第三話 三者三様おねえさん
数ある作品の中から興味を持っていただき、本当にありがとうございます!
あれから、どれくらいの時間が経ったのだろう。
僕たちがナキシーさんの部屋から出ると、部屋の外には大勢の騎士団の人たちがひしめきあっていた。
「........団長っ!! それ本当なのかよ!! タヴァータ君が異世界から来たって、そんな.......!!!」
「........盗み聞きはよくないぞ。」
ナキシーさんが、冷たく言い放つ。
「.........ごめんなさいっ..........そんなつもりではなかったのですが、団長の涙ぐむ声が聞こえてきて......これはただ事ではないと思ってっ..........!!!」
「.......団長殿っ.....!!! どうか我々にも、本当のことを話してはもらえませぬかっ......!!?
拙者らはみな、お二人の役に立ちたいと強く思っておりまするゆえっ......!!!」
「........そうだぜっ!! こんなに困ってそうだってのにほっとけねえよっ!!!!
団長.........少しはオレらのこと、頼ってくれよっ.......!!!!」
騎士団の人たちが、口々にあたたかい言葉を僕達にかけてくれる。
やさしく親身になってくれる人がこんなにたくさんいるなんて.......... 僕は幸せものだ。
「.........お前たち.........!!!!!
..........わかった。 話そう。 タヴァータくんのことも、私のこともすべて。」
こうして、ナキシーさんはゆっくりと話をしだした。
僕は、今いる世界と全く別の世界から迷い込んでしまったこと。
ナキシーさんも、子供の頃に僕と同じ方法でここに飛ばされてしまったこと。
僕は翻訳魔法がないとこの世界の言葉すらまともに話せず、魔力が皆無で体も弱いこと。
そして、僕が元いた世界に帰る方法を探したいと思っていること。
「........そんなっ........団長にそんなことがっ.......!!!」
「.......もう二度と故郷に帰れないなんてっ........くそっ!!! なんてひでぇ.......!!!」
騎士団の人たちが、僕達に心から同乗して悲しんでくれている。
本当にいい人たちだなぁ........と思うヒマもなく、騎士団の人たちが次々に口を開いた。
「........なあ!!! 俺達にできることがあったら、何でも言ってくれよ!!!!」
「......そうですよっ!! 私たち、お二人の力になりたいんです!!!!」
「......拙者たちにできることならなんでもいたしますぞっ!!!!」
本当に、なんていい人たちなんだろう。
こんなに人にやさしくしてもらえたのは、今日がはじめてだ。
「........ぐすっ.......ありがとうございますっ!!!!!」
「......私は本当に良い部下を持った......!! お前たち......本当に感謝するっ!!!」
僕とナキシーさんが、涙ぐみながらお礼を言う。
本当に........本当にありがとう。
「........どうか、これからよろしく頼む!!!!」
「「「「「「「「 はいっ!!!!!!! 」」」」」」」」
そうやってナキシーさんが大声で言い放ち、その何倍も大きな声で騎士団のみなさんが叫んだ。
あれから数時間後。
いろいろとナキシーさん達のお手伝いなどをして過ごしていた僕は、数人の騎士団の方と一緒に “ ぎるど ” という場所に向かうことになった。
ナキシーさんいわく、そこで僕の住民登録やいろいろな手続きをしたり、職業や魔法適性などを測ったりするらしい。
(......僕の職業適性ってなんだろうなぁ。 やっぱり勇者とか憧れちゃうけど........ 魔法とか使ってみたいし、魔術師でもいいなぁ!!)
なんて、ちょっぴりワクワクしていたんだけど...........。
「........タヴァータどのタヴァータどのっ!!! 拙者が先日お尋ねした質問については一体どのようなお考えなのですかなっ!? やはり、拙者としてはおっぱいは正義だと・・・」
「......ええっ!!? え、ええっと........」
「.......ガーネッコちゃん、あんまりへんな質問はダメですよっ....... タヴァータさんも困ってますよっ........?」
「......オレも武道家の方が好きだなー!! 確かに胸もでっかいけど、それ以上にみんなを守りたいっつー信念がすっげーでっかかった!!!」
「.........もう.....マサリーちゃんまで.........」
「..........あ.....あはは..........」
......僕の護衛としてついてきてくれた騎士団のかたが、3人とも女の人なのだ。
これまでの人生で母さん以外とほとんどまともに話したことがない僕にとって、この状況はかなりキンチョーする。
「........そういえば、今更なんですけど........ 私たちのこと全然名乗ってなかったですよねっ!!!
......私は サーゲ・ オトリアと申しますっ。」
一緒についてきてくれた騎士団のお姉さんたちのひとりが、自己紹介をしてくれた。
騎士団のみなさんとひとりひとりお話する機会がなかったので、とてもありがたい。
「.......趣味は野生モンスターの研究と、お茶を飲むことですっ! なにとぞ、よろしくお願いしますっ!!!」
オトリアさんが、深々と頭を下げる。
お下げ髪でおしとやかそうな性格の、とってもやさしそうな雰囲気の人だ。
「.......オレは ヴォーイズ・マサリー ってんだ。 よろしくな!! タヴァータっ!!!!
