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惟夏の攻撃を受けて、ボスは標的を金髪おさげから惟夏に変更した。
「この星は、女が強いんだな。」
ボスはビルの屋上に降り立つ。
「黙れ。三分で片付ける」
「ほう?」
惟夏は、瞬間的にボスの背後に移動した。しかし、ボスはそれを見切り惟夏の爆裂を跳んで躱す。
「さっきの戦闘員よりは速いな」
そして、謎の気穴より惟夏に向けてビームを放出する。惟夏はこれをギリギリの間合いで躱し、おっとっと、と隣のビルに着地する。
「遠い。ここは火炎放射…」
「遅いね」
「っ!」
行動する間もなく、ボスは惟夏の目の前に登場した。そして、回蹴を放つ。惟夏は咄嗟に腕をクロスして防御したが、圧力に負けて北側のビルに突っ込んだ。
「だいじょうぶ?おねーちゃん」
ハッとして後ろを向くと、逃げ遅れたのか、幼少の少年が駆け寄ってきた。惟夏は少年に笑いかける。
「…天才であるこの私が、いや何が天才だ?」
すると、少年は突如渾身の声を上げた。
「女のくせに、なんでたたかってんだよ!」
気づいていたんだ。薄々気づいていたんだ。だれかに甘えて生きてきたなんて言えないし、事実強さを求めて生きてきたんだ。だからこそ、
「君も私のように戦って生きる。この世界は戦いを必要としている。」
「たたかわないよのなかをぼくはつくってみせる。」
隻眼の魔獣はビルの中に現れた。
「何だありゃ。白金保衛官も所詮その程度じゃ、当分信用を失うね」
金髪おさげを抱えた、白髪の青年は突如浮遊し、発進した。
俺は缶コーラを咥えながら、適当に見つけた黒い高層ビルに入る。ジャンプで屋上に上がることも可能だが、コーラを零してはいけないので1階よりエレベーターで上がることにした。
「あっやべぇ、ケータイ自販機に忘れた」
そのまま引き返した。
一方、惟夏は隻眼の魔獣とやや苦戦気味に戦闘していた。
「これじゃ適わないか。」
「ん?奥の手でもあるのか?それとも降参?」
腕のパーツを、ギシギシと音を立てて回転させる。その名も、
「モードチェンジ《剣》」
腕の先にビームサーベルを生成する。例えるなら、駆動戦士だ。腕を組んで笑っている隻眼の魔獣に向けて、惟夏はさらにスピードを上げて抜刀する。
「やるねぇ。」
最終的に、隻眼の魔獣の尻尾を斬り落とした。だが、隻眼の魔獣は悠々として立ち上がると、
「だがそれじゃ威力が足りない。試しにお手本を見せてあげるよ。」
「お手本?」
「元立ちよろしくぅ」
すると、隻眼の魔獣は突然、床に転がっているプラスチックの棒を取り、
「目ェ覚ませよォ」
惟夏の背後に位置取り、
「きゃっ?」
後頭部を殴打した。幸い惟夏の体は金属でできており、棒は軽く折れたが、惟夏はその衝撃で目が眩んだ。
「ケータイでねぇな。今戦闘中か?今戦闘中…。頭痛が痛い構文!」
とくだらないことを言っている俺だったが、一応弟子の行方が分からないので急ぎ探すことにした。
実際に惟夏は頭痛が痛かった。
「次の戦闘員はアナタ?」
うつ伏せで倒れている惟夏を蹴飛ばした隻眼の魔獣は、いち早く彼の存在に気がついた。
「逆に聞くが、オレの前に何人と戦った?」
先程の白髪の青年は、惚けた顔をして尋ねる。
「さっきのまぁまぁ強えの合わせて10人ぐらい?」
「そっか」
隻眼の魔獣は、身構える。
「お前もこんな状態にされにきたのか?」
青年が答えなかったので、隻眼の魔獣はパンチを放つ。しかし、青年の前で寸止めに終わった。
「!」
「やれやれ、舐めないでもらえるかな?」
青年は魔獣に向けて右手を翳す。次の瞬間、魔獣は物凄いスピードで大気圏を突き破り、月を突き破り、火星に激突し、ダウンした。
「総括、終わった」