王の資質
「ところで、コクウさん。あなたも一流の事業家をめざすなら、トップに立つものに何が必要かわかりますか?」
王女の突然のと問いにコクウは言葉を詰まらせた。
「それは・・・」
そして、ゆっくりと慎重に答えた。
「部下からの信頼でしょうか。」
王女は顔色一つ変えずに毅然として
「いえ、絶対服従です。」
と、言い放った。
「圧倒的力で抑え込む。上の機嫌を損ねれば人生が終わるというくらいに。」
「では、王女様が絶対なのですか?」
コクウは王女の言い回しに違和感を覚えた。
「いえ、事業主はスポンサーには逆らえません。スポンサーは大口の顧客には逆らえません。ですから、それらを理解できない下のものの意向を聞いていては勤まらないということです。例えばサー・コショウ殿は身分こそ下ですが、大口の顧客なので鉱山のスポンサーである王族でも一目置かざるを得ないのです。」
「光栄なことです。」
見下すような王女から目をそらしながらコショウは答えた。
鉱山の採掘現場では、多くの小型の生物が動いていた。
「いまだに手掘りですか?」
コクウが王女に質問した。
「鉱山の多いこの星ではエネルギーは貴重です。地上に生物は育ちません。ですから他の星のように化石燃料は望めません。太陽と風。これら不安定なエネルギーだけでは設備の維持に精一杯です。この星の生物は鉱物を食し、エネルギーに代えることができます。ですから、鉱物を掘り出すことと、食料を生産することは同じなのです。せっかく得た外貨を、支払いのために使うことはないのです。」
「付け加えるなら、この星には貨幣というものはありません。全てのものは十分な量が支給されます。娯楽施設もないですからサボることも浪費することもない。階級によって得られるものの質が異なるだけです。」
王女の説明にコショウが付け足した。
目の前で一体の生物が倒れた。見ると片足が付け根から融け落ちておいた。彼はすぐに連れさられ別の固体が連れて来られた。落ちた脚を別の生物が食している。よく見ると、右では腕が、左では頭が融けかけていた。
「気にすることはありません。あれは、痛んだ部位を自ら切り落としているのです。若い固体なら、また生えてきます。古い個体は寿命です。もちろん彼らには仕事を辞める権利もあります。支給はほとんどなくなりますが蓄えさえあれば幸せに余生が送れます。ただ、よほど働くことがすきなのでしょう。最下層の生物は自らの選択によって、死ぬまで働くことを選びます。」
まるで、地獄のごとく目を覆いたくなるような陰惨な光景であったが、この星ではごく普通のものなのだろう。