趣味ってーか......好きなことは、身体を動かすことだ!!!」
オトリアさんの隣りにいるお姉さんが、元気よく叫ぶ。
キラキラ輝くオレンジ色のショートヘアで、褐色の肌と笑顔がまぶしい元気な人だ。
「.....では、拙者の番ですなっ!!!
拙者の名は、スカイヴェーメ・ガーネッコと申しまするっ!!
趣味は神話と女体の研究、好きな食べ物は粗挽き肉の腸詰め、座右の銘は “ 好きを極めよ ” ですぞっ!!!!」
さっきまで僕の隣で質問攻めをしていたお姉さんが、これまた元気よく叫ぶ。
青髪で胸が大きく、瓶の底のように厚い丸メガネをかけた.......なんとも独特な雰囲気の人だ。
「.....じゃあ、僕も自己紹介します。
僕の名前は 田畑 小太郎 っていいます。 好きなものはアニメとマンガです!!!!」
僕がそう自己紹介を終えると、3人ともきょとんとした顔でこちらを見つめてきた。
「...............?」
「あにめ? まんが? .......なんだそりゃ.....???」
「......無知でお恥ずかしい限りなのですが......それはいったい、どういうものなのですかな?」
.........薄々気づいてはいたが、残念なことにこの世界にはマンガやアニメは存在しないらしい。
さっきのマンガの読み聞かせで異様なほど盛り上がっていたのだから、創作の物語自体かなり珍しいものなのかもしれない。
「マンガは僕が皆さんにお見せした書物のことで、アニメは人が考えたお話をもとに絵にして、それを連続でつなげて動きや音声を加えたもののことです。」
「........なんとっ!!! 先ほどのあの素晴らしい書物は “ まんが ” というものなのですなっ!!!」
「......なるほどなーっ!!! なんかよくわからねーけど、さっきのやつはすげー面白かったぞ!!!!」
「.....絵がとても綺麗で、お話もすごく面白かったですっ!!!」
3人とも、とても目をきらきらさせている。
これは、マンガの良さを伝えるチャンスかも........!!!!
今までずっと感想を伝えたり好きな作品をおすすめできる相手がいなかったので、好きなものの話で盛り上がってくれたことはとってもうれしい。
「.......んで、結局タヴァータは誰が一番好きなんだー?
オレはやっぱ断然武道家だな!! 信念を持ってるやつは男でも女でもカッコいいぜ!!!!」
「.......私は、勇者さまの生き様に胸を打たれました.......!!
自分の命と引換えに鋼の大型魔物から少女を救う気高き精神っ.......!!! 弱きを助け強きを挫くその勇ましさ.......!! あぁ、私たちの世界にもそのようなお方が現れればよいのにっ........!!!」
「.......拙者はなんといっても絵が素晴らしかったですぞっ!!! 物語に登場する人物はみな端正で美しい顔立ちをしているだけでなく、女体の柔らかさやしなやかさ........そして何より、乳房の表現が素晴らしかったですぞっ!!! ぜひ一度、この手で揉みしだきたいものですな!!!」
「......オマエほんとにおっぱいが好きだなー。 自分にもでっかいのが2つついてるんだから、自分の揉めばいいのによー。」
「.........ちっちっち。分かっておりませんなぁマサリー殿。 女体とはすなわち芸術なり。 拙者のはただの大きな脂肪の塊ですが、可憐な少女や麗しい淑女と合わさった結果、相乗効果でとんでもない魅力を発揮するのですぞっ!!!!!! その点、タヴァータ殿の “まんが” は素晴らしいですぞっ!!! 柔らかな肉感や弾力をよくもまああんなに芸術的に・・・」
それぞれが、それぞれの感じた魅力を熱く語っている。
どうやら、3人ともマンガの魅力に興味しんしんみたいだ。
「.....ふふっ......!! 僕は魔術師さんが一番好きですっ!!
まだ詳しくは言えないんですが、最終章で仲間のために立ち上がるシーンは何回読んでもかっこよくて最高・・・」
「「「......えっ!?!? タヴァータ(さん)(どの)、この話の続き知ってるの(ですか)(ですかな)!?!?!?!?!?」」」
3人が、今までで一番まぶしい笑顔を見せながら一斉に僕の方を向いた。
僕が静かにこくりと頷くと、嬉しい感情が一気に爆発したように目をキラキラと輝かせて僕に質問をしはじめた。
「まじかぁーーーーーーーーーーー!!!!!! なあなあ、この後勇者たちはどうなるんだ!?!?
早く続き教えてくれよぉーーーーっ!!!!!!!」
「.......っ........!!!!!!
タヴァータさんっ.....!!!勇者さまの勇ましい逸話を、もっと聞かせてくださいっ!!!!!!」
「........なんとっ!!!!!!! こんなに嬉しいことはありませぬっ!!!!
勇者御一行様の官能的なお話などがありましたら是非教えていただきたいですぞっ!!!!!!!」
「.....わっちょっ、みなさん!!! ち、近っ........落ち着いてくださいっ!!!!!
後でゆっくり話しますからーーーーーっ!!!! 」
3人にかわるがわる質問されてもみくちゃになりながら、王都の街をゆっくり歩く。
何事かと街ゆく人(?)びとに凝視されながらもふと目線をあげると、大通りの中心に位置していると思われる場所に、他の建物とは一線を隠す豪華な石造りの建物が立っていた。
読んでいただきありがとうございました!!
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なにとぞよろしくお願いいたします!!