第二話〜異世界人、現代を知る〜
なぜか異世界から現代の日本に転移してきた可哀想なリヒト。これもひとえにリヒトが弱ェせいだが(そんなことはない)。これから、どうなる!?
「はぁ…」
ため息を吐きながら警察署から出てくるリヒト。パムの指示通りに事情聴取を受けることで(過激な)コスプレ活動として処理され何とか事なきを得た。短剣を持っていたことを厳重に注意されたが、警察に引き渡すことで許してもらえた。壊れたら買い直していた特に思い入れもない短剣である。それに、この世界では人を傷つけるものを持っていてはいけないらしい。見つかる度にまた何時間も事情聴取されるのはごめんだ。
「それにしても、パムはあんなこともできたんだな」
ポケットに身を潜めているパムに話しかける。
「ピポパ!もちろんです!私は優秀なんですから〜!」
そう得意げに語る。リヒトの言う「あんなこと」とは、警察から事情聴取を受けた際に身分証明書の提示を求められた時の話。当然、転移してきたばかりリヒトはそんなもの持ち合わせてはいないのだが、パムが身分証明書を偽造してみせたのだ。
「そんな機能があるなんて知らなかったぞ」
「そりゃそうですよ〜!リヒト様が私をお使いになる時なんて「モンスターの攻略法を教えてくれ!」とか「何かいい作戦はないか?」とかばっかですもん。私の製造機能なんて知りもしなかったでしょ〜」
「そんなことが出来るって聞いてないぞ…」
「説明書に書いてます〜」
リヒトの性格上、新しく買ったゲームの説明書は読まずに始めてしまうタイプであるのは間違いない。まぁ、最近の子は説明書とかはあまり読まないのかもしれない。私が小さい頃は親にゲームを買ってもらってから家に帰るまでの車内で説明書を読みながら心待ちにしていたものだが…。
「製造というと他になにが作れるんだ?」
「この世界に合った衣類とかですかね〜」
「俺は別にこの服のままでいいが」
「この世界はコスプレ文化が馴染んでいますが、悪目立ちするだけですよ〜」
「そうか…」
「とりあえず、この世界について説明が必要ですね」
「待て、俺は元の世界には帰れないのか?」
「今すぐは無理でしょう。そもそもなんでこっちに来ちゃったのかもわからないのに」
「当分はここで暮らしていくしかないってことか?」
「そうなります。さぁ、ちょっと人気のない場所へ行きましょ〜。この世界での生き方をお教えします」
「わかった」
意外にも物分かりは良い方だなと感じる。そして人気のない場所に移動しながら道行く人に笑われたり写真を撮られたりしたが、モンスターのように襲ってこないので「なんて平和な世界なのだろう」という印象を持つリヒトであった。
「パム。この世界の人たちはどうやって生計を立てているんだ?俺たちの世界だとモンスターを倒してお金をもらったり食料をもらったりしている。こんな平和な世界で、一体なにがクエストになっているんだ?」
河川敷の橋の下に隠れるように場所を移動をしたリヒトがパムへ尋ねる。
「ピポパ!よく気が付きましたね〜」
ポケットに収まっていたパムが飛び出してくる。いつの間にか形が円形から長方形に変わっている。
「なんだ、その形は」
「スマホですよ。ス・マ・ホ!リヒト様もご覧になったでしょう?この世界の人間たちが持つ細長い板のようなものを。写真も撮られていたじゃないですか」
「あぁ」
「どうやら、こちらの世界の通信機器のようです。私も同じ形をしていれば違和感なく溶け込めるかと思ってデザインを変えてみました〜」
「そんなことも出来たんだな…」
「これも説明書に書いてます〜」
「すまない…」
今度ゆっくり説明書を読んでみるかと考えるリヒト。データはパムの中に入っているので、いつでも読めるはずだ。
「さて、ではリヒト様が疑問に思われた「生計」についてお話ししましょうかね」
「頼む」
「この世界では確かに「クエスト」と呼ばれるものはありません。しかし、同じような概念はあります。それは「仕事」と呼ばれています」
「仕事?」
「はい。リヒト様が狩りを行うのと同じように、人々は働いてお金をもらって生計を立てています」
「なるほど。じゃあ、この世界では戦うための武器や鍛え上げられた肉体は必要ないと言うことか?」
「少なくともこの日本と呼ばれる国でなら、そうでしょうね〜。他の国では人間同士で戦争が起きてるところもあるみたいです」
「どの世界でも争いは絶えんということか…」
「でも、リヒト様のその鍛え上げられた身体は仕事によっては需要があると思いますよ」
「力仕事か…。モンスター相手のクエストがないなら、それが一番適任かもな」
リヒトのガタイはかなり良い。2mとはいわないが、それに近い身長に日々のサバイバルで鍛え上げられた筋骨隆々の肉体。モンスターとの戦いで出来た傷は非常に生々しく一般人には恐怖を与えてしまうかもしれない欠点はあるが、それでも大体のことは筋肉で解決出来るほどだ。
「よし、生計の立て方については理解した。他になにか気をつけた方が良いことはあるか?」
「特に」
「は?」
「ないです」
「いや、もっとなんか…あるだろ!生きていく上で必要なルールとか!」
「ありますけど…、この世界の人たちは働いてお金もらってご飯を食べて寝ることが全てです」
「いや、えっ…そんな…」
「それだけで皆、必死なんです」
「ただ働くだけだろう?なにがそんなに…」
「リヒト様もいずれわかりますよ。社会のルールなどはその都度教えていきますから。細かいことは話すより実体験を通した方がわかりやすいでしょうし」
「そ、そうか…。なら、まずは仕事とやらを探さないといけないな」
何やら納得できないが悩む時間はない。この世界で生きていくためには働かなくてはならない。そう決心して立ち上がり、橋の下から出るリヒト。
果たして仕事は見つけられるのだろうか!?
次回!異世界人、バイトを知る!
乞うご期待!
つまらない入院生活が終わります。iPhoneで小説書くと腱鞘炎になりそうですね。辛いです。でも、書きました。第二話です。ギャグのつもりで書いてるのにギャグシーンなかったな…と。まぁ、いいですよね。楽しんでくださいね〜!
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