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なんと!今年で90歳のお爺さん60年続いたゲームに転生することになりました  作者: 暁 龍弥


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第17話「寵愛の激突──神の欠片を持つ者たち」

 国境線──焦げた大地を踏みしめ、三人の寵愛持ちが前へ出る。


 俺、玄道勝利。

 サリオ。

アンシュラ。


 そして対峙するは、帝国第三皇子ジークと、禍々しい寵愛持ち。


 風が唸り、戦場の空気が張り詰める。


 ジークの背後に立つ影が、一歩、前に出た。


 白い髪。黒い瞳。皮膚は灰に近い冷たい色。

 人間というより“人の形をした何か”。


 サリオが震える声で呟く。


「……あれ……生きてるの……?」


「いや──“生かされている”だろうな」


 彼の胸には黒い紋章。

 マールが持つ“創造の波長”とは真逆の、破壊の波長が流れている。


 ジークが満足げに言う。


「紹介しよう。我が帝国が独自に造り上げた寵愛持ち──

 **《破壊神の欠片フラグメント》、名は“ゼオル”**だ」


「破壊神……?」


 リエラが後ろで息を呑む。


「そんな神話……残ってないわ。創造神マール以外の神なんて……」


「残っていない?

 それは“都合よく消された”というだけだ。」


 ジークが笑いながら続ける。


「創造神がいるなら、対となる存在がいるのは当然だろう?

 だが王国はその記録を封じた。

 “破壊の権能は危険すぎる”とな。」


「……あぁ、なるほどな」


 俺は刀の柄を握り直す。


「だからお前は“自前で神を作った”のか」


「正確には“神の欠片”だ。

 創造神の寵愛が“創り出す力”なら、破壊神の欠片は“壊すだけの力”。

 命令も思考も要らぬ。

 ただ破壊するためだけに存在する兵器だ。」


 アンシュラが歯を噛みしめる。


「……お前……だから俺を“兵器”って呼んでたのか。

 あれの前段階……試作品が俺達だったってわけか……」


「そうだとも。

 そして完成した“ゼオル”は、お前とは違い、裏切らない。」


 ゼオルが無言で首を傾けると──

 地面が波打つようにひび割れた。


 魔力圧が重い。

 ただ立ってるだけで、周囲の空間に耐圧が走るタイプ。


(チートにも種類はある。

 俺は“創る”側。

 こいつは“壊す”側。

 ……悪いが、噛み合いの悪さなら俺の方が上だぞ)


 ラディンが叫ぶ。


「玄道、来るぞ!!」


 瞬間、ゼオルが消えた。


 いや──速すぎて“存在が薄れた”だけ。


「後ろ!!」


 サリオの叫び。

 振り向くより早く、俺の背に黒い腕が迫る。


 ゼオルの腕が触れた瞬間、

 空間そのものが崩壊し始めた。


「空間破壊か……厄介だな」


 俺は即座に創造する。


「――創造《空間補正・スレッド》!」


 黒い穴が広がる前に、織物のような魔力線で塞ぐ。

 ゼオルは無言で攻撃の方向を変えるが……


「遅い」


 アンシュラが影の鎖を伸ばし、ゼオルの足を絡め取る。


「創造《影縫い》!!」


 だがその影が触れた瞬間──

 影が“破壊されて消えた”。


「……え?」


 アンシュラの顔が引きつる。


「影が……殺された……?」


 ゼオルの拳がアンシュラに迫る。


「危ねぇ!!」


 俺は無意識に飛び込み、間に割り込み刀で受ける。


 金属が砕けるような重圧。

 刀身が悲鳴を上げた。


(これ……生半可な武器じゃ持たねぇな)


 ゼオルは無表情のまま、俺を見つめる。


「……玄道……」


 感情はゼロ。

 あるのは、“殺す”という命令だけ。


「サリオ!!」


「はい!!」


 サリオの魔力が展開し、俺の身体に光が宿る。


「創造《超反応加速アルス・フレーム》!!

 身体能力30%アップ! 思考速度20%上昇!」


「助かる!」


 ゼオルの腕を弾くと同時、俺は踏み込む。


 だがゼオルの反応も速い。

 まるで“先を読んでいる”ような動き。


 ジークが嘲笑する。


「無駄だぞ。

 ゼオルは“相手の攻撃意図”を破壊する。

 貴様の攻撃は届かぬ。」


「意図を破壊……?」


 サリオが眉をひそめる。


「それ、予知じゃない!!

