疑念は渦巻き堆く……
その後数日ノノヰからの連絡は途絶えた。……使い魔契約という呪縛じみた関係を結んでおいて、それで終わりってことはないよな? 黒々と生えた羽根を振り返る。これが異世界人風のお付き合いなのかもしれないし。まあ説明は欲しかったけど。
もし……、もしこのまま連絡が来なかったら? と思うと、ぶち上げられたハードルが怖くてたまらなくなる。ノノヰのような神秘的なのに親近感の湧く男性に巡り合えたのは奇跡的な確率だった。
そんな怯えを日に日に重ねていった私は、「変態魔術師 ノノ井の修行日誌」をこちらからノノヰ本人に尋ねてみることにする。
もしかしたら向こうから送ってくる近況のネタがない故の無連絡なのかもしれない。だから、こっちから修行日誌をネタにして、感想でも言って、盛り上げればいい。
あああ、でも万一にでもノノ井がキノヱネ・ノノヰじゃなかったら困るな。
「ノノヰさんみたいな人見つけちゃったんですけど~」と、使い魔狼煙を上げてノノヰの反応を待った。
丸一日経って、ノノヰから通信が来た。
「ノノ井って人は私じゃないよ・・・」
「あれ、そうなんですか?」
「似た名前の人がよくいるみたい・・・」
うーん? 誤魔化し? にしては誤魔化すメリットが分からないし、本当なのかなぁ? 本当に似た名前であるのなら、ノノヰならただ面白がりそうな性格な気もしたけど。
「そんなことより、今度の休みに召喚するよ、遊びにおいで」
おお、来たー! その言葉を、待っていたんだ。
いよいよ明日が約束の日となった。私は待ち遠しくてたまらなかった。
でも、ノノヰが「ノノ井は自分じゃない」と言い張ったのは引っかかった。きっと「変態」なんて名乗っているのが恥ずかしかったのだろう。もう一回「変態魔術師 ノノ井の修行日誌」にアクセスしてみるべきか。
再びノノヰの名前で検索をかけると前まで引っかからなかった異世界の新聞がヒットした。どれどれ。
『さえずり姫、結婚発表! お相手は魔術師ノノヰ氏』
一面にでかでかと記事が載っていた。ノノヰ氏!
見間違いではなかった。「ノノ井」でもなかった。
極めつけは美しい鳥人の女性がウエディングドレスを着ていて、その隣に私が見たことのない満面の笑みの魔術師ノノヰ本人が、写っている、写真……。
私は一挙に血の気が引いた。うわああああああ! 魔術師ノノヰは、既に結婚してる!




