イワザル
ある日、近所の民家の柿が盗まれるという事件が起こった。怒った主人は警察に通報し、コクウは捕らえられた。それは、彼の家の前に大量の種が散乱していたからだ。
「誰かが、捨てたんだろう。」
犯人では無いと訴えても、日ごろから煙たがられていた彼の言葉をまともに聞くものはいない。地元の連中は日ごろからコクウのことは、見ざる、言わざる、聞かざると関わらないようにしていた。だから、誰の彼の無実を証言するものはいなかった。
留置所の中で
「早く、畑に水をまかねば苗が枯れてしまう。」
そう、つぶやきながら提供されるわずかな食料を口にするのだった。
「コクウ。迎えに来たぞ。」
外から、男の声がした。
「誰?」
コクウは辺りを見回す。どうやら壁の向こう側から聞こえる。
「下っていろ。」
いわれるままに彼は壁とは反対の通路側に体を寄せた。ドシン、という激しい衝撃とともに壁が崩れた。舞い上がる土ぼこりの向こうから一人の禿げたおっさんが現れた。
「俺はジゾウ。おまえの父だ。かあさんから話は聞いて無いか?この星では、お前は異端児だ。どんなに努力しても人として認められることは無い。彼らの不満のはけ口として利用されるだけだ。着いてこい。」
ジゾウはコクウを連れ出すと、彼の乗ってきた乗り物へと向かった。銀色の強大な宇宙船。が、衝撃に気付いた連中が、彼らを追ってきた。目は血走り、顔は白い。口で激しく息をしている。手には斧やナイフを持っている。それは、砂漠からはいでた魑魅魍魎のようであった。
ジゾウはコクウに丸い輪をつけた。
「やつら本気のようだな。目が真っ赤だ。ありゃホコリアレルギーだな。これから、俺の故郷カンドラへ向かう。それは、天の時空を越えた先にある。」
頭にはめると耳に近い部分から骨伝導によってジゾウの声が聞こえた。
「出力を上げすぎると、頭が痛くなるからな。」




