救出
コクウは束香を売りながら、構内を下っていった。言葉は通じなくても、簡単な売買なら筆談で済む。翻訳装置もあるが、商売には向かない。言葉が通じなければ、早々に相手も妥協する。
最下層は、薄暗く粉塵が舞う劣悪な環境だった。
「ここのほとんどが、非合法に連れて来られた者です。私から離れないでください。」
ナーシャはコクウにそっと耳打ちした。彼女の使う言葉はコクウ達の言葉と類似していた。祖先が同じなのだろう。
やがて、二人の前に一体のヒューマノイドが連れて来られた。彼は鎖につながれ、口もふさがれていた。
「ドルードか?」
コクウの言葉に彼は周囲を用心深く見回した後に軽くうなづいた。
「間違いありません。ただし、早く核を分離する必要があります。まもなく、核の融合が始まります。そうなれば、分離は困難になります。」
かれを連れてきたアンドロイドが語った。
「下の層に急ぎましょう。」
「ここが最下層ではないのか?」
ナーシャの言葉にコクウは疑問を抱いた。
「抗としては最下層です。この下は、特別な監獄になっています。旧王族や反政府の貴族が囚役されている場所です。」
王女によって旧王族に仕えていた多くの技術者も理由も無く幽閉されていた。ナーシャとドルードは地下へと潜っていった。
「地下へは、旧王族ゆかりの特別な人たちしか入れません。」
コクウは二人を待った。
どれくらい時が経ったろう。一時間ぐらいかもしれないが、一日かもしれない。地下の空間では時間という感覚が麻痺してくる。もうろうと意識を失いかけたとき、ナーシャがようやく戻って来た。
「核は無事回収できました。しかし、急いで意識を肉体に戻さなければ、永遠に異次元をさまよい続けることになります。」
コクウは彼女が抱えていた丸い玉を受け取った。そして、大急ぎで地上にもどった。
「私が、離陸ゲートを開いておきます。」
ナーシャはそういい残して、管制室へと消えた。船は幸いチヨがいつでも発進できるように準備していた。コクウはジゾウにドルードの核を渡した。彼等は急いで、船へともどった。
「チヨ、すぐに発進するぞ。」
ジゾウは、コックピットに入るとあわただしく操縦席についた。ゲートはまだ開いていなかった。
「ちょっと待って。大事なものを忘れた。」
コクウはそういうと船を下りていった。
「時間がない。警戒されたら脱出できなくなるぞ。」
ジゾウの叫びに
「その時は先に行ってくれ。」
そう、コクウは答えると坑内に足早にもどって行った。




