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花の下にて 続  作者: 薬剤師のやくちゃん
1/6

計画

※この作品は、再投稿したものがあります。

再投稿したものは、イラストをつけて情報整理しやすくなっています。

***


「ねぇ、アニータ。ーー本当に大丈夫なの?」

アニータに先導されるひめるは、人影がないか辺りを確認しながら歩いた。

「ばれなきゃ平気よ」

あの日のアニータの提案で、ペンダントの秘密を暴くために二人は研究所へ向かっていた。

森の中の道沿いに歩き、現れた立ち入り禁止の看板の下にはモノがいた。

「しーっ」

立ち入り禁止の看板とチェーンをくぐった。ひめると色違いのペンダントを拾ったと言われたのはこの辺りだ。

モノは、二人が森に入った後広場へと帰っていった。


草が生い茂った道を少し歩くと、森を抜けた。


高いフェンスで囲まれた広い敷地。敷地内には広い庭が左右対称にあり、真ん中には大きな建物があった。木々に隠れながら敷地の周りを歩くと、格子の大きな門の前に着いた。大きな門は、施錠で硬く閉められていた。門周辺にも敷地内にも人がいる気配すらないくらい、静寂だけがそこにあった。

アニータの合図で門に近づき、ひめるが施錠に触れようとした。


「そこで何をしている」


遠くから聞こえたその声と人影に、二人は急いで森へ戻り、きた道を逃げた。

「こっちよ」

きた道をアニータの後ろをついて走った。立ち入り禁止のチェーンをくぐって、坂をくだった。額には汗が滲み、息が切れらしながら走った。


森を抜け、恐る恐る振り返った。

「ーー」

誰一人として追ってきてはいなかった。

見つかったと思ったが、気のせいだったのか、見逃してくれたのか、どちらにせよ運がよかったとひめるは感じていた。

”――なんだ。大したことないじゃないか”

それと同時に、思っていた以上に逃げなくてもよかったのではないかと安堵していた。

急いで走った二人は、汗だくになって焦った顔を互いに見あい笑った。


その後も、二人は何度も研究所へ訪れるようになった。周囲にペンダントの手がかりがないか、中へ侵入できないか、探索した。


そしてある日、一部壊されているフェンスを見つけた。地面を這えば行き来できそうだった。ひめるは周りを警戒しながら、フェンスから中へ侵入するアニータを見守った。

二人は無事に敷地内に侵入できた。人気のない敷地内に、アニータはどこか楽しそうに建物の影に姿を隠しながら、辺りを警戒した。

「まるでスパイにみたい。ねえ、ひめる。ーー」

アニータの振り返った先で、ひめるは墓跡の前で手を合わせていた。墓跡といっても、黒いペンで名前が書かれた大きめの石が地面に建てられていただけだった。

『ゆい』

「誰か知っていてやっているの?」

ひめるはゆっくり目を開け、墓跡を見つめた。

「誰だって同じさ。失うことは悲しい」

墓石に雨が当たる。ひめるは空を見上げ立ち上がった。


帰り道、二人は次の侵入計画を立てた。


***


計画が実行される日。

「まずは食堂からね」

変装した二人は、見つけたフェンスの抜け穴から敷地内に入り込み食堂に潜入することにした。


食堂の入り口。声がする建物内に、二人はゆっくりと足を踏み入れる。

高い天井、広い食堂内は、大勢の研究員が座っていた。フードを深く被り辺りを見回すと、子供の研究員も何人かいることに気がついた。

しかし、ひめるにはその光景に違和感があった。辺りを確認するアニータに声を顰めた。

「アニータ。ここは食堂かい?」

「うん」

アニータの返事とは裏腹に違和感を感じたのは、誰一人として食事をしていなかったのだ。テーブルには、食器も食べ物も何一つ無い。食事を運ぶ人の姿も食事を作る人の姿も、その場所には無かった。


アニータに言われたテーブルに腰掛け、二人は観察を続けた。近くの話し声に耳を傾けた。しかし、少しカタコトのように聞こえるせいで聞き取りにくかった。

辛うじて聞こえた内容は、植物や動物の名前、音楽や料理の話題だった。


「やあ、アニータさん」


声と同時に、後ろから肩を叩かれた。

驚いたひめるは、顔をあげた勢いでフードが脱げてしまった。メモを取るのに集中していて、人が近づいていたことにひめるは気がつかなかった。

「ーーお前は誰だ!!」

声をかけたのは、紫色の頭髪の研究員。研究員は、侵入者の発見に声を張り上げた。その声に、周りもひめるたちの存在に気がついた。

「侵入者だ!!」

「捕まえろ!」

見つかった二人は、襲いかかってくる研究員から逃げた。ひめるはアニータの手をとり、入ってきたフェンスに向かって走った。


“ドサッ。ーー”

足がもつれたアニータが転んでしまった。

「アニータ!!」

ひめるは怪我をしたアニータに駆け寄ろうとした。

「だめ!!ーー逃げて!!」

片足を抱えたアニータが声を張り上げる。みるみるうちにアニータを囲んでいく大勢の研究員に、ひめるは足を止めた。

「お願い!!」

迷っている時間などなかった。ひめるは再び振り返り走った。来た道を迷うことなく、振り返ることなく逃げた。


夢中になって走って、森をでた。もう追っては来ていなかった。

崩れ落ちるように座り込む。アニータはどうなったのか。


息があがったまま、ひめるはしばらくそのまま座り込んでいた。

読んでくれてありがとう。

夢で見た光景をそのまま作品に反映させたシーンの一つです。

ストーリーを考えながら眠りにつくと、映画のような夢を見ることがあります。続きが気になれば、二度寝をします。

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