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なんと!今年で90歳のお爺さん60年続いたゲームに転生することになりました  作者: 暁 龍弥


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第20話「創造は、壊されない」

 地下回廊が、悲鳴を上げていた。


 黒い影が天井から滴り落ち、床を這い、壁を侵食していく。

 それは魔法でも呪いでもない。


 概念そのものの腐食。


 ネヴァンが掲げる黒水晶から、破壊神ダゼル=ノアの“意思の残滓”が溢れ出している。


「ほらほら、いい音だろう?」

 ネヴァンは愉快そうに言った。

「世界が“ほどける音”だ。

 創造で繋ぎ止めた因果が、元に戻ろうとしてるだけさ」


 神殿騎士団の数名が影に呑まれ、存在が削られて消えていく。

 死ですらない。

 最初から存在しなかったかのように、消える。


 リュシアが歯を食いしばる。


「ネヴァン! ここまでとは聞いていない!!

 これは帝国の計画を逸脱している!」


「逸脱? 違う違う。

 完成形だよ」


 ネヴァンは俺を見て、にたりと笑った。


「創造神の神核を宿す君が現れた。

 破壊神の欠片も揃った。

 もう“均衡”なんて要らない。

 世界は一度、壊れた方が美しい」


 サリオが叫ぶ。


「そんなの……ただの自己満足じゃないですか!!」


「神の自己満足だよ。

 人間は、いつだってその下で潰れる側だ」


 アンシュラの影が怒りに揺れた。


「……だから俺たちは“兵器”だったのか……

 人でも、意思でもなく……」


「そうだよ。

 君たちは“神の道具”。

 その中で唯一イレギュラーなのが──」


 ネヴァンの視線が俺に刺さる。


「玄道勝利、君だ。」


 黒水晶が脈打つ。

 俺の胸の奥で、何かが共鳴した。


 ――ドクン。


 心臓の鼓動ではない。

 神核の欠片が、はっきりと反応した。


【マスター、警告。

 破壊神の残滓が“神核”に直接干渉を開始しています】


「来たか……」


 俺は拳を握る。


(マール様……今度は俺が支える番だ)


 ネヴァンが囁く。


「さぁ、玄道勝利。

 選べ。

 世界を壊すか。

 それとも──一緒に“作り直す”か」


 その瞬間、俺の視界が白く染まった。


◇ ◇ ◇


 ――白い空間。


 そこにいたのは、震えるマールだった。


「玄道様……!

 ダメ……神核が……!」


「落ち着け。

 俺はまだ立ってる」


 マールは首を振る。


「ネヴァンは……人間ではありません……

 彼は……“器”です……

 破壊神が、人の形を借りた存在……!」


「やっぱりな」


「このまま神核が奪われれば……

 私は完全に壊れ……

 世界は……」


「壊れない」


 俺は即答した。


「壊させない」


 マールが涙を流す。


「……どうして……

 どうしてそこまで……」


「理由?

 簡単だ」


 俺は笑った。


「九十年生きて分かった。

 壊すのは簡単だ。

 でも“続ける”方がずっと難しい。」


 マールの目が見開かれる。


「世界は続ける価値がある。

 失敗しても、歪んでも、間違ってもな。

 だから俺は──創造を選ぶ」


 白い空間が揺れた。


「玄道様……!」


「力を貸せ。

 神としてじゃない。

 “仲間”としてだ」


 マールは、ゆっくり頷いた。


「……はい。

 私の全てを、あなたに」


◇ ◇ ◇


 現実へ戻る。


 俺の身体から、柔らかな白金の光が溢れ出した。


 それは破壊を拒む光。

 守るための創造。


「……何だ、その光は……?」


 ネヴァンが初めて、焦りを見せた。


「創造《共鳴拡張》」


 俺は言った。


「俺一人で戦う気はない。

 仲間の力を“重ねる”」


「サリオ! アンシュラ!」


 二人が即座に理解する。


 サリオが杖を掲げる。


「創造《情報融合・戦場全域共有》!!

 僕たち三人の感覚を同期します!!」


 視界が広がる。

 影の動き、敵の意図、破壊の流れ。


 アンシュラが影を踏みしめる。


「創造《破壊干渉・逆位相》!!

 壊す力を……壊す!!」


 黒い影が反転し、ネヴァンの影とぶつかり合う。


 俺は一歩踏み出す。


「これが──

 **寵愛三重奏トライ・ブレス**だ」


 ネヴァンが歯を噛みしめる。


「そんな……連携など……

 神の力は個で振るうものだ……!」


「それが間違いだ」


 俺は言い切った。


「神は一人で完結する。

 だが──世界は“一人”じゃ続かない」


 拳を構える。


「創造《因果固定・人の意志》」


 殴る理由は一つ。

 壊すためじゃない。


「存在を否定する思想を、否定する。」


 拳が、ネヴァンの胸を捉えた。


 衝撃は小さい。

 だが、内側の“破壊神の命令構造”だけを破壊する。


 ネヴァンの身体が硬直した。


「……あ……ぁ……?」


 黒水晶が砕け、闇が悲鳴を上げる。


 地下回廊の奥で、巨大な扉が軋みながら動き始めた。


 刻まれた紋章。

 創造と破壊、二つの神印。


【神核反応、最大。

 地下神殿への扉、解放開始】


 サリオが息を呑む。


「扉が……!」


 アンシュラがネヴァンを見下ろす。


「……終わりだ。

 お前は“神の声”じゃない。

 ただの、壊れた器だ」


 ネヴァンは崩れ落ち、かすれた声で笑った。


「……いいよ……

 君たち……本当に……

 神に、なっちゃったんだね……」


「違う」


 俺は首を振る。


「俺たちは──

 人のまま、神に抗っただけだ。」


 扉が完全に開く。


 奥から溢れ出す、白と黒が絡み合う光。


 神核の間。


 世界の心臓部。


 俺は仲間たちを見る。


「行くぞ。

 ここから先が──本当の勝負だ」


 三人は、静かに頷いた。


 破壊神を終わらせ、

 創造神を救い、

 世界を“続ける”ために。


 九十歳の老人は、

 今日も一歩、前へ進む。

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