第三話~異世界人、バイトを知る~
2024年の日本に迷い込んでしまったリヒト。無事に警察から解放されて先ずは現代の生活に馴染むため、パムから仕事を見つけて働くことを勧められる。果たしてリヒトは仕事を見つけられるのか!?
「ここで働かせてください!」
「えっ?」
「ここで働きたいんです!」
「いや、あの…」
時は遡り、橋の下から出てきたリヒト。早速仕事を見つけるため、モンスターと激戦を繰り広げてきた鎧装備を収納機能もあるパムに預けて現代風の服装に着替える。
「色々と便利な機能を搭載しているんだな」
「ピポパ!えぇ、もちろん。様々な状況を想定した上で我々は作られていますから」
「なら、この異世界転移も想定内か?」
「どうでしょうね~」
「…」
結構確信めいたことを聞いたが軽くスルーされるリヒト。私としても今は答えかねる。
「そんなことよりも、早く仕事を見つけましょうよ~」
「それはそうだが…」
少し考える素振りを見せるリヒト。
「例えば、そこに流れている川。そこに魚は生息していないのか?」
「これだけ大きい川なら生息していると思われますよ~」
「なら、それを捕って食べれば生きることは出来るんじゃないのか?それに魚だけじゃない。鳥だっている。俺なら捕まえることは容易に出来る。それぐらいのことは向こうでは当たり前だったが…」
なるほど。サバイバル力に長けているリヒトであれば、それぐらい難なくこなせてしまうだろう。しかし、それではせっかくこの世界に来た意味がなくなってしまうぞ。
「残念ですがリヒト様。この世界ではそれは出来ないです」
「なぜだ?」
「この世界では野生動物を勝手に捕食することは許されていないのです。川に生息している魚は基本的に管理されていて定期的に稚魚の放流などが行われているので、釣りなどで捕獲するには遊漁券なる腕章を購入しなければなりません。また、鳥については鳥獣保護法というルールがあって、簡単に言うと許可なく捕まえたり卵を盗んだりしてはいけないのです」
「そうなのか…」
「なので向こうの世界でやっていたようなサバイバル生活は出来ませんし、トラブルの原因に繋がります。また警察のお世話になるのは嫌でしょう?」
「…そうだな」
「だから、ちゃんと仕事を探しましょう。この世界には「郷に入っては郷に従え」という言葉があります。その世界の常識に合わせて生き抜いてみましょうよ~」
「いや、別に仕事をせずダラダラとしたかったわけじゃないぞ?もしもの時を考えてだな」
「まぁ、この世界には全く仕事もせずに一日中ゲームをしたりネットサーフィンをしたりして、ニートと呼ばれている人もいるみたいですが」
「なんだ、それは…。向こうの世界でいう貴族のようなものか?何もせずとも金が入ってきて自由気ままに生きてる奴らのような…」
「いえ。人間としては底辺に位地していますよ。働かず親のスネをかじって生きているだけですね」
「それでも生きていけるのか。やはり平和なのだな、この国は…」
元いた世界では信じられない話だと驚きを隠せないリヒト。町は常にモンスターという脅威に晒されているので男は身体を鍛えて戦闘訓練を行っている。もちろん戦闘に向かない性格や体格もあるが、そういう人たちは自給自足の農作業や職人気質の高い技術を身につけてクエストをこなしている。
「よし、それじゃあ仕事を探しに行くか」
この平和な世界でリヒトはどんな仕事に就くのだろうか。とても楽しみである。
そして、冒頭に戻る…
「ここで働かせてください!」
「えっ?」
「ここで働きたいんです!」
「いや、あの…」
店員と思わしき女性に働きたい意思を伝える。あのあと町の中を歩いていたらバイト募集という張り紙が貼られている建物を見つけた。パムに尋ねると、どうやらコンビニエンスストアと呼ばれている店のようで、外から眺めているとかなり人の出入りが多いことが分かった。バイトという言葉の意味が分からないが募集という言葉は元いた世界でも使われていて大体人を集めるためのものであった。もしやと思いこれまたパムに尋ねてみると
「この世界では正社員と呼ばれる一日のほとんどを時間を使って働く人とアルバイトやパートといった短い時間を働く人がいるみたいです。いきなり正社員で働くことは出来ないと思うので、先ずはアルバイトから始めてみてはいかがですか?」
そう勧められて、早速店の中にいた店番のような人に声をかけた次第なのだが…。
「えっと、バイトの応募でしょうか…?」
恐る恐る女性から尋ねられる。どうやら怖がらせてしまったようだ。リヒトなりに誠実に意思を伝えたつもりだったようだが、やはりこの人相と身体の傷では第一印象は最悪である。
「パム、力を貸してくれ。なんと伝えればいい!」
「まったく、しょうがありませんねぇ」
今朝の騒動と同様にパムから電波信号が送られ適切な言葉を教えてもらう。
「はい。店の窓に貼ってあるバイト募集の紙を見て来ました。生きるためにお金が必要で働かないといけないのです」
「そ、そうでしたか…」
なんとかこちらの意図は通じているようだ。
「でしたら、同じように窓に貼られてある電話番号に連絡されてみてください」
「電話、ですか。わかりました。教えていただき、ありがとうございます」
パムからの台本通りに喋るリヒトには違和感しかない。電話で連絡するように伝えられリヒトは一旦その場を離れる。バイト募集の張り紙を見ると確かに連絡先が書かれてあった。
「よし、電話するぞ。パム」
「ピピピ!承知しました。今、掛けますね」
当然のように記載されてある番号に電話を掛けるパム。スマホのような通信機能も搭載済みである。流石は…!
いや、なんでもない。
「あっ、もしもし。突然のご連絡失礼いたします。私、リヒトという者ですが…」
引き続き、パムに台本を貰いながら電話をするリヒトであった。
果たして、リヒトはバイトに採用してもらえるのか!?
次回!異世界人、優しさを知る!
乞うご期待!
朝から吉本新喜劇を見ながら書きました。定番ネタの嵐で王道を行く漫才。大体次に何が起こるか分かるのに、それでも笑ってしまう面白さ。そういえばギャグのつもりでこの作品書き始めたのに、いつの間にか真面目に書いてしまっている。そして、アクセス数を毎日のように確かめる。
☆1でも良いので評価がほしいです。??「……迅速に褒めて下さい」
本命の作品を進めながら、こちらも頑張ります!いぇい!vぴすぴすv