成立後のお約束――セオリー――
めでたくカップルになった私とノノヰ・キノヱネだったが、隣を歩くノノヰ・キノヱネの姿を横目で伺っていると、彼は本当に私を選んだのか、実はたまたま横を歩いているだけなんじゃないかと自分の認識に不安を覚えるほどあやふやな気分に陥った。道の途中であっさり行き先が変わってそのまま何も無く別れるのではないか……。
だが、
「この後、お時間ありますか?」
来、た。
パーティーでカップリング成功した後は、喫茶店でお茶するのがセオリーだという――。
「は、はい! よろしく……お願い、します!」
ノノヰ・キノヱネは私の緊張しまくりでぎこちない言葉にも、片眼鏡の奥の瞳を細め頷いて聞いてくれた。まったく、落ち着いていて上品な紳士である。ノノヰ・キノヱネが足先で道を踏み鳴らすと、地面から緑の蔓が伸びてきて、私達を乗せ雲の上の喫茶店に導いた。
遠くから見ることはあったけど、こうして魔術でエスコートされるなんて初めてだった。
他の女性にもこうしてエスコートしてあげているのかな、私で良かったのかな。
シュルシュル動き回りながら帰っていく蔓を見ながらちらりとそう思った。
席につくと、パーティー内で気になったことを言ってみる。
「あ、あの、さっき言ってた(えげつない内容っていう)魔法書ですけど、ぜひ今度……」
実際これへの好奇心が私の中で大きかった。
「それなら持っているよ」
ノノヰ・キノヱネは手袋をはめたまま指をパチンと鳴らした。お、やった。
皮張りに金文字という豪華な装丁の魔法書が宙に発生する。
「開いてご覧」
「いいんですか?」
私は自分の手汗を心配しながらも恐る恐る魔法書の表紙に手を伸ばす。その中身は、
んー、子供の落書きか? 鉛筆書きのぐにゃぐにゃ線で棒人間が漫画肉……? を食べ、「ウマーイ」と叫んでいた。その次のページで棒人間が星頭の巨人にフォークを突き刺されているシーンがあり、間があって、星頭の巨人が「わーいばんごはんだー!」と終わる。
しょぼい! 誰が描いた!
「私がすべて描いてみました」
ノノヰ・キノヱネは指を組み自信満々に頷いた。これがえげつない内容……? 画力がえげつない……?
う、うん、魔法書のセンスが壊滅的にないのに魔術が格好いいっていうのもギャップがあっていいのかもしれない! 逆に親しみが持てるし、この残念なところが紳士的なのに意外とモテない原因じゃないかと納得も出来る……?




