EP0.アンダー・ソウル
「…な、なんだ…お、おまえは!?」
"世界の裏側"は開かれた。
『渡せ…お前の魂を…』
それは光すら届かぬ、閉ざされたもうひとつの世界。
「ここ、こっちに、く、く来るなァっ!!ばっばばばっ化け物っ!!!」
巣食うは魔を司り、魂を食らう者達。
『苦しめ…もっとだァ…もっと…魅せてみろ…お前の…闇をッ…』
眠りし闇が、この世界に解き放たれる。
「ぐっ…あぁぁ…ああ…やめろ…やめてくれェ!!」
訪れるは、絶望。
『美しい…闇の魂を…もっと…』
奪われるは、希望。
「ま…まだ嫌だ、ししし…死にたくない、やめろ…や…めッ…」
世界の闇に立ち向かうは…
『いただくぞッ…お前の…』
「賢者の炎!!!」
ーー"魔法使い"。
『ぐぁっ!?ぬぁっ!?』
「"アンダー"…その魂…」
ーーそして。
『返してもらおうか!!!』
ーー魂を宿す、「モノ」達。
「ちょっとバッキー?それは僕のセリフでしょ」
『うるせえな…てめえがモタモタしてんのがわりぃだろ。』
「もう、本当はカッコつけたかっただけじゃないの?」
『いいだろたまには!このポンコツファンタジーオタクが!!』
「はぁ!なんだって?このボロクズマジック紙切れ!」
『彼女なしクソ陰キャ!!!』
「あ…それは言わないで…悲しくなる…」
「………??????」
…突如して始まった"喋る本"と"魔法使い"によるコントに、男はただ唖然としていた。
「…き、き、君、一体…な、何??」
「ん…まあ僕たちは…」『おい!後ろ!』
『グォアアアアア!!!!』
攻撃を受け吹っ飛ばされた化け物が、再び起き上がる。
『…貴様ァよくも…やったなァ!!』
突然炎に炙られた化け物は怒りの表情を見せている。
「くっ…とりあえず貴方は、早く逃げてください」
先ほどまでの冷酷さすらない鬼の表情で迫りくる化け物。
『全く、こんな遅くまで残業してっからこんなんに絡まれることになるんだ。さっさといけや』
「は、はははひ!!」
なにがなんだかわからない男は、カバンすら置いてフラフラのまま必死に逃げだす。
『ぐっ!まて俺の…!!』
男を追おうとする化け物。
「行かせないよ」『テメエの相手は俺達だ』
しかし険しい表情の二人が化け物に立ちはだかる。
『…くそが…邪魔しやがって…
こうなりゃお前達をぶっつぶして…』
『お前達の魂をいただくまでだぁ!!!』
食事の邪魔をされ怒り狂った化け物が二人にせまる。
「よし、いくよ、バッキー…!」『とっととケリつけようぜ、湊介…!』
「『魔本……ブックスレイヤーッ!!!』」
掛け声とともに"本"は鋭い剣に変化し、炎をまとい赤く輝く。
『ウォオオオオオアアアアア!!!!』
ものすごい勢いで二人に襲いかかる化け物。
しかし、二人は構えたまま動じない。
「決める!!
ブレイズ…………
ソウルバスターッ!!!」
その刹那、紅蓮に燃える刃が"闇"を切り裂き、
夜の陰に閃光が輝いたー
まるで、絶望の終わりをつげる、希望の如く。
『ぐあああああああああああああ!!!!!』
化け物の体は燃え、光に包まれて消えてゆくー
「ふう…終わった。さて、帰ろっかバッキー。夜明けも近い」
化け物を一瞬で切り裂き、消し去った二人の表情からは険しさはすでに消えていた。
『ちょっと待て!まだコイツのソウルを喰ってねえんだ』
ふわふわと浮かぶ化け物の魂を捕まえようと、ぴょんぴょんと跳ねるバッキー。
「わかったわかった…はやくしてよね。…もう眠いなあ」
『おっし捕まえたぜ…いただくとするか!」
"喋る本"と"魔法使い"は再び夜明け近くの町の影に消えていった。
その姿は、まるで神出鬼没のヒーロー…
いや、ヒーローとまでは呼べないかもしれない。
強いて言うなら、ポツンとあらわれたただちっぽけな、希望の炎。
なぜちっぽけかって?
『あ!逃げやがった!こらまて!!俺のゴチソウ!』
「ちょっとモタモタしすぎだって!僕も手伝う!!」
『お前の助けなんかいらねーっつの!!』
…彼らの戦いは、まだ始まってすらいないからだ。