表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5


 空から可愛らしい少女が舞い降りてきたのだ。

 苛めっ子たちと僕との間に、彼女は立ち憚ってくれたのだ。

 間に立ってくれた、間に憚ってくれた。

 必然的に、物理的な意味として僕は奴らとの距離が確保された。


 彼女は巫女服に身を包み、背後からは神聖な何かが見えてきそうになるほどに、神聖さを感じさせる姿であった。

 普通の登場の仕方ではないのだし、普通の人間ではないのだろう。

 祈りに応じて出て来てくれたのだとしたら、この”御守”に宿っていてくれた聖ということになるのだろうか。

 これまで僕に力を授けてくれており、遂に姿を現してくれた聖ということに。


 まるでこの世の存在ではないようだった。

 どこか知らない世界から、だれも傷付くことのない優しい世界から、この醜い世界へ僕を救うためだけに現れてくれたかのような、都合のいい幻想を見せるような神々しい姿。

 美しいという言葉さえもったいなくて、言葉にならないだなんて安っぽい表現は失礼に当たるようだ。


 ほんの一瞬たりとも、目を逸らすことすら許されないほどに、神秘的でいて、それなのに創造的とも捉えられる輝いた姿は、冷たい視線で奴らを射抜く。

 どんな姿も可愛らしく、美しく、神々しく、彼女の姿は僕の記憶の中にある幻の地の青い月と、ぴったり重なっていた。

 ”御守”に注いだ青い月はこの少女となって僕を救ってくれたのだ。


 似ても似つかない少女と月のそれは、一方は幻想的な景色に向けられた美しさへの感動で、同じ感情とはいえ、もう一方は確かにそこにいる少女に対して向けられたものなのだ。

 同じ美しいだったとしても、感動は異なるものに決まっていた。

 それだって少女と月の影は全く同じで、無意識のうちに僕はその二つを重ね合わせてしまっていた。


 共通点を探し求めて、自分で作り信じた”御守”の効力というものを、自分に見せ付ける材料としただけなのかもしれない。

 非現実を、美のせいにして信じさせようとしただけなのかもしれない。

 それでも僕が意図しないうちに、その二点を結んでいたのは確かなのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