第二十七話 レベッカさんの過去
数ある作品の中から興味を持っていただき、本当にありがとうございます!
今回は、レベッカさんがどうして元・天使と呼ばれているのかが明らかになります。
タヴァータくんだけに語る、その真相とは..........!?!?
レベッカさんの処遇を考え始めてから、およそ三十分。
宿の受付の隣にあるトイレから、すっきりした表情でトイレから出てきた。
「…ふぃぃ〜……すっきり…… ギリギリ間に合ったぁ.........♪
ごめんね〜! 待っててもらっちゃってー…」
自らを蝕んできた不快感から開放されて心底上機嫌のレベッカさんが、笑いながら僕に軽く謝罪をする。
僕といる時はいつもの素と思しき状態に戻ってくれているようで、少し安心だ。
「…大丈夫ですよ。 みんな待ってますし、早く僕たちの部屋に戻りましょうか!」
僕が笑顔でそう告げ、レベッカさんと横並びになって宿の部屋へと移動する。
お互いに何も話さず、ただコツコツという2人分の足跡が長い廊下に響き渡っていく。
そんな、しばしの沈黙が続いたあと........。
「・・・・・レベッカさん。
…つかぬことをお聞きしたいんですけど、レベッカさんが【元・天使】って話、本当なんですか?」
僕が、今までで一番気になっていたことを質問する。
天使の存在は、この世界でも本当にいるかどうかさえわからないと言われていたのだけど…
不思議と、レベッカさんが嘘を言っているようには見えなかったのだ。
不意にそんな質問を投げかけられたレベッカさんが、一瞬だけ目を見開いて..........
少し悲しげな表情をして、ぽつりぽつりと語り始めた。
「・・・・そだよー。
あたし、こんなんでも元・天使なんだー。 信じらんないと思うけどさぁー・・・」
なんでも、レベッカさんはつい半年前まで、天界の穢れなき天使だったらしい。
しかもかなりの実力派で、天使の中でもかなりの上位クラスの魔力と戦闘能力を誇っていたらしい。
天界でなんの不自由もなく、毎日厳しくもも楽しく元気に仕事をこなす。
そんなあたりまえの日常をずーっと送っていたが、あるとき...........最高で最悪の出会いをしたらしい。
「・・・・ある日、天界の仕事からへとへとで帰ってくると… うちに見知らぬおねーさんがいたの。
顔はなんでだか思い出せないんだけど.............. その人は、あたしに『いろんなこと』を教えてくれたんだー。」
「…『いろんなこと』って、なんですか........?」
「うーんとね。
お酒やたばこ……お金をかけた楽しいゲームに、えっちなことまで...............
ほーんとに、数え切れないほどの楽しいことを、いーっぱい教えてくれたんだ。」
そういって、レベッカさんが少し楽しそうに笑みをこぼした。
「...あたしも断ればよかったんだけどさ。
その日はめっちゃ忙しかったし...........お仕事ですっごくイヤなことがあったから、ついついそれに乗っちゃったわけさ。
..........いや、もちろんイケナイことだってのは理解してたよ!? 天使はやっぱ、みんなのお手本になるように清廉潔白でなきゃだしさぁ。
...........だけど、一回それを知っちゃったら..............もう、戻れなかったよ。」
レベッカさんが、後悔を噛みしめるように心底つらそうな表情をして、声を震わせながら話し出す。
お仕事も、決まりも、自分の立場も何もかも忘れて.........『いろんなこと』に没頭したレベッカさんは…
天界のお偉いさんから『天使にふさわしくない』と見なされ、天界を追放されてしまったそうだ。
「.........ほんで、天界を追放されたあたしは........この先が不安で、ひとりぼっちで、さみしくて..........
ずっと、泣いてたってわけさ。
んで、そこに通りかかった見知らぬおねーさんに例のお酒をもらったんだけど...........
・・・・なんかもう、どうでもいいやーってなっちゃって.............もらったお酒を飲んじゃった。」
「........ぜんぶあたしが悪いのに、やけになって、みんなにめーわくかけてっ............!!!!
...........ぐすっ........ほんと、ごめんね…?」
レベッカさんが、涙目になりながら声を震わせて、僕の方へと向いて頭を下げた。
「・・・っ........そんなっ!!!
頭をあげてくださいっ!!!!!」
僕がはっと我に返り、泣きながら頭を下げているレベッカさんを静止する。
レベッカさんのその話を聞いて、僕はどうしていいのかわからなかった。
レベッカさんも、僕やナキシーさん、レムと同じだ。
僕たちと同じように、大きな力によってまったく違う世界に迷い込んでしまって.............
なにもかもがわからないまま、ひとりぼっちになってしまったのだ。
「........ふへへ、ありがと。
あーあ。 なんか、すっきりしたら急にいろんな気持ちがあふれてきちゃったよぉー。
へんな話きかせちゃってごめんね? …さ! お部屋もどろー!!!」
「…え、ちょ.......!?!?」
レベッカさんが、照れを隠すようにわらいながら僕の腕を引っ張り、いきおいよく駆け出した。
なにか、レベッカさんのためにできることはないだろうか..........。
強く引っ張られている右腕の衝撃と痛みを感じながら、ぼくはそんな思いに強く苛まれていた。
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