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20.灰かぶり、衣装に不安しかない

ブクマ登録&評価ありがとうございます(艸ε≦●)♪

 



「殿下! ああ、やっとお会いできましたわ!」

「滞在して早一週間、外廷で一度ご挨拶しただけで一度も会いに来てくださらないなんて、酷いですわ」

「ずっとお待ちしておりましたのよ?」

「寂しかったですわ」

「今宵こそはお渡りくださいますでしょう?」


 思い思いに言葉を紡ぎながら華やかな笑みを貼りつけて令嬢方がすり寄ってきたが、しかし護衛の近衛騎士たちによって阻止され、苛立ちも露に忌々しげに近衛騎士を睨んだ。

 鞘に納めたままの(フラー)を二名の騎士に突き付けられれば、それ以上近づくことは出来なかった。


「無礼な! 誰にそのような無粋なものを突きつけているのです!」

「お退きなさい!」

「殿下をお守りするのが我らの務めです」

「まあ! わたくしたちが殿下を害するとでも!?」

「わたくしたちは殿下の妃候補ですのよ!?」

「逢瀬を阻止する権利などないわ!」

「喧しい。我が護衛は職務を全うしているに過ぎない。王族に許可なく触れようとした不敬をすんでに防いでもらったのだから、礼くらい言ったらどうだ?」


 そんな、と口々に信じられないとばかりにベイジルを凝視する。

 ベイジルもエグバートも冷えきった視線を向けていた。無駄遣いの極みとも言える豪奢なドレスに装飾品、何よりきつい香水の臭いが充満していて不快感を煽ってくる。


「そもそも、其方らの主張は根本から間違っている。私の妃候補だと? そんなもの誰が許可した」

「あんまりですわ、殿下!」

「わたくしたちは殿下の妃候補として上がったのだと!」

「だから根底から履き違えていると何度も言わせるな。其方らの実家が王宮へ送りつけてきた名目は、花嫁修業の一環だ」

「ええ! そのとおりです! ですから!」

「まだわからないか? 花嫁修業の一環として王宮に入るということは、侍女として礼節を学ぶということだ。私の妃候補? そんな事実はどこにもない。真実妃候補だと言うなら、こんな貴賓棟などではなく、王族の居住、内廷に招かれていなければならない。そんなことすら気づけない愚か者たちよ。礼儀作法を学ぶべき日程をすでに一週間も放棄して、私の命じた職務を全うする我が王宮自慢の侍女長に暴言を吐いてまで、いったいここで何をしている?」


 令嬢たちの顔からざっと音を立てて血の気が失せていった。そんな、聞いていませんわ、などと口々に呟いている。


「私は三階への立ち入りは禁じていたはずだが、何故ここにいる」

「きっ、聞いたからですわ! 下賤の者をここへ滞在させ、あまつさえ殿下のお渡りがあったなどと! そのようなことは許されません!」

「そうです! これは殿下のお為でもあるのです!」

「ほう? ここ三階へは昨晩アクロイド伯爵父子も泊まっていたが、立ち入りを禁じていたにも関わらず、私がどの部屋を訪ねたか、まるで見て知っているかのような口振りだな?」

「そっ、それ、は」


 目を泳がせ、激しく動揺する令嬢たちを見下ろして、ベイジルは狩りを楽しむような獰猛な笑みを口元に覗かせた。

 令嬢方は真っ青な顔で身を寄せ合っている。お付きの侍女たちも蒼白な面を俯かせ、ガタガタと震えた。


「どうやらデカイ鼠が紛れ込んだようだな、エグバート?」

「そのようで」

「それと、アクロイド宰相。この部屋には下賤な者が滞在しているそうだが、心当たりはあるか?」

「さて。心当たりなどございませんな。この部屋に滞在しているのは我が愛娘にございます。我が娘をそうだと断じているのであれば、私はアクロイド伯爵家当主として、全力で潰しにかからねばなりませんな」

「「「「「ひっっ」」」」」

「ははは! 有言実行の宰相殿がそう宣言するなら、この者たちの実家は風前の灯だな」


 上機嫌なベイジルをじとりと睨むアクロイド父子は、鬱陶しくたかる蝿を払う体のいい道具にされたことに苛立ちを覚えていた。

 臣下として自分達が利用されるのはいいが、セレストを矢面に立たせるようなやり方は気に入らない。

 親子から掛け値なしの殺意を向けられても、ベイジルは思惑通りの結果に満足げな笑みを浮かべている。邪魔で仕方なかった令嬢たちを追い出せる大義名分を得たのだ。アクロイド父子から向けられる苛立ちも、今のベイジルにとってはそよ風程度のものだった。






 ◇◇◇


「ええと……あの、これ本当にベイジル様が……?」


 思わず呟いたわたしは間違ってないと思います。だって、これはどう見ても。


「ドレスですよね、これ……?」


 そう、ドレス。戦闘服じゃなく、ドレス。

 エセルさんが広げて見せてくれている衣装は、下にホットパンツを履く形にはなっていても、片方にスリットが入った短いタイトスカートだった。

 明らかに戦闘を想定していないスタイルな上に、その上からオーバースカート重ねちゃだめでしょう? これでどうやって戦えと?


