマンガの絵柄と遜色ないレベルで絵柄がきっちり再現されていた。
..........まあ、心なしか女性キャラの胸が大きく書かれているような気がするけど。
「............あ、そうそう。 タヴァータどのに渡したいものがあったのですぞ!!!! ........よっこらせっと......!!!!」
ガーネッコさんが、思い出したように大きな木製の箱を持ってくる。
その中には、大量の硬貨や光り輝く宝石のようなものや食料、短剣や木製の盾などといった装備品など.......いろいろなものが箱いっぱいに入っていた。
「...........わわっ!!!! ど、どうしたんですかこれ!?!?」
「.......迷惑をかけてしまったお詫びですぞっ!!!! ささ、受け取ってくだされ!!!!」
「.........こんなにたくさん頂けないですよっ.........申し訳ないですっ!!!!」
「.......遠慮は御無用ですぞっ!!
これはタヴァータどのの“ まんが ” の朗読のあとに拙者が設置した投げ銭用の箱に、 拙者が描いた絵の売上を足したものですからなっ!!!!!」
なんというか........ガーネッコさんらしいや。
そういうことなら、お言葉に甘えてありがたく受け取っておこう。
「............そうですか...........なら、遠慮なく.......
本当にありがとうございますっ!!!!」
みんなの優しさに、心がとってもあったかくなる。
異世界に来てはじめての夜は、幸せな気持ちで満たされながら過ぎていくのだった...........。
読んでいただきありがとうございました!!
少しでも「面白そう!」「続きが気になる!」などと思っていただけたら、リアクションやポイントをつけてくださるとものすごく嬉しいです!!!
なにとぞよろしくお願いいたします!!