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 いつも僕は独りぼっち。

 寂しいわけじゃない。寂しいわけなんかない。

 独りの方が楽でいいに決まっている。

 だから僕のことは放っておいてほしい。


 神聖なる湖と呼ばれているこの場所ならば、僕のことを助けてくれることだろう。僕のことを救ってくれることだろう。

 森の奥に眠っているという、幻の場所ならば、僕を解放してくれることだろう。

 独りで進むのは怖かったけれど、森の奥で独り安らぎを手にするためには、怯える必要がないことであるのは間違えなかった。


 一歩、また一歩と深い森へ入っていった。

 幻の場所にあるという湖の神聖さとは、どれほどのことなのだろうか。

 木々の間から差し込んでくる輝きにこの身を照らされて、既に浄化されるような心地であった。

 神聖な地にいるような思いがしていた。


 しかしそれらしき湖に到着すると、それどころの話ではなかった。

 森はどこも月光が注いで、穢れは祓われていく。愚かな欲も見る見るなくなっていき、この美しさに全てを委ねるようになる。

 湖は青かった。月もまた青かった。

 色塗りを間違えたかのように、この空間は神聖な青色に包まれていた。


 水面に浮かぶ青い月は、思考さえも奪うほどに怪しく揺らめいている。

 魔力を持っているんだ、そう確信した。

 湖から手に掬った水の中にも神聖な力はまだ宿っていてくれているようで、その青さは変わらずに輝いていた。

 月の欠片を大きく吸い込めば、口の中には力が広がった。


 僕にも魔力が宿ったんだ。そう信じられた。

 これだけでは足りないだろうと、僕は小瓶に月を掬って、神聖なる魔力を持った”御守”を作った。

 昼の光ではなくて夜の光だからこそ、これは強い力を持って僕の力になってくれるのだと、信じて疑うこともなかった。

 月光がどんなときも僕の心を青く照らし、鎮めてくれるのだろう。


 僕にはその手作りの”御守”がどれだけの力を持っているのだかも、理解しているとは言えなかった。

 これさえあれば大丈夫と闇雲に根拠も理由も意味もなく信じ込んで、胸に大切に抱えては、何よりも優先して守ろうとした。

 いつしか目的が摩り替り、僕を守ってくれよと望んだそれを、僕が守る形に逆転してしまっていたのだ。


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