 未来の“行動の形”を感じて、それを破壊してるだけ!!」


(未来予知じゃない……

 俺の“攻撃の構造そのもの”を殺してるってわけか)


 攻撃を仕掛ける前から、壊されてる。


(だが──壊せない攻撃もある)


 俺は刀を握り、ふっと力を抜いた。


「玄道さん……?」


「アンシュラ」


「……あぁ、わかってる。

 “壊されない攻撃”──“存在しない攻撃”だろ?」


「頼む」


 アンシュラが笑った。


 俺は深呼吸し──

 攻撃の意図を完全に“空”にした。


 構えも、意識も、方向性も持たない。


 ただ歩く。

 ただ近づく。


 攻撃としての意味がゼロの動き。


 ゼオルは反応しない。


 サリオが息を呑む。


「これ……ゼオルが壊せない……!」


 アンシュラの影がゼオルの背後から伸びた。


「創造《影写し(コピー)》──!」


 ゼオルの影を複製し、床にはりつける。


 ゼオルが初めて動きを止めた。


「……ッ」


 その一瞬。


「そこだ!!」


 俺は刀を構えず、ただ拳を作り──

 最短の距離で、最小限の動きで、最強の一点を打ち抜いた。


「武術・九十年式(勝利さんver)……

 《無意識反射撃ち(ノーインテンション・ブロウ)》!!」


 ゼオルの身体が鈍く揺れた。


 表情も声もない。

 だが明らかに、内部の魔力構造が乱れた。


 サリオがすかさず補助魔法を撃つ。


「玄道さんの攻撃に合わせて──

 創造《破壊構造固定デッドロック》!!

 ゼオルの魔力構造、3秒間だけ固定します!!」


 アンシュラが叫ぶ。


「その3秒で決めるぞ玄道!!」


「言われなくても!!」


 俺は刀を振り上げ──創造を重ねた。


「創造《刀身再構築・神鋼化》!!

 さらに──創造《理断コーズ・カット》!!」


 刀は光を吸い込み、世界の“因果そのもの”を断つ輝きに変わる。


 時間が止まったように見えた。


 ゼオルの身体が、攻撃意図を感知する暇もなく固定されている。


「──終わりだ」


 振り下ろした。


 黒い波動が割れ、世界が震えるような音が響いた。


 ゼオルの胸の紋章が砕け──

 彼の身体は膝をつき、地面へ倒れ伏した。


 戦場に静寂が訪れる。


 ジークの表情が一変し、怒りと恐怖が混ざる。


「……馬鹿な。

 破壊神の欠片が……倒された……?

 寵愛を三つ束ねただけで、そこまで……?」


 アンシュラがジークを睨みつける。


「ジーク様。

 もうその“正義”……通用しませんよ。」


 サリオが前に出て、声を張る。


「帝国の兵士さんたち!!

 もう戦う必要なんてない!!

 あなたたちは“騙されていた”だけなんだ!!」


 帝国兵たちがざわつく。

 破壊神の欠片が倒れた光景が、彼らの士気を根こそぎ奪っている。


 俺は刀を下ろし、ゆっくりと告げた。


「ここで退け。

 これ以上戦えば、お前たちも国も、本当の意味で救われなくなる。」


 ジークは一度だけ歯を食いしばったが──

 やがて冷静さを取り戻し、宣言する。


「……よかろう。

 今日のところは退く。

 だが忘れるな玄道勝利。

 これはまだ“序章”だ。帝国はこれで止まらぬ。」


「だったら次も叩き潰すだけだ。」


 ジークは笑った。


「楽しみにしているぞ、老人。」


 黒い転移陣が足元に浮かび、帝国軍は撤退していった。


◇ ◇ ◇


 大地に残されたのは俺たち三人と、倒れたゼオル。


 アンシュラがゼオルの傍に膝をつく。


「……こいつ、どうするんだ?」


「殺さない。」

 俺は即答した。


「こいつも兵器じゃない。

“壊すために造られただけの哀れな存在”だ。

 助けられるなら、助ける。」


「玄道さん……優しすぎますよ……」


「九十年生きてりゃ、色んなやつを見てきた。

 壊したい奴より──救われたい奴の方が多いんだよ。」


 アンシュラはゆっくり頷いた。


「……俺達、三人で……救っていけるかな」


「いけるさ。

 世界が壊れる理由は全部、ぶっ壊してやる。」


 サリオが嬉しそうに笑った。


「じゃあ、次は……“帝国に乗り込む”番ですね!」


「そうだ。

 黒幕の正体も、マールの命令が壊れている理由も……

 全部“帝国の奥”にある。」


 俺は空を見上げる。


 雲の向こうに、見えない糸がゆらゆらと揺れている気がした。


(マール様……

 お前が泣いてた理由、全部突き止めてやる。

 世界を救うだけじゃ足りねぇ。

“神様”も──救ってやる。)


「さぁ──行くぞ、寵愛三人衆。」


 三人の足音が、焦げた大地を踏みしめる。


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