一章 就活生 1
紅茶は美味い。
しかし、日本に出回っている紅茶は俺の期待を大きく裏切るようなものばかり。だが俺は金欠で海外に行けないのだ。この際、俺は就活を開始した。
地元、国立の埼玉大学を無事卒業したものの、舞咲 絶愞23歳、受けた会社は全て定員割れ。この派手な金髪マッシュヘアはいつの間にか真っ黒に染まり、目は点のように眼光を失った。175cm、72kgの理想と思っていた体型は、もはや飾りに過ぎない。面倒なコンビニバイトを続けている。しかし俺にはある取り柄があった。
そんなある日、俺は暇つぶしにスーパーでインスタント茶葉等の買い物をしていた。
「…今日は久しぶりにパスタにするか。」
公言通り、パスタの陳列棚に目を向ける。すると、ある張り紙に気がついた。
「『奢ってくれ』だと??!」
違和感に、紙を凝視する。そのとき、俺の足元にしがみつく老爺の姿を確認した。
「頼む…っ!そのパスタ一袋だけでいいんだ…!頼む…っ!」
違和感の無駄遣いのようだが、一袋買ったるぐらいなら問題ない。しかしまずは、
「何かあったのか?」
と質問してみる。
「殺される」
「は?取り敢えず外こいよ。詳しく聞かせてくれ」
取り敢えず老爺を連れ、スーパーの駐車場に出る。妙に風が冷たいのは秋の訪れを告げているのだろうか。
「犯罪組織『Mentos』の組合員に脅された。今すぐパスタ一袋を調達すれば許してやる…と。」
パスタ一袋である理由は敢えて聞かないでおこう。
「そのメンヘラだかなんだか知らねーけど、そいつは今何処にいるんだ?」
「アンタの背後に…」
不審に思い、後ろを振り向く。すると、短髪巨体の男二人が怒りの表情を俺に向けていた。
「お前誰だ?爺さんの知り合いか?」
「いや、コンビニのバイトリーダーだが。近くの」
丁寧に自己紹介をしたのはいいのだが、話を聞けないタイプなのか、男のうち一人が俺に向けてストレートを放ってきたので、軽く払って腹に一発入れてみた。
その後、男は立ち上がるのを躊躇っていたのかなかなか再来しなかった。善意によりもう一発かました。