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テンジク

「イチゾウは若い王子に集中したいらしいから、このまま帰ってくれ。マスターヨボには、慰問団の団長をしてもらいたいので、まだしばらく残ってもらうぞ。」

 シンゾウの事務的な言葉に

「へっへっ。まだ、年寄りをこき使う気らしい。早く年金生活をしてみたいわい。」

 ヨボは目をしわの中に押し隠すように細めながら笑った。


「今度は、サンゾウに会いに行く。やつは王子軍の側近として常に城の中にいるはずだ。王子軍の本拠地であるテンジク星に行くには、生の肉体では不可能だ。やつのいる銀河の間には無数のブラックホールと亜空間の溝がある。われわれにはそれらを知る水先案内人がおらん。」

「では、どうやって。」

 ジゾウの説明に、コクウがしびれをきらして割って入る。

「だから、会いたくも無いシンゾウのやつに頭を下げたんだ。王子軍は広大な宇宙に点在している。さらに、用心深い。そのため、城に居る連中は全てが最新のヒューマノイドだ。こいつは完全に肉体と分離できる。そして、万一破壊されればその者の意識は自動でバックアップに転送される。そこに行くには正規ルート意外に無い。わしはやつと兄弟だし、市民権も得ている。だか、お前たちは身元を証明するものがない。まかさ、イチゾウの子という訳にもいかん。だから、王子軍と近い議員の養子として身元を確保したのだ。血縁関係を調べるわけじゃない。証明書さえ揃っていれば、問題はない。」

 彼等はアンドロイドのチヨが作る手料理を食べながら、ひと時の宇宙旅行を楽しんだ。そして、転送基地のある惑星へとたどり着いた。


 そこは、永世中立地帯にあるヒューマノイド管理地の一つであった。美しい湖に宇宙まで達するかという高い塔がそびえ立つ。転送を希望するものは、地上で審査を受け、塔をゆっくりと上昇しながら転送準備に入る。そして、意識は塔の頂点から亜空間通信される。残った肉体はそこからその者の母星へと送られていく。

「ここからはお前たちだけで行け。先方にはサンゾウの迎えが待っている。シンゾウの部屋であった侍女を議員の跡継ぎにするために訪問することになっている。お前たちが話をつけ次第、あの子も向かう。くれぐれも正体がばれんようにな。」

 ジゾウはそういい残すと、チヨと共に飛び去った。


 ナーシャとコクウは気が付くと、大きな部屋の中に居た。豪華な装飾に高い天井。宮殿の内部のようだ。

「気が付かれましたか。」

 サンゾウの世話人だろうか。

「転送基地じゃないんですね。」

 ナーシャが尋ねた。

「この場所はサンゾウ様のための控えの間になっております。城の場所は秘密ですので、直接こちらへお連れいたしました。」

 若い男が丁重に対応した。

「夕食の時間になりましたらサンゾウが面会していただきます。しばらくは意識が落ち着くまでこちらでお休みください。御用がありましたら、そちらのベルを鳴らしてください。」

 男は両手を胸の前で合わせながら丁寧にお辞儀をすると部屋を立ち去った。

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