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花の下にて 続  作者: 薬剤師のやくちゃん
3/6

またね。

※この作品は、再投稿したものがあります。

再投稿したものは、イラストをつけて情報整理しやすくなっています。

***


ひめるは張り紙のことをピオ達に伝えた。ーー処刑執行予定 裏切り アニータ。

「なんでアニータが。ーーそんなこと信じられない。ーー助けに行く」

「ピオ。落ち着け。あそこへは行くべきじゃない。ーーやめておこう」

「ーー嘘でしょ。ーーアニータが、ーーそんな。ーー」

言い合うピオとコウカ。レンは涙を流していた。

「どうしてアニータが研究所に。ーーひめる。お前はなんかーー”心当たり”があって禁止区域に入って、張り紙を見たんじゃねぇのか」

ピオは、真面目なひめるが一人で禁止区域に入ったことを不審に思った。

ひめるは、ピオ達に張り紙の内容は伝えた。しかし、アニータと一緒に侵入したこと、そこで見つかり捕まったことは言えなかった。

「い、いや。――心当たりはない」


その日、四人は夜遅くまで話あった。

コウカは最後の最後まで、アニータを助けに行くと言うピオに反対していた。しかし、少し落ち着いたレンがピオに賛成した。目を腫らしたレンが、アニータを助けに行くと呟くと、コウカは頷くしかなかった。


***


ーー処刑当日。

四人はフードを深く被り、処刑場所である研究所入り口へ向かった。

ひめるたちの計画は、アニータの姿が見えた後の合図で敷地の周りを走り周り、処刑の中断させる。そのうちに、誰か一人がアニータを助けるという内容だった。

”「俺が合図する」”

話し合いの結果、計画開始の合図はピオが行うことになっていた。冷静な判断ができるピオに対して反対意見はなかった。

立ち入り禁止の看板とチェーンをくぐった。今回は、モノの姿はなかった。

森を抜け、研究所入り口付近の木にそれぞれ身を隠した。


門は頑丈に閉ざされている。門の格子の隙間から、敷地内を静かに確認した。

予定時間に近づくにつれ、敷地内には大勢の研究員が中央に集まってきた。


刻々と、腕時計の秒針はすすむ。

――時間だ。


“――カーンカーン” 

鐘のような音が森に轟いた。

建物2階の扉が開き、研究員二人を先頭に後ろに傷だらけのアニータがいた。その無惨な姿に、思わず声が漏れそうになった。

研究員は整列し始める。――そして再び二度目の鐘が鳴った。

“――カーンカーン” 

敷地全体は静まり返った。一同は建物の2階に注目する。


目を疑った。目の前の光景を、これまで理解できないことはなかった。


建物2階の研究員が前に出る。

「番号002!これより!処刑を執行する!」

剣を胸に当て、そして空へ掲げる。


”――お、とうさ、――ん”


声が出なかった。しかし、時間は理解することを許してはくれなかった。


トールの声に敷地内はざわつく。もう一人の紫色の頭髪の研究員は、膝をつくアニータの髪ごと頭を乱暴に持ち上げた。

剣は、アニータの首に突きつけられる。その光景に、敷地内の研究員は一斉に声を上げる。まるで歓声のような。

「ねえ!!計画はどうなったの!!」

「早くしねえと!!」

レンとコウカは、ピオに必死で声をかける。

しかし、アニータの首に剣を突きつける研究員を見つめたまま青ざめた表情のピオに、二人の声は届かなかった。

敷地内の研究員達の歓声は森全体に響く。

「うおおおおお!!!」


何も考えられなかった。何も理解できなかった。

そしてただ、一瞬一瞬が止まっているかのように、ふり下される剣の先がアニータの首に触れ、そして入っていくのを、目にうつすことしかできなかった。


“――カチャン。――” 


剣がアニータの首を貫通し、首にかけていた青色のペンダントの鎖が切れ、高い音とともに地面に落ちた。

刹那、剣の先が首に触れる寸前、アニータが笑ったような気がした。


研究員達の歓声のような声が森に広がる。研究員達の視線は、建物2階に集中している。剣は、アニータの首に刺さっていた。

目の前の光景と、頭に響くほどの歓声と耳鳴りでめまいがした。


“――ドンッ。――“


その時、研究員の歓声に紛れて、近くで鈍い大きな音がした。

音のしたほうを見ると、コウカが近くにあった木の根本でぐったりと倒れていた。状況が理解できず、声も出なかった。

倒れたコウカのもとにレンが静かに近寄り、コウカを跨ぐように立った。そして、そのままレンはコウカの片方の腕をもぎ取り、地面に捨てた。

悪い夢でも見ているのか。ひめるは、信じられない光景に立ち上がることすらできなかった。


「やめるんだ」


瞬きの間だったのか。いつの間にかピオは、レンの腕を抑えていた。レンはそれを振り払い、ピオと距離をとるように離れた。

レンはピオの声が聞こえていないのか、電撃が走るような速さでピオに襲いかかった。しかし、ピオは顔色ひとつ変えずにレンの攻撃を全て避けていた。無表情のレンが、まるでレンじゃないように思えた。

ピオは再び目では追うことができない速さでレンに近づくと、気づけばレンは脱力し意識を失うようにピオの胸に倒れ込んだ。

ピオはそのままレンを抱え、ひめるに振り返ることなく、来た道を帰っていく。

「行くぞ」

今までに聞いたことのない冷たいピオを声に、倒れていたコウカがゆっくりと立ち上がった。コウカはよれよれになりながら、自分の腕を拾い上げ、先に歩くピオを追った。

木々で見えなくなる前に、ピオはコウカに肩を貸しているのが見えた。


三人の姿が見えなくなった頃には、研究員達の声も鎮まりつつあった。

読んでくれてありがとう。

緊張感のある場面は、書いている時も緊張しがちです。いつもより全然言葉が思い浮かばないことが多い。

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