0話前世と来世の間
「貴方の想うように為すがよい。」
誰の声だろうか体は動かず声もでない。
俺は死んだんだと思う。最後の記憶は病院で看護師さんとの会話か。
「なんで動けるの!?」
白血病が発覚して即時入院それから1週間か2週間した頃だったか、体力温存のためにほぼ寝てたから日付が曖昧だな。
「ご冗談をおっしゃる、動けるもなにも体自体は壊れてないですからね。」
トイレに行くにもベットから離れるときは必ず看護師さんの監視下でないとダメと念を押され従ってるだけなのだが。血液検査データが片足と言わずほぼ両足とも棺桶に突っ込んでるのは知っているが自覚できる症状は熱があるのと歩き始めの立ち眩み程度だ入院前よりは軽いし動き出せば回復する。
「もう!そんなこと言って気を付けてくださいよ!絶対ですよ!何かあったら直ぐに呼んでくださいよ!」
そんな会話をしてベットに潜り直したのが最後か、うん苦しまずに逝けたな。
独り身だし家の仕事の方は妹たちが何とかしてくれるだろう、心残りがあるとすればDTだったのとPCの中身だがもうどうにもならんな。
後はそうだな主治医の先生とあの気の良い看護師さんが気を病まなければいいな。
目が覚めたというのだろうか?それとも意識が戻ったと言うべきか?
気がついたら俺は暗い土の臭いのする部屋に居り小学低学年位の体になっていた。
タブン前世の記憶になるのだろうがはっきりとあり、そしてここ数日の記憶もある。
この体は筋肉質で額にふたつこぶのような角があることを除けば前世とそう代わりがない。ただ記憶にある同じ部屋で寝ている現在の兄弟?達は青味を帯びた灰色や黒色(黒人種とは別物)と前世では考えられない体色に生後数日でチャンバラを始め、たどたどしくも会話による意思の疎通も可能な異常さを見せる。
それに輪をかけて異常なのは体躯が3~4mの鬼(としか表現できない)が交代で俺たちの面倒を見ていることだ。
落ち着いて記憶を整理すると彼らが話している何故か言語は理解できここは保育所のようなモノで後一月ほどここで育てられ外のオーガ種社会で生きることになるようだ。
前世の記憶からすると異常しか感じないが不安感は無い、なるようになるだろう。そう思うと緊張していたのか昼の疲れを体が思い出し襲ってきた眠気に身を任せ体を丸め小さな布に潜り込み直す。