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なんと!今年で90歳のお爺さん60年続いたゲームに転生することになりました  作者: 暁 龍弥


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第21話「神核の間――終わりを拒む者」

 地下神殿の扉が完全に開いた瞬間、

 世界の“重さ”が変わった。


 空気が、圧になる。

 光が、質量を持つ。


 神核の間――

 そこは神殿というより、巨大な心臓の内部だった。


 床は白銀と黒曜の紋様が絡み合い、脈動するように淡く光っている。

 壁も天井も存在が曖昧で、遠くと近くの区別がつかない。


 そして中央。


 浮かぶ巨大な結晶。


 白と黒が渦を巻き、互いを拒絶しながらも、決して離れない。


「……あれが……神核……」


 サリオの声が震えた。


【解析完了。

 対象:神核・完全体。

 構成要素:創造神マールの心核+破壊神ダゼル=ノアの残存本質】


 アンシュラが息を呑む。


「一つに……なってる……?」


「いや」


 俺は首を振った。


「“なってる”んじゃない。

 無理やり繋がれてる」


 その時、神核の間に“声”が響いた。


――……やっと……来たか……


 低く、重く、世界そのものを引きずるような声。


 黒い部分が蠢き、形を持ち始める。


 巨大な影。

 輪郭は不完全で、常に崩れ続けている。


 それが――


 破壊神ダゼル=ノアの残滓。


――創造は……嘘だ……

――世界は……苦しみを繰り返す……

――だから……終わらせる……


 サリオが歯を食いしばる。


「……そんなの……

 苦しいからって……

 全部壊していい理由にはならない……!」


 影が嗤った。


――若い……

――だが……お前も……いずれ……壊したくなる……


 アンシュラの影がざわめく。


「……違う。

 俺は“壊したくなった自分”を、否定するためにここにいる」


 ダゼル=ノアの影が揺らぐ。


――……裏切り者……


 俺は一歩、前に出た。


「裏切りじゃねぇ。

 選び直しただけだ」


 神核が強く脈打つ。


 その衝動が、俺の胸を打った。


 ――奪え

 ――支配しろ

 ――神になれ


 破壊神の誘惑。


(……なるほど)


 これは“戦い”じゃない。

 選択だ。


 その時、白い光が神核の反対側から溢れ出した。


 少女の姿。


 マールだった。


「玄道様……!」


 だが彼女の姿は揺らぎ、ところどころ欠けている。


「マール」


「私……もう……長くは……

 神核が……限界です……」


 サリオが叫ぶ。


「そんな……!

 助ける方法があるって……!」


 マールは微笑んだ。


「あります……

 でも……それは……

 神をやめることです……」


 アンシュラが息を呑む。


「神を……やめる……?」


「はい……

 神核を分離すれば……

 破壊神の影響は止まります……

 でも……私は……

 世界を直接守れなくなる……」


 神をやめる。


 それは“消える”ことと同義だ。


 ダゼル=ノアが嗤う。


――ほら……

――創造も……終わりを選ぶ……


「黙れ」


 俺は、はっきりと言った。


「マール、お前が消える必要はない」


「……玄道様……?」


「神をやめるなら、やめ方を選べ」


 俺は拳を握る。


「神として世界を支配するのをやめる。

 でも、“世界の一部として存在する”ことはできる」


 マールの瞳が揺れた。


「……そんなこと……可能なのですか……?」


「可能にする。

 それが俺の創造だ」


 ダゼル=ノアの影が怒りに震える。


――ふざけるな……

――神は……上か……下か……

――人と同じなど……!!


「だから壊れるんだよ」


 俺は真っ直ぐ影を見る。


「お前は“終わり”しか知らない。

 だが世界は、“続くこと”で意味を持つ」


 俺は、神核へ手を伸ばした。


 熱い。

 痛い。

 だが、離さない。


「創造《神核分離・共存構造》」


 世界が軋む。


 神核が二つに分かれようとして――

 止まった。


 マールが叫ぶ。


「玄道様……!

 それ以上は……あなたの魂が……!!」


 胸が焼ける。


 視界が歪む。


 ――神になれ

 ――終わらせろ


(……あぁ、確かに)


 楽だ。


 壊せば、悩まなくていい。


 だが――


(九十年生きて分かった)


 楽な選択は、だいたい後悔する。


 サリオが、俺の背中に手を置いた。


「玄道さん……

 あなたが選ぶなら……

 僕は、支えます……!」


 アンシュラも、影を伸ばし、神核を押さえる。


「俺もだ。

 ……神に従うのは、もうやめた」


 二人の魔力が重なる。


 “寵愛三重奏”。


 神核が、悲鳴を上げた。


 ダゼル=ノアの影が崩れ始める。


――やめろ……

――終わりを……

――奪うな……


「奪わない」


 俺は、静かに言った。


「終わりは残す。

 だが、強制しない」


 拳を握り締め、最後の力を込める。


「創造《神性解体・人界接続》」


 眩い光。


 白と黒が、ゆっくりと分かれる。


 黒い影は縮み、凝縮され、“概念”として封印されていく。


 白い光は――

 マールの姿へと戻った。


 だが彼女は、もう“神”ではない。


 ただの少女の姿。


 しかし、その目には、確かな意思があった。


「……終わりました……」


 神核は消え、

 神殿は静まり返った。


 世界の重さが、元に戻る。


 ダゼル=ノアの声は、もう聞こえない。


 サリオが崩れ落ちる。


「……生きてる……

 世界……まだ……」


 アンシュラは深く息を吐いた。


「……俺たち……勝ったのか……?」


「いや」


 俺は、座り込んだまま言った。


「始めただけだ」


 マール――いや、少女は俺を見上げ、静かに頭を下げた。


「玄道勝利……

 いいえ……

 玄道さん……」


 その呼び方に、少し笑ってしまう。


「どうした?」


「ありがとうございます……

 神ではなく……

 “生きる存在”にしてくれて……」


「礼はいい。

 これからが大変だからな」


 サリオが苦笑する。


「女神様が一般人になった世界……

 絶対、色々起きますよ……」


 アンシュラが肩をすくめる。


「帝国も王国も黙ってないな」


「だろうな」


 俺は立ち上がり、背伸びした。


「でもな」


 三人と一人――

 全員を見る。


「世界は続いた。

 それだけで、今日は勝ちだ」


 神殿の奥で、朝の光が差し込む。


 神の時代は、終わった。


 だが――

 人の時代は、ここから始まる。

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