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第六話 黒いミノタウロス

翌朝、日が地平線から完全に姿を見せ、朝の空気に暖かさが混ざるころ。

ギルドメンバーと治安維持隊のメンバー全員が、森へ行く門の外で集合した。門は既に閉められている。


ギルドメンバーと治安維持隊に向かってギルドマスターが号令を掛ける。

クラーレとミルコは、最前列の五名チームの中に混ざっている。

このチームがギルド内最強組み合わせとなっている。攻撃力、防御力、そして回復力共に最高で、通常クエストでもチームを組む気心が知れたメンバーである。


「治安維持隊の皆さんは、ここより先のところで土嚢を積み上げて防衛ラインを築いてください。ゴブリンなどのモンスターとの戦闘もあるかもしれませんが、それには私が対処します」


軽装備の防具とレイピアを装備しているギルドマスター。一目で秀逸な武器防具であることが分かる。


「ギルドメンバーは、五名一チームで六チームの編成だ。ミノタウロス一頭につき一チームがあったくれ。クラーレ達のチームは黒いミノタウロスを担当してくれ」


ギルドメンバー全員が首肯する。


「黒いミノタウロス戦が一番厳しい戦いになる。普通のミノタウロスを倒したら直ぐにでも黒いミノタウロスを目指して急行するように」


普通のミノタウロスを確実に倒せる最少人数の攻勢で、逃亡されるリスクを減らし、黒いミノタウロスとの初戦は防御に徹し足止めをすること。

普通のミノタウロスを倒したのち、ギルドメンバー全員で黒いミノタウロスを倒す作戦である。


クラーレは、この作戦が最善と理解しているが、一方で不安を拭えないでいる。


( 単なる可能性の一つではあるが…)


「では、戦地に出発するぞっ!」

「オオーーーーーーッ!」


武器を突き上げ、気合を込めた雄叫びを上げる。それぞれ出発する。


ギルドメンバーは森の手前、百メートルほどまで到達した。

ギルドマスター含む治安維持隊は、後方で土嚢を積み上げて防衛ラインを築きつつある。


クラーレのチームリーダーが現地での指揮を取ることになっている。

チームリーダーは、重装備戦士で人の丈ほどある盾と防御魔法を駆使し、どんな強力な魔物でも貫き通せない鉄壁のガード力を持つ、人間種である。

名をレオナール・シャルキュトリー。


「では、これより森に入---」

「グオーーーーーッ!」


森から天地を揺るがすほどの咆哮が聞こえた。

森にいた鳥が恐怖を感じて、一斉に空へ飛び立っていく。

咆哮が聞こえた森に全員の視線が向く。武器を構え戦闘態勢を整える。

足音が聞こえる。それも複数の足音。地面が揺れるのを感じる。


( くっそ。予感的中かよ。)


森からミノタウロスが