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竜王の息子に転生した俺は王道な異世界生活を楽しむ  作者: 高錫裕貴
1章 旅の始まり
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5話 テンプレの予感

本業と副業が本格的に忙しくなってきました・・・

仕事もまだ慣れるのに時間がかかるので、もどかしい限りです。

 ギルドを出た後、早速フェンを連れて宿を探しに向かう。


「え~っと、確かこの辺に・・・お、ここか」


 受付嬢に教えてもらった『戦士の杯亭』という名前が書かれた看板が掛かっているのを確認して中に入ると1階は食堂になっており、客もちらほらといる。カウンターの方へ行くと奥からがっしりとした体つきの男が出てきた。


「いらっしゃい。泊まりか?」

「ああ。個室を一部屋、それと朝・夕の食事にお湯とタオルを毎晩、あとは従魔用に馬小屋のスペースを一つ貸してくれ。食事は俺と同じものを頼む」

「・・・それなら1泊につき小銀貨5枚と銅貨1枚。食事は足りなければその分を料金に上乗せ、10日まとめて払えば割引いて銀貨5枚だ」

「そしたらとりあえずこれで10日頼む」


 そう言って銀貨5枚をカウンターの上に置くと大将は黙って受け取り、代わりに[203]の札が着いている鍵を取り出した。


「そこの階段を上がって一番奥、右手の部屋だ。馬小屋は開いているところを使え」

「どうも」


 鍵を受け取ってからまずフェンを馬小屋に連れて行くとそこでは大将よりも大分若く、俺より少し上くらいの青年が掃除をしていた。


「あ、いらっしゃいませ。お客さんですか・・・って、うわぁっ!?」


 俺はまたかと苦笑しつつも青年を落ち着かせる。


「申し訳ありません・・・それにしてもずいぶんと立派な狼ですね。あ、僕はこの宿の大将、アランの息子でエレンといいます」

「シグルだ。少しの間世話になる。それで、大将には空いているところを使えと言われたんだが・・・」

「それならこちらが空いていますよ」


 エレンが指す場所を見て問題がないことを確認し、そこにかけられていた[空き]の札を裏返して[使用中]に変えておく。


 その後は依頼を受けるにも微妙な時間だったのでフェンを連れて町を散策することにした。

 食べ歩きを楽しみつつ、いろんな店を覗いていく。通りを歩いている人たちや露店の店主たちはフェンを見るとやはりぎょっとするも首輪につけている従魔証を見て驚きが好奇に変わる。ついでに大食らいの雰囲気を察した店主たちの目が好機に輝く。


 そんな感じで町を散策していき、貴族街の近くにさしかかったところで後ろから突然声をかけられた。


「おい貴様、そこで止まれ」


 俺を呼び止めたのは傲慢さを隠そうともしていない、相手を見下した声。ものすごく嫌な予感がしたが仕方なく足を止めて振り返ると、騎士の出で立ちをした者達が数人たっていた。こちらを見下している目つきがすでに彼らがろくでもない連中であることを物語っている。

 その証拠に、周りの人たちは彼らを避けるようにそそくさと離れていき、俺には同情の視線が向けられていた。

 正直相手をするのは嫌だったが逃げるのは性に合わないので返事をする。


「何か用か?」

「フン、たかが平民の分際でその口の利き方は何だ」

「我々を知らないと言うことはこの町に来たばかりか?」

「全く、これだから学のない田舎者は」


 「馬鹿」だと確信した。鎧に描かれている紋章がドレッド達のものと異なっていることから、この町の領主ではなく、別の貴族に仕えている者らしい。


「まあ良い。貴様、珍しい魔物を連れているな?よく飼い慣らされているようだ」


 フェンの首に着いている従魔証にチラリと視線を向けつつ騎士は話を続ける。


「それをこちらによこせ。ついでに貴様がつけているその防具もな。貴様に代わって我らがガルべージ伯爵に献上しておいてやろう。その方がよほど・・・」

「断る。じゃあな」


 聞くだけ時間の無駄なのでさっさと断り背を向ける。が、そこへ騎士が回り込み、俺を包囲する。その目にはすでに危険な色を帯びていた。


「痛い目に遭わないとわからないのか?」

「思い切り典型的な三下の台詞だが、そのまま返すよ」

「何だと!!」


 お返しに見下した目で嫌みとともに言い返すと予想通り簡単にキレた。剣を抜き、こちらへ向けてくる。対して俺はポケットに手を突っ込んだまま。フェンは道の端まで下がって完全な傍観態勢に入る。


