再生
第一の将が笛を吹くと、あちこちに蚊柱が舞い上がった。
「視界が塞がれて離陸できません。」
すかさず第二の将の奏でる音色に、毛むくじゃらの小動物が駆け回る。第三の将の合図で、細長い蛇が這い回る。第四の将の体内からは無数のカエルのような緑色の両生類が飛びだしてきた。
船の周囲は小動物たちで埋め尽くされた。
「このままでは、動物たちがエンジンに入り爆発してしまう。」
第五の将がラッパを吹くと動物たちは船に入り込もうとかじったり張り付いたりし始めた。
「もう、限界です。」
芸人たちの船が身動きがとれないでいると、いきなり動物たちの動きが止まった。そして、思い思いに駆け回り始めた。
蚊柱をめがけて蛙は跳ね、それを見た蛇が襲い掛かる。おの蛇にネズミのような毛むくじゃらの動物が食らいつく。そして、ネズミに蚊が襲い掛かる。動物たちは、互いの食物連鎖に気付き襲いあい出したのだ。その光景はカオスだった。その光景は、互いの食料が尽きるまで続けられた。
「ゲートが閉じるぞ。発進しろ。」
チヨは叫ぶと船に捕まったまま、反撃をしていた。船はチヨをぶら下げたまま上空へと飛び立った。芸人たちを乗せた船も後に続く。
その様子を、しばらく王女は黙って見ていたが
「仲間がいるはずだ。残らず見つけ出し、徹底的に処罰せよ。」
「やつらを放っておいていいのですか?」
将の一人が尋ねると
「かまわん。証はここにある。なにもできん。」
皇女は紫の瞳で睨むと、そう言い残して自室へともどって行った。
脱出した一行は近くの惑星に着陸した。
「現代医療でなら、このお嬢さんの目を再生させることは出来る。しかし、どの程度の視力がもどるかは誰にもわからん。」
けが人の治療をしていた芸人の一人がコクウに告げた。
ナーシャは医療惑星スニスに向かった。ここは、永世中立の星で、帝国の兵士でも、自由連合の者でも差別無く治療が受けられた。ナーシャの遺伝情報から目はすぐに回復できた。
「まだ、視覚情報の伝達系が機能しておりませんから、しばらくは光が入らないように遮蔽しておきます。」
彼女の目の周囲には青いテープが巻かれていた。それでも、やがてテープを外す時が来た。コクウが見守る中、彼女は小刻みに震えていた。
「怖がらなくていい。」
コクウはそっと彼女の手を握った。
「怖いんじゃない。うれしいの。」
テープが外され、徐々に目が開く。中から現れたのはアメジスト色の透き通る瞳だった。その紫の瞳はすぐにコクウを捕らえた。
「コクウさん?」
「ああ。」
彼女は彼の声を聞くと彼の胸に飛び込んだ。
「思っていた通り。」
彼女は落ち着くと自分の姿を鏡に映した。そして、驚いた。
「紫の瞳。」




