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シンゾウの毛

「兄さん、よく来てくれました。」

 おおきな扉が開くと、髪の長い小柄な男がドアの中央を通ってゆっくりジゾウへ歩み寄ってきた。顔はにこやかだったが、薄く開いた目は冷ややかだった。

「元帥になったと聞いたので、ちょっと挨拶にな。しかし、シンゾウに毛が生えたとは驚いた。」

 ジゾウも作り笑顔で返した。

「いやいや、いまやサンゾウ兄さんもいなくなって司祭代行までやらされている。お陰でこんなカツラまで被らなきゃいかん。忙しい限りだ。」

「イチゾウはそれでいいのか?」

「イチゾウ兄さんはそれどころじゃない。いままでの無理が祟ってすっかり老いぼれた。はやく新しい体に移りたくて、政治どころじゃないよ。」

 シンゾウは体の向きを変えた。

「これはこれは、マスターヨボ。なにやら派手に暴れたらしいですな。反社を手助けしたとか。苦情がきてますぞ。」

「営業の依頼で出かけたら、たまたまテロ現場だっただけじゃ。金は受け取っとらんからセーフじゃろ。」

「テロリストは香木売りに化けてもぐりこんだそうじゃないですか。王女付きの盲目の娘が首謀者だったとか。まさか匿ったりしてないでしょうな。」

「まさか。盲目の娘など心当たりもないわ。もっとも、もうろくの爺ならここにおるがの。」

 シンゾウの問いにも、のらりくらりとはぐらかす。 けっ!くえない爺だ。と、シンゾウは内心思った。

「祝いがてら、ヨボに芸を見せてもらおうと思ってな。」

 ジゾウが二人の間に割って入った。


「ここはアンドロイドだらけだ。ホース一振りで大混乱になるので遠慮しておくよ。」

「残念じゃな。わしのホースはまだまだ現役じゃぞ。」

 シンゾウの言葉にヨボは顔をしわくちゃにして笑った。

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