「・・・何のつもりだ?」

「いや、どうせお前ら程度じゃフェンにはダメージが通らないし、それなら俺一人に集中させた方が少しはマシになるかと思って。ああ、俺は武器も魔術も使わないから安心しろ」


 要するに、普通にやり合っては相手にもならないからハンデを負ってやる、という完全に上から目線の挑発である。


「このガキ・・・!良いだろう、そんなに死にたいなら今すぐに処刑してやる!!」

「やれるもんならな」

「ほざけぇっ!!」


 騎士達がそれなりに連携のとれた動きで斬りかかってきた。だが、所詮はそれなり程度でしかない。ギリギリまで引きつけてから余裕の表情でかわしていく。上へ下へ、左へ右へ。自分たちの攻撃を意に介さない俺の態度に騎士達はさらにヒートアップしていく。


「ちくしょうっ!当たらない!!」

「何なんだこいつは!?」


 しばらくして、しびれを切らしたらしいリーダー格の騎士がついに詠唱をし始めた。

 っておい、その魔力量はやばくないか?家一軒吹き飛ぶ威力だぞ。それ。


「食らえ!〈ファイアーボー・・・」

「馬鹿者!やめないか!」


 〈ファイアーボール〉を使おうとしていたらしい騎士に向けて突如上がった叫び声とともに純粋な魔力のみで作り出された魔力弾が放たれ、発動寸前だった彼の魔術を吹き飛ばした。


「ぐわっ!っくそ、誰だ!」

「私だ」

「っ!?あ、貴方は!」


 名乗り出た男を見た騎士達は目に見えて動揺した。

 短い金髪に碧い瞳、そしてその精悍な顔つきからは強者だけが出すことのできる覇気が感じられる。その男もまた騎士鎧を着ていたが、より豪華な意匠が施されていた。そしてドレッドと同じ紋章。どうやらこの男は領主に仕える方の騎士のようだ。その後ろからさらに領主側の騎士達がやってくる。


「それで?なぜお前達はそこの少年に剣を向けているのだ?それに先ほどの魔術、私が防がなければ明らかに民家にまで被害が及ぶ威力のものだった。詳細な説明を願おうか」

「こ、これは、その、そ、そこのガ・・・少年が」

「ふむ?少年がどうかしたのか?」

「いきなり呼び止められ、従魔と装備をよこせ、などというふざけた要求をされたので断ったら剣を抜かれました」

「なっ!?」

「ほう?それはなんとも興味深い話だな。おい、今の少年の話は事実か?」

「そ、それは・・・!」


 男に問い詰められ、しどろもどろになる騎士達。


「はぁ、もういい。お前達を拘束させてもらう。くだらない言い訳は後でゆっくり聞かせてもらうとしよう。連れて行け!」

「「「はっ!」」」


 男の命令を受けて部下達が騎士達を連行していった。それを見送ると今度はこちらに視線が向けられる。


「協力に感謝する、少年。君が反撃をしていなかったおかげで奴らをすんなりと捕縛することができた。それを見越してのことだったのだろう?」

「ええ、まあ」


 あの場で奴らをたたきのめしてもよかったのだが、あくまで俺は平民、奴らは騎士。そのことから正当性の有無に関係なく攻撃したことそのものを問題視される可能性もあった。よって奴らに言い逃れする余地を与えないため、守りに徹していたというわけだ。


「自己紹介がまだだっな。私はこの町の領主に仕える騎士団の団長をしているロバート・アルグレイ士爵だ。少年、君の名は?」

「シグルと申します。こちらは相棒のフェンです」

「うむ、騎士数人を相手に一歩も引かぬ勇敢さ、そして先ほど見せた技量。若いのに大したものだ。もし君がよければだが、うちに来ないか?」

「申し訳ありませんが、俺は誰かに仕えるつもりはありませんので」

「そうか・・・残念だ。ただ、何か困ったことがあったら言ってくれ。君のような将来有望な若者であれば喜んで手を貸そう」

「ありがたきお言葉」


 ロバートは断れることは想定していたのか特に食い下がることもなくあっさりと引き下がり、そのまま帰って行った。

 それにしても、ガルべージ伯爵とやらでこの後テンプレの予感がするのは俺だけだろうか?

 面倒なことが起こりそうな予感にため息をつき、その日は宿に戻った。


 ちなみにその日の夕食、俺とフェンの食いっぷりを見た大将は顔を引きつらせながら銀貨2枚の追加料金を請求したのは言うまでもない。

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