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少女に恋した家守妖精

作者: 葡萄鼠
掲載日:2020/03/10


 むかしむかしから伝わる妖精がいる。

 彼らは「家」を守る妖精。

 どの「家」にもいて、「家」を守るため、そこに住む者たちを守る。

 彼らは、「家守妖精(ドモヴォイ)」と呼ばれている。







 ある一軒家に、家族が引っ越してきた。

 男が一人に、女が一人、それと小さな嬰児が一人。

 夫であり父でもある男は外で仕事をし。

 妻であり母でもある女は家で家事をし。

 子であり娘でもある嬰児は揺り籠に揺られていた。



 家族は何年もその家に住み続けた。

 やがて嬰児だった娘は一人で歩けるようになり、少女へと成長していった。

 男と女は老いを見せつつも元気で、娘である少女と三人幸せな日々を過ごしていた。



 やがて少女は恋を知り、女性へと移り変わる。

 そして伴侶を見つけ、この「家」を出て別の「家」をもって暮らし始めた。




 ……そう。いつか、こうなることは知っていたハズなのに。



 ―― 本来なら、ただ在るだけの存在だった。

 ―― 家守妖精(わたしたち)は、ただ家とそこに住む家族を守るだけの存在。

 ―― 家守妖精の望みは、家主によってもたらされる。



 ―― それなのに。私は。あの人に、「恋」をしてしまった。

 ―― 家主の望みではなく。わたし個人が抱いた、初めての「望み(おもい)

 ―― いつからか、「家」を守るためではなく。「彼女」を守るために「家」を守るようになった。



 ―― そんな彼女が家をでることになった

 ―― 私は知っていた。知っていたのに、ここから離れられぬ己の定を恨んだ

 ―― 悲しみが恨みに変わり、その恨みは家に住むものたちへ向かう



 ―― 恨めしい……。恨めしい……。

 ―― 離れられぬ、この身が口惜しい……。

 ―― この家さえなければ、自由になるのに。


 ―― この家さえなければ。

 ―― この家があるから私は彼女の元へ行くことが許されない。

 ―― この家さえなければ……。



 しかし、それは家守妖精として、決して想い願ってはいけないことだった。


 私の願いはあまりにも強く、定を超えて影響をもたらした。


 【 家主を死に至らしめる 】


 という、悲劇をもって。



 私の願いは家主に不幸をもたらした。

 そしてそれは自らにも還ってくることに。


 願ったの私。そして叶ってしまった願い。

 家は、なくなってしまった。

 私の存在意義であり、私そのものの「家」が……。


 願いは叶った。

 しかし、同時に、それは自らの「死」を、この世からの「消滅」を意味していた。


 私は願ってしまったのだ。

 自らの死を……。


 初めての「恋」に溺れ、自らの存在としての理由も忘れ、すべてを見失ってしまった。



 ―― ああ、彼女に会いに行くこともかなわない

 ―― 私は私であることも失った

 ―― 守るべきものも守れず、消えゆくのみ




 ああ、ああ、ああああああ、

 愛していた

 愛していた


 けれども、私は私であることに満ち足りていたのに



 せめて、せめて、最期に願うのは、

 この後のものが、家守妖精も、家主も、

 皆が、幸福であれと、




 ただ、、、、、、それ、だ、け、、、




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