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俺が「妖怪の総大将」? スキル「合法侵入」しか持たない俺「ナーリ・フォン」は「ぬらりひょん」として成り上がりを目指します  作者: フーラー
第2章 炎と氷の魔法の使い手、蛇骨婆

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2-9 ヤンデレ雪女はダンスが苦手なようです

それからしばらく、俺は蛇骨婆の指導の下でマナーの勉強を行った。

どうやらファスカ家のマナーは※日本の文化を下敷きに吸血鬼特有の見栄のようなものが混ざった文化となっているようだった。



(※明らかに西洋ファンタジーの世界なのに,、ファスカ・フリーナは苗字が先に来るのも、筆者のミスではなくそれが理由である)



そして舞踏会の当日。


「よっと……」


俺はダンスのステップを雪女と一緒に行って見せた。

彼女はあまりダンスは上手ではなかったが、背格好の問題で彼女しかパートナーになることが出来なかった。



「どうだったかしら? 私とぬらりひょんの愛のダンスは……」

「おお、さすがは姉御! 素敵でしたよ! まあナーリのリードが上手いってのもあると思いますが……」



素直に手の目はそういいながら拍手をした。

ちなみに手の目は、このような『男女が手をつないで行うダンス』については、目が塞がれてしまうこともあり、踊るのは大変苦手としている。



「でしょ? 私たち、やっぱり相性がバッチリよね、ぬらりひょん? また一緒に踊りましょ?」

「ああ……そうだな……」



そういうと彼女は名残惜しそうに手を離した。

……一やっぱり俺は、彼女の手を握っても何も感じることはない。それが俺にとって心残りだった。


そんな俺たちの様子を見て、蛇骨婆はにっこりと笑って肩を叩いてきた。



「よし、もうバッチリじゃな! これでお主はどこに出しても恥ずかしくない近衛兵じゃ!」

「そ、そうかな……」

「そうじゃ! ダンス以外のマナーも今のお主ならまず問題はないわい!」



舞踏会と言っても、当然食事や社交場で話をする必要もあるため、俺はそれらのマナーについても教え込まれた。


この世界でかしこまった場ではいわゆる『料理を箸で食べること』や『お辞儀をすること』などの文化があり、それらについてもきちんと学ぶ必要があった。


「そうだ、お兄ちゃん! ちょっとあれやってみてよ!」

「あれ? ……ああ、型のことだな? 分かった、見ててくれよ……」



そういって俺は拳を握り、蛇骨婆から教わったいくつもの『型』を披露した。

怪力の吸血鬼の特性だろうか、この領地では徒手による格闘が喜ばれる。そのこともあり、このような『型』も舞踏会の時には披露することがたまにあるらしいからだ。


それを見て、スネコスリは感嘆の声を上げる。



「すごいじゃん! かっこいいよ、お兄ちゃん!」

「フフフ。すごい素敵ね、ぬらりひょん。私のことを守れる近衛兵になりたくって、頑張ってくれたのを感じるわ?」



雪女も、俺の姿を見て嬉しそうにつぶやく。

……このメンバー内では間違いなく最強の彼女をこれ以上どう守るというのかは一応置いておこう。



そう考えていると、アカナメがやってきた。


「ねえ、ぬらりひょん様~? マントも買ってきたよ!」

「ああ、悪いな」


ファスカ家の作法として、舞踏会では踊るか否かにかかわらず、男性はマントの着用がルールになっている。


俺の『合法侵入』のスキルであればマントは無理に着用しなくても周囲に気取られることはない。だが、今回は別の目的のために外套を用意しなければならない。



「お、ありがとうな、アカナメ……どれどれ……って、うお!」



だが、アカナメが用意してくれたマントを見て俺は思わず絶句した。



「えへへ、普通のじゃつまらないし、かわいいデザインでしょ? 気に入ったからこれにしたんだ!」

「え、ええ……。と、とても素敵だと思うわよ、ねえ、ねらりひょん?」

「だな……。ま、まあお前のスキルがあれば問題ないよ、な……」



さすがの雪女と手の目も彼女の買ってきたデザインに絶句した。

蛇骨婆は少し気の毒そうな表情をしながらも、俺にぽつりとつぶやく。


「……おぬしら、もうお金はないのじゃろう なら、その格好で行くしかなさそうじゃな……」

「ああ……」



俺はそう言われて外套を手に取った。




そして夜、俺はファスカ家の屋敷の近くで外套をまとった。

正直このデザインのマントは、人前で着るのは恥ずかしすぎるからだ。



「では、上手くやるのじゃぞ? ワシの命もかかっておるからの」


そういうと蛇骨婆は俺におぶさった。

そしてその上からマントを羽織ることで姿を隠す。


今回の潜入作戦は一人くらい協力が欲しかったためだ。

だが、俺の『合法侵入』のスキルは他人には効果がないため、こうやって彼女をマントで隠すことにした。



……当然雪女は『私が代わりに行く!』と猛抗議したが、そこそこ戦闘が行えて、かつマントで身体を隠せる体格、そして何より『どれが奪われた印章なのか』を知っている蛇骨婆でないとこの仕事は出来ないと言ったため、彼女は引き下がった。


俺は早速『合法侵入』を展開して門番をしているガーゴイルに声をかけた。



「む……ご招待された方ですか?」


彼は以前戦った相手とは別個体のようで、以前の男よりもかなり容姿が優れている。

恐らくあの男は今回の舞踏会の主役として参加するのだろう。



「はい……。俺はカルリット家の近衛兵、『久遠の理想主義者エターナル・イデアリスト』ナーリ・フォンです」


以前指摘されたマナー通り、俺は二つ名とともに門番に声をかけ、招待状を見せる素振りをした。この『合法侵入』は招待状や服装程度であれば相手に認識疎外をさせられる。


……まあ、合言葉など知識を問われるような対策をされたら一巻の終わりだが。



「ああ、カルリット家の……」


カルリット家というのは、このこの領地の隣に位置する諸侯のことだ。かなり大きな領地なので、近衛兵の人数も多いため、こういえば怪しまれない。


こうなのると、ニコニコと彼は態度を軟化させ、愛想よく笑ってきた。

なるほど、柔和な態度の彼のほうが、多少武力が低くとも、こういう舞踏会の門番には向いているのだろう。


「それでは、どうぞお入りください」


そういわれて俺は靴を脱ぎ、屋敷に入った。



「よし、もういいぞ」


俺は屋敷の片隅にある物置で、マントの下に隠れていた蛇骨婆に声をかけた。



「おお、そうか? ……ぷはあ、年甲斐もなく緊張したわい……」



そう言いながら、彼女は少し汗ばんだ服を直しながらつぶやく。

こうやって見ると、俺にはかわいらしい少女にしか見えないが実年齢はかなり高いのだろう。


「それじゃあ、作戦の決行までここで待機しておいてくれ」

「ああ、わかった。……にしても……」



そういうと、彼女は笑いをこらえきれなそうな表情で答える。



「ぷぷぷ……おぬしのその格好……。『合法侵入』がなかったら間違いなく、つまみだされておったろうな……」

「だろうな……。アカナメの奴……」



ちなみにアカナメの買ってきたマントの柄は緑の下地に白い渦巻き状の模様があるという変わったものだ。

確か『唐草模様』というらしい。


このマントを羽織っているとまるで、昔見た日本のアニメに出てきた泥棒のような気持ちになり、正直恥ずかしかった。

……誰だよ、こんなマント作ったやつは。



そう思いながらも、俺は舞踏会場に入った。

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