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6話 再戦


「おいおい......なんだこれは?」


神殿に竜王とレイはたどり着いたのだが、だいぶ見た目が変わっていた。


「以前見た時よりもなんだかぼろぼろですね」


神殿の上の部分が崩壊し外からも中が見えるようになっていた。


少しは竜王も神殿の崩壊に関与しているのだが、ここまではひどくなかった。

その神殿の中に人の気配がある。


「どうやら人がいるようですよ」


悪い気は感じないが多少の敵意を感じる。

この感じは少し前にもあった気だ。


どうやら竜王も感じたようだ。


「チッ......なんだか負の気を感じやがる」


レイとは違い竜王は嫌な雰囲気を感じているようで、あからさまに嫌そうな態度をとっている。


少し中に入るのは躊躇してしまうが、ゆっくりと入っていく。


後ろを進む竜王はなんの躊躇もなかった。


神殿の中は多くの戦闘での傷がついていた。

剣や斧、槍その武器は多様であったが、人間離れした傷も残っていた。


「またあったな」


そう声のする方を見ると槍使いのカドクがいた。


また会うために待っていたのであろうカドクの下には、何十人もの人間が倒れていた。


「同じ生き物に対して酷い扱いですね」


かなりの実力差があったのだろう。

カドクには傷一つついていない。


この倒れている人間らのおかげでカドクを秤に、人間全体の力がある程度測れる。

そこまで人間は強くないようだ。



「竜王に喧嘩売るよりはマシだろ?」


下に寝ている人間に視線を移す。


確かに竜王に挑んでいたら生きていられる保証はない。


「まぁそうですね」


会話しつつ竜王を庇える位置へ移動し身構える。

傷は槍のものだけではなく、黒焦げている部分もある。


それに人間には樹状の跡が残っているものもいた。


「あれは雷での傷だ。概ねその槍の能力だろうがな」


竜王が以前と違う槍を見ていう。

竜王の目から見るとあの槍は凄まじい負の気を纏っていて、黒い気が渦巻いている。



「竜王となればそんなこともわかるのか?」


すこし驚いた様子を見せるも余裕な態度は崩さない。


「今回は竜王に用はない。レイ貴様にリベンジをしたい」


「私......ですか?」


「あぁ。この槍を使ってお前と戦いたい」


負けた言い訳などは言わず、ただただリベンジをしたいという意思だけを伝える。



「お前たちがいない間に竜王を襲いに来た奴らは倒してやったんだ。嫌とは言うまい?」


「まぁ。いいでしょう」


竜王に向かって攻撃されるよりは幾分かマシだ。


以前勝っているとはいえ、油断はできない。


特にあの槍だ。

負の気を纏っているらしいが、レイにはよくわからない。


レイには竜王の周りの空気が澄んでいることはわかるのだが、あの槍の澱んだ空気を感じることはできない。



などと考えていると


「フンっ」


名乗りなどはなく、不意に槍が放たれる。


速度は以前と変わりなく避けることは容易い。

その上カドク自体の手の内はすでに明かされている。

先端が回ることだって既に知っている。


ビリッ


だがこれは知らない。

以前のカドクとは違う持ち物



ーーー槍だ



槍の先端に稲妻が走る。


フーーっとカドクが一呼吸入れると、回転する先端に雷がまとわりつき、槍の近くに近づくものを焦がしていく。


今のカドクの槍は以前よりも攻撃範囲が広く、大きく避けなければ当たってしまう。


厄介ですね。

この男は本当に厄介だった。


あの倒した人間の量を見ればわかるが、自身の実力はもちろん性格も優れている。

その上武器も良いものを使ってしまうのだから厄介だ。


カドクの攻撃は依然続く。

レイは前回同様受けに徹することしかできない。


2発3発と鋭い突きは止まらない。

体のバランスが崩れた場所に的確に攻撃をしてくる。



しかしこのぐらいなら雷を纏っていても当たることはない。

 

レイとてやはり化け物なのだ。



「フーーやっぱりこの程度ではやれねぇよな」


カドクは深呼吸をすると構え直す。

すると先端だけではなく、槍全体に電気が走る。


「行くぞ!!」


レイに向かって槍が伸びる。

レイの間合いの管理は完璧だった。

しかし比喩でもなく本当に伸びたのだ。


雷を纏うだけではなく伸縮する槍

その速度は凄まじい。

紙一重で避ける......ことはできずに腕に雷が当たる。


視線の端に鮮血が散る。



初めてだ。

レイにカドクがまともに攻撃を当てたのは初めてだった。


「レイ!!」


竜王がほえる。

少し慌てているようだが、レイは全然問題ない素振りを見せ竜王を安心させる。


「あんまり痛くないですね。それ」


レイから挑発ともとれる言葉が吐かれる。


神器とも言われる槍その雷に触れて痛くないなど、カドクからすれば強がりもいいところだ。


しかしあまりにも平然としている。


「チッ......」


当たって動揺したレイに追撃し、倒すつもりだったのだが動揺が見られない。


カドクの追撃も軽く躱してしまう。



『雷伸撃』


今までの比ではない速度で、雷を纏った槍が勢いよく伸びる。


「カハッ......」


レイの腹に突きが直撃する。

伸びる槍によりレイもろとも神殿を貫く。

既にひどい有様だった神殿は音を立て崩れていく。


たまらず竜王も神殿を飛びたち退避する。


「おいおい。人間を生き埋めにするつもりかよ?」


「意外と優しいんだな。まぁ大丈夫だ」


倒れていた人間に降りかかる瓦礫を槍で払いのける。

戦闘中であるのにもかかわらず、そんなことをするということは勝ちを確信しているようだった。


そしてまた竜王も人間を心配する余裕がある。


つまりーー




「やっぱり意外と痛くないですね」


お腹に多少の傷は残っているがそれだけだ。

竜もどきにやられた時ほどの傷はない。


「なっ!! 何故だ!?」


竜王は勘づいていたが、あの武器ではレイに届かない。

そんな槍を使うぐらいならば、前の槍の方がまだ勝ち目があったかもしれない。


「何故でしょうね? まぁその武器は私にはあまり効かないようです」


神器とも言われる武器。

人の力を超越したものですらレイには届いていない。


「そんなはずはない!!!」


カドクが槍を天に掲げると今までよりも大きな雷が集まる。


『雷神撃』


今度の槍は伸びない。

だがその分の間合いを雷が補う。

その一撃はとてつもなく大きい。


そして大きすぎた。


「それだけ大きいと当たりませんよ!!」


レイが言った通り、レイほどのものにそれは当たらない。


避けようとするが、飛び退いた先の視線に植物が映る。

そうレイの後ろには森があった。


避けることなどできない。


振り下ろされる雷が届くよりも速く走り、カドクの腹部に一撃を入れ槍の方向を上へとずらす。


「全く火事になったらどうするつもりですか」


貯められた強大な力は空高くで弾け飛ぶ。

あんなものが森に飛んでいたと考えると恐ろしい。


「神器を使ってまで負けるなんて......」


またもやカドクはレイに届かなかった。

唯一勝てる可能性を秘めた神器を使ってまでして、負けてしまったのだ。


敗北への悔しさは前回の比ではない。

それにーー


「火事にまで頭がいかなかった本当に完敗だ」


それだけを言い倒れた。

読んでいただきありがとうございます。

次も読んでくれると嬉しいです。


レイさん最近良いところなしだったので

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