底辺勇者はエイプリルフールから恋の味を知る。聖勇者共ざまぁ!俺は最強チートでイチャイチャしてやる!
エイプリルフールネタとして思いついて深夜テンションの手助けを借り執筆した「底辺勇者」閑話的なif外伝です。本編とは関係ないです。ifですif。息抜き程度にお読み下さい。
ある日の朝。
寝ている俺の部屋の扉が開く慌ただしく開いた。
「センパイ、センパイ! た、大変なんです!」
「……なんだよトモ。朝っぱらから慌てて……ふぁー」
気持ちよく寝ていたのを起こされて、半分も開いてないまぶたで入ってきた相手を見る。
「い、入れ替わっちゃったんです!」
そこには顔を赤したリアがいた。
「は?」
リアの謎の発言で頭の中にいた睡魔が完全に逃げてしまう。
「私とトモが入れ替わったのよ」
後から部屋に入ってきたトモがリアの口調でそう語る。
「は?」
俺は訳もわからずに並ぶトモとリアの顔を交互に眺めた。
トモもリアもいつもと変わらない。
それでも喋り方に違和感はあるも入れ替わっている。
「な、なんで……」
俺はトモに理由を問いかける。
いや、トモではなくリアなのか?
リアの姿をしたトモ?
トモがリアでリアがトモでって、もうわけわかんない。
「朝起きたらこうなっていたんです」
リアがそう答えた。
いや、リアの姿をしたトモが答えたのだ。
紛らわしい。
リアの姿をした方がトモで、トモの姿をした方がリアだ。
「……なんか……変なものでも食べたのか?」
「食べないわよ!」
リアが両腕を振って否定する。
トモの姿は簡単な動作だけで胸が揺れるが、彼女にとってどんな気分なのだろう。
いや……聞かぬが仏だ。
「うーん、変な魔物でも現れたのかな?」
「ま、魔物ですか?」
なぜか口元を隠したトモが聞いてきた。
「ああ。なんかこう、精神を交換させる的な能力を持った魔物がいるのかも」
ここは異世界だ。
魔法があるんだからそのくらいの能力を持った魔物がいても不思議ではない。
「そ、そんなの……い、居るわけないじゃない……」
リアが呆れたように言う。
お前もなぜ口元を隠しているんだ。
「そうか……。精神を入れ替えられるような魔物はいないのか……」
と、なると他にどんな可能性があるんだ?
俺は頭をひねって考える。
「あっ! もしかして新手の転生者か!? 精神攻撃を受けてるんじゃっ!?」
辿り着いた答えに俺はベッドから立ちあがった。
こうしちゃいられない。
使い魔に周辺を捜索させなくて――は?
「ぷっ……あはははははは!」
「き、気づきなさいよっ……。だめっ。あはははははっ!」
「センパイっ! 一人でっ! 考えすぎっ……ですっ! あはははははっ!」
「やめなさいよトモっ! 笑わせないでっ……。ぷぷっ、あはははは!」
ど、どういうことだ……。
突然トモとリアが笑い出した。
一体何がおかしいんだ……?
俺は訳もわからず笑ってる二人を眺める。
すると、あることに気づいた。
喋り方が戻ってるのだ。
トモの姿をした奴がトモの喋り方をしていて、リアの姿をした奴がリアの喋り方をしている。
「もしかして騙したな!?」
「やっと気づいたんですかセンパイっ」
可笑しそうに腹を抱えているトモがこちらに顔を向けた。
「タチの悪い嘘つくなよ……」
そもそもお前たちってこんなことするキャラじゃなかっただろ……。
「シガツツイタチって日らしいわよ、今日」
「四月一日?」
リアの意味を理解していないだろう説明に頭を捻る。
「エイプリルフールですよ、センパイ」
「あっ、あー、そんな行事もあったな」
俺は取り出したスマホから日付を確認すると確かに四月一日になっていた。
「異世界に来てから日付なんて気にしてませんしね」
「曜日すらないしなー」
って、だからって人を騙そうとするな。
「なんでリアまで一緒になってるんだよ……。止めろよ」
騙されたことはもう水に流すとして、気になったことをリアに聞いてみた。
リアなら「子供騙しな行事ね」とか言いそうなのに。
「べ、別にいいじゃない。こういうこと……同世代の子としたことなんてなかったから……どうなのかなって思っただけ……」
照れたように顔をそらすリア。
「な、なんかすまん」
異世界版ボッチだったかぁ……。
「センパイは向こうにいた時はエイプリルフールとかしなかったんですか?」
「しなかったなぁ……。基本的に嘘付き合ってイチャイチャするリア充カップルがウザいって印象のイベントだったし」
「捻くれてますね……」
呆れるトモの横でリアが首をかしげる。
「たまに口にするけど、そのリアジュウってなに?」
「爆発してほしい人間のことだよ」
「ば、爆発するの……?」
「ああ、心の底から爆発しろって思った相手がリア充だ」
「……なんだかよくわからないけど闇が深そうな言葉ね」
俺とトモを交互に見たリアが感想を口にする。
「あっ、そういえば過去に一回騙されたことがあった」
「センパイがですか?」
「俺がだよ。悪いかよ」
「悪くはないですけど、なんでキレ気味なんですか。でも、ちょっと聞いてみたいですね。センパイってこーゆーのには耐性がありそうですけど」
「むしろあんなことがあったから耐性がついたって言うか……。……あれは俺が小学校の時だ」
「ショウガッコウ?」
語り始めたばかりなの過去話で頭から疑問を抱くリア。
異世界との知識錯誤めんどくせぇ……。
そこは閑話だし、なぁなぁでも怒られないでしょ。ってメタい発言はここまでにしといて……。
「まあ、ちっちゃかった時の話だ。クラスメイトの女子から手紙を貰ったんだ」
「くらすめいと?」
「……同年代の女子から手紙を貰ったんだよ。いわゆるラブレター的なやつ」
「……モテてたんですね」
何故か不満げな声を出すトモ。
「モテなかったよ。だから嬉しくてさ。浮かれて手紙に書かれてた待ち合わせ場所の校舎裏に……行ったんだよ」
「あっ……あー」
この時点でオチが分かってしまったのかトモが悲しそうな声を出す。
「そうそうそれでな、待ってたのがあんまり仲も良くない男子でな。殴り合いの喧嘩までして親が呼び出されたっけ……」
「そこで殴り合いになるのがセンパイらしいです……」
「殴るだろあんなの……。あれが初めて人に殺意を覚えた瞬間だったな」
遠い若き日の思い出は闇ばっか。
だからこんなにも捻くれた奴になってしまったんだ。
うるせぇよ。
「トモはこんなこと無かったのか?」
「そんな酷い扱いを受けたことはありませんね。エイプリルフールも友達と嘘を付き合って笑って終わりますし」
「なんだか友人関係をさらっと自慢された気がするがまあいいか……」
「別にそんなつもりはないんですけど……。あっ、そういえば声優をやってる時にありましたね」
「へー、どんなの?」
「事務所に同い年の男子声優の子が居たんですよ。それでその子と一緒にふざけて『付き合ってます』ってエイプリルフールの日に呟いたら……炎上しました」
「けっこうガチ目なやつじゃねーか……」
笑顔でそんな話するなよ。
もっと軽い話かと思ってたわ。
「うーん、今回のは入れ替わりでリアまでやってたから騙されたな」
「そうですね。そのくらいやらないとセンパイは騙せませんし」
「告白系なら気づいたかもしれないんだけどなぁ」
「告白系は無理ですよー。嘘になってませんし」
「え?」
「え?」
トモのキョトンとした目と視線がぶつかる。
「………………」
「………………」
静かな部屋の中でトモの顔が下から上へと赤くなっていき、
「エイプリルフール! 今のもエイプリルフールですから!」
最高潮になったあたりで爆発した。
「おおおおう! 分かってたさ!」
「せ、センパイまた騙されそうになってましたよね!」
「そ、そんな訳あるか!」
「ほ、ほんとですか!?」
「嘘なんかつくか!」
「いや、そこはエイプリルフールなんだし吐きましょうよ!」
「俺は正直者だから嘘なんかつかないんだよ!」
「もうそれが嘘じゃないですか!」
「嘘でもいいだろ! 今日はエイプリルフールなんだし! 」
向かい合って言い争いをする俺たち。
知らぬ間にリアが部屋から退出した。
「リア充……。こういう意味だったのね……」
彼女はあらん限りの力を込めて扉を閉めていく。
「爆発しろ」
本編を読んでいない方はこちらも面白のでぜひどうぞ。
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最後に、エイプリルフールはもう過ぎてるんですけど……ってのは自分が一番理解してます()