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流れ流れて行き着いた先は…

上司が銀縁眼鏡の陰険守銭奴である確率って、どの程度なんでしょう?

お店の前を掃き掃除する私に日差しは燦々と降り注ぐ...。

「掃き掃除もまともに出来ないとは、今日日のアルバイトは本当に使えませんね。」

銀縁眼鏡ってあんなにキラッとするもんか、眩しい!

「耳も遠いとは。いえ、これは共通語を理解する語学力がないと言うことか。」

履いてる革靴もキラッとした、あれは連動してるのかな?っと意識を飛ばしてる間に、今日の仕事の説明が始まっていた。

「...なので、説明漏れのはないようにお願いします。」

今、全然はなし聞いてませんでした、と言える勇気は私にはない!

と言うわけで、渡されたファイルをパラパラ捲って、分かってますよ~の体で、ふんふん言ってみた。

「どうせ聞いてないでしょうから、ファイルの一番上にある赤字の内容をお客様にお伝えすることを忘れたらバイト代は無しです」

心が読めるなんて、すごい魔道具ですね、その眼鏡...。

「あなたのアホ面見れば、アホなことを考えてるのがまる分かりです。

これ以上の無駄な時間を取るようなら、バイト時間から差っ引きますので。」

と言い残して、すごい魔道具(登場時にキラッと光る銀縁眼鏡)をかけた店長は店に入っていった。


私が何故ここにいるのか。どうして銀縁眼鏡の陰険守銭奴店長のもと働いているか、についてはたいした説明はない。

まあ、婚約者との新婚生活を夢見て王都に上京して婚約破棄からの家無し、お金もないので酒場で一晩明かそうとして、ごろつきに絡まれる(私じゃなくて、隣のテーブルのピンクの髪の美少女が)、颯爽とヒーロー登場、吹っ飛ぶごろつきとテーブルの料理(これは私が頼んだやつ)、逃げるごろつき、いいぞ兄ちゃんと囃す酔っぱらい、祝福される二人の横でお腹を減らして私が泣く...。という状況が半月前にあり、テンション上がって、おごると言い出した酔っぱらいの頼んだ料理をたらふく食べ、酒場がしまって、家路につく酔っぱらいに混じって、私が何をしてたかは記憶にない...。

酒場の親父さんいわく、へべれけになって涙ながらに今後の人生を悲観しまくってた(大声で愚痴ってたらしい)私が、どこの酒場にも一人はいそうな胡散臭い旅商人と酒場から出ようとしていたところを、パン屋の女将さん(旦那を回収に来てた)が止めてくれて、このまま見過ごすのも心配(酒場の親父さんが)と言うことで、ひきとってくれたらしいのだ。

そこで、パン屋に住み込みだったら王道のグルメと恋の話になったのに、パン屋にはバッチリ看板娘(女将さんのお嬢さんですよ)もいて、人手が足りているのでと、ブラックだけど旅商人よりマシな仕事を口利きするといって教えてくれたのが、あの銀縁眼鏡の陰険守銭奴店長への紹介だった、ということだ。

まあ、おかげで私は娼婦館や奴隷商人のところに売られるのではなく、この傾きまくった不動産屋、ニコニコ不動産にお世話になることになったのである。運が良いのか悪いのか分からないが。


アピールポイント!

お家のお庭で家庭菜園を楽しめます。自然豊かな郊外で、ご自分が育てた新鮮な野菜を食べるスローライフはいかがですか?(注意 庭でのケガに保険は出ません)


「...、以上がこちらの物件のご説明となります。あと、こちらのお庭は特例危険地域のため、一般の傷害保険では、お庭でケガをしても保険金が出ませんのでお気をつけください、とのことです。何かお気になる点はございますか?」

営業スマイル満点で説明を終える。

「お客様ご所望の家庭菜園が存分に出来る環境ですよ!」

『どー見ても無理あるだろ、それ♪』

楽しげなツッコミが入るが、それどころじゃない。私のアルバイト代がかかってるのだ。

「では、お家のなかもご案内しますね。そちらの植物?より背が高いと攻撃されますので、ほふく前進でお願いします」

私の目の前には、可愛らしい一軒家と広い庭、そして、うごめく大量の植物が見える。このダイコンっぽい植物は、前に住んでいた薬師さんが植えた様々な植物に混じって、知らない間に増えまくった新種のお野菜で、どうやら菜園のダイコンと薬草園のマンゴラドラが出会って仲良くなって産まれたらしい…。

『動く植物にすらあった出会いと住まいが、見つからない生き物がここに~♪』

雑音は無視して、っと。

ちなみに、このダイコンもどきの身長を越すと、風の魔法を使って攻撃してくる。薬師さんいわく、恥ずかしがり屋らしいが。そういえば、身長って葉っぱの先まで?それとも本体の白いところまで?まあ、どっちでも大して変わらないかぁ。

なお、私に続いてほふく前進する本日のお客様は、ギルドでも中堅になった冒険者さんでがっちり鍛えた体と凛々しい眼差しを持つリックさん。ほふく前進姿も様になっていてカッコいい。こんな旦那様の帰りを可愛らしい一軒家で待つ私って、なかなかいい感じ。ここは一つ、私のアピールポイントも混ぜておこうと後ろを振り返ると(ほふく前進はしてる)、あれ?人影が庭に入ってこようとしている!

まずい!大根モドキの攻撃で怪我でもされたら、私のアルバイト代から治療代を出すことになるかもっと、焦る私の横で立ち上がり、剣を振るうリックさん。わぉ、さすがに現役冒険者だ、と眺める私。


「で、成約出来たんですよね。」と、嫌みってここまで極められるものなんだと感心したが、事実を言わないわけにはいかない、この陰険守銭奴の銀縁眼鏡に。

「今回、リックさんがおうちを探していたのは、相棒のリリアさんと喧嘩別れして、冒険者をやめて定住しようと思ったからだそうでして。それを聞いたリリアさんが、おうち(内覧中)まで追っかけて来たと。大根モドキに攻撃されそうになったリリアさんを見て、やっぱり一緒に冒険者を続けたいと気づいたリックさんは思いを伝えて、二人は仲良く帰っていきました。」

「つまり?」

「成約出来なかったっと。」

銀縁眼鏡が怪しく反射するのを見ながら、私は心穏やかに答えた。

「やっぱり、恋愛はハッピーエンドが一番ですよね!」

「浮かれた頭でもわかると思いますが、バイト代は今回も上がりませんから。」

そうだろうと思ってました…。


結局、私のアルバイト代では王都に素敵なマンション、どころか、ちっちゃなアパートも借りれず、今の住まいはニコニコ不動産の倉庫の一部を借りている。アルバイト代がアップしたら、私だけのマイホームを借りようと思っていたのに、この暮らしはまだまだ続きそう。


私の理想のおうちメモ 家庭菜園は欲しいかも。でも、植える野菜は普通の動かないものに限る!

まだ続きます!

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