ウィンウィン
「ここへきた、本当の目的は何だ。」
シンゾウが単刀直入に尋ねる。
「せっかちなやつだ。まあ、いい。実はイチゾウの子供たちを見つけてな。」
「ほう、一人ではないのか?やつには話したのか?」
「まだだ。話したところで、興味などあるまい。」
ジゾウの言葉にシンゾウは鼻で笑った。
「ふん。そうだな。やつは王子の体を乗っ取ることで頭が一杯だからな。」
「今は、わしの芸人仲間がめんどうを見ておる。皇帝の子というだけでは食っていけんでな。」
「何だ?ドツキ漫才でもやらせる気か?」
「ホースの才能に恵まれた子だ。わしらも年だ。アンドロイドも進化している。これが最後のホース使いかも知れんな。」
ヨボは少々とぼけ気味にシンゾウに向かって話した。が、それはあながち嘘でもなかった。すでに、最新のアンドロイドにはホースは効かない。ほどなくホースの技は時代遅れの異物となってしまうだろう。
「で?」
シンゾウはさらに問いただす。
「イチゾウの子といっても帝国では身分の保証も無い。なので、正式な身分登録がしたい。」
「確かに、役所では拒否されそうな案件だな。イチゾウ兄さんも聞いてはくれないだろうな。」
そういうと、シンゾウはしばらく黙って考え込んだ。
「わしの養子というわけにもいかないが、適当な連中がいる。そいつの養子ということにしてやろう。心配ない。事故で亡くなった議員でな。幸い親族はいない。なあに、議員には隠し子はつきもの。だれも不審がるものはいない。ただ、死後なので遺産相続はできんぞ。」
「で、こちらの頼みは聞いてもらえそうか?」
しばらく間をおいてシンゾウがジゾウに問いただした。
「OKだ。ボランティアとはいえ慰問団に参加したがる芸人は若手の中には結構いる。兵役を免除する出身地もあるらしいし。」
ヨボが横から答える。
「ありがたい。いやあ、軍の中にはまだまだ反乱分子もいるでな。こちらも人気取りをせんと。」
シンゾウのとぼけたような声が響く。
「これぞ、ウィンウィンだ。」
ヨボは両手を回転させ、芝刈り機の真似をした。