「はい、間違いございません。お針子方が夜通しで仕上げたのだそうですよ」

「昨夕セレスト様が着ておられた服を拝借しましたので、サイズはバッチリです」

「い、いつの間に……」


 お針子の方々が夜なべして作ったなんて聞いちゃったら、「着ませんよ!」とはもう二度と言えない……。


「淑女は足を出しちゃいけないと聞きました。それ、太腿まで確実に出ちゃいますけど……」

「セレスト様はまだ成人されておられませんし、冒険者をされている女性はもっと露出高めなので、オーバースカート付きならギリギリ許容範囲内ということで」

「ギリギリなんだ」

「さあ、セレスト様。お着替えしましょうね」

「……………はぁい」


 ほんのり抵抗してみたけど、着るのはすでに決定事項だということを再確認するだけでした。

 これはあまり動かない方向で、弓矢で一撃必殺が一番だろうけど、相手は飛行型が三、昆虫型が一、大型が一ということだった。一撃必殺は……無理よね、どう考えても。


 どうするの、と半ば現実逃避気味に半眼になっている間に着替えは終わった。

 アクロイド家で鍛えられたので、侍女さん方の前で全裸になることも、じっとしてお世話されるのもすっかり慣れてしまった。慣れた自分自身にびっくりです。


「まあ……なんて美しい。梳る毎に艶を増すようだわ」

「とても不思議な色ね。プラチナブランドのような輝きをしているのに、光の具合で色合いがころころと変わるなんて」

「ええ、本当に。まるで絹糸のようだわ」


 うっとりと囁きながらも、一切手は休めない。

 灰をかぶったようだとずっと揶揄されてきた身としては、心からの賛辞はとてもくすぐったいものだった。

 慣れない褒め言葉にもじもじしている間に仕上がったようで、繊細な編み込みの入った髪は、あっという間に後頭部で器用に結ばれていた。


(この髪型は……)


 アクロイド様を彷彿とさせる髪型だった。鏡越しに見事な編み込みを見つめていると、お揃いみたいで嫌だとは今さら言えない。


「あら。図らずも下の兄君様とお揃いになってしまいましたわね」

「それ言っちゃだめなやつぅぅぅぅ~……」


 がっくりと肩を落とした時、コンコンと扉を叩く軽いノック音がした。さすがに覚えたわね。このノックの仕方は―――。


「セレス。俺だ」


 ですよね~と、ベイジル様の声に半笑いを浮かべる。


「支度を終えたら応接間へ来てくれ。宰相父子も来ている。お前の父親と上の兄だな」

「はい。すぐに参ります」


 行ってもいい?とばかりに二人を振り返ると、笑顔で首肯し、エセルさんが扉を開けてくれました。その直前にドナさんがこそっと耳打ちしてきます。


「殿下方はきっと驚いたお顔をされますよ。どなたが一番に称賛してくださるでしょうね?」


 悪戯っぽくウインクされて、撃ち抜かれたわたしはよろめきながらエセルさんの開けてくれた扉を潜ります。

 ロメリアさんといい、王宮の侍女さん方はなんてお茶目で可愛らしくて愛らしいのかしら……っっ! 今日は朝からときめきが止まらない……!


 内心身悶えつつ、表面上は澄まし顔で応接間へ入りました。今更な気もしますが、パパたちにみっともない姿は晒せません。


「お待たせ致しました」

「これは……」

「驚いたな……」


 パパとエグバートお兄様が孫を愛でるように目尻を下げて微笑んでいます。パパはともかくエグバートお兄様はまだまだお若いのに……。

 可愛さと便利さは雑ざらない水と油のように相反するものだけど、お二人に喜んで頂けたなら、討伐に不向きな純白ふわふわヒラヒラも着た甲斐があるってものです。

 ええ、実用性は度外視ですが。


「さすが私だな。センスがいい。とても似合っているぞ、セレス」


 ベイジル様の自画自賛に若干引きながらも、きちんとお礼を伝えなくてはなりません。

 ええ、大事なことなので繰り返しますが、実用性は度外視です。


「ありがとうございます……でも、オーバースカートだと戦えませんよ」

「えっ、戦えないのか?」

「えっ、何で戦えると思ったんです!?」


 心底驚いた顔をするベイジル様に、逆にわたしが驚いてるんですけど!?

 ひらひらと翻るオーバースカートは足捌きの邪魔になるし、魔物の攻撃に捕まりやすくなる。実戦向きじゃないことは一目瞭然なのに、何でこれでまともに戦えると思ったのか意味がわからない!


「まあ、それはセレスに任せる。ただ今回の討伐戦は見た目の花も必要でな。どうしても無理なら仕方ないが、出来る範囲でいいからそのままで戦ってくれないか?」

「ええ? どういうことです?」

「行けばわかる。ではそろそろ向かうとしよう」


 お茶を濁したベイジル様に訝りつつも、若干不穏なものを感じながらこのままアンフィテアトルムへ向かうことになった。






寒いですね~……((( ;゜Д゜)))


今日は夕方から近所の神社でお祭りやってまして、ずーっと太鼓の音がしています(人´ з`*)♪


何番から何番と、神楽舞の奉納が続きます。

その辺はまったく詳しくないので、何番かは不明。


毎年11月15日に祭りがあって、この日を境に急に冷え込むから、お布団をクリーニングに出すタイミングの目安にしています( *´艸`)


23時まで神楽奉納は続くので、太鼓の音色に耳を傾けて癒されてます:*(〃∇〃人)*:

和太鼓めっちゃ好き~♪(´ε`*)


舞楽と雅楽も大好きです(〃艸〃)

蘭陵王とか、もう、もうっっっ゜+.(*´pωq`)゜+.

厳島神社のDVD入手するくらい好き(〃艸〃)

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