張り紙
※この作品は、再投稿したものがあります。
再投稿したものは、イラストをつけて情報整理しやすくなっています。
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それから、アニータが街に降りてくることはなかった。
あの日のことは誰にも言わなかった。
明くる日も、明くる日も。しばらくの間、ひめるは家から出られなかった。何日も、何日も待った。夢の中でも、アニータの姿を探した。
「僕のせいで、ーー僕が、あんなところ。ーーあの時、ーーちゃんと断れば。ーー」
後悔だけが溢れ、頬を伝った。経過する時間が、ひめるのことを何度も責めた。
「ーー僕が助けなきゃ。ーーアニータを。ーー」
心配したピオがひめるの家を訪ねることもあったが、最初は仮病を使って帰ってもらっていた。しかし、これ以上心配をかけられなくなった時、何もなかったかのようにピオに会い、心配をかけたことを謝った。
ピオに謝った後、レンとコウカにも顔を見せた。
それ以降、アニータだけがいない日常が訪れた。
***
ピオ達がアニータのことを気になり始めた頃には、あれから二カ月が経っていた。
ひめるはアニータが働いていたイブの店を訪れ、アニータのことを聞いた。
「アニータねえ。この前急に夜お店にきて、お世話になりました、だなんて寂しいじゃないねえ」
イブの話によると、アニータは最近店の手伝いをやめたらしい。
ひめるはイブに頭を下げ、店を出ようとした。イブは、俯いたひめるの頭を撫でた。
「たまにはお店にいらっしゃいねえ」
その夜。
眠りに着く前に、ひめるはもう一度研究所に侵入することを決めた。
翌日。
晴天の空の下、研究所に向かう道の草木を踏みながら歩く。立ち入り禁止の看板の下には、今日もモノがいた。
モノは、森の奥へ進むひめるの後ろ姿見届けると広場の方へと帰っていった。
遠くに聞こえる鳥や虫の声を聞く。何度も、アニータと計画を立てながら歩いた道。思い出すほど、悔しさと後悔がひめるを襲った。
森を抜け、見えた研究所の大きな入り口には、張り紙が一枚貼ってあった。相変わらず人気のない敷地内やその周囲を十分に確認し、張り紙に近づいた。
その張り紙に書かれた内容に、ひめるは頭の中が真っ白になった。
眩暈がした。思考回路がエラーをおこしたように、腰が抜け、崩れるようにその場に座り込んだ。混乱と恐怖で震えが止まらなかった。
“――ザーッーー”
研究所を囲う森の木々が音を立てていた。何となく、自分を責めている気がした。
怖くなって立ち上がり、きた道をがむしゃらに走った。恐怖で足がすくんだ。下り坂で、石で躓き転んだ。足に怪我をした。それでも遠くに見える出口へ向かって、足を引きずりながら歩いた。アニータのことが頭から離れなかった。信じたくなかった。
『 処刑執行予定 裏切り アニータ 』
読んでくれてありがとう。
最近は暑いですね。ダイエットをしているからか代謝が良いみたいで、ちょっと動くと滝汗です。電車の中とか恥ずかしいです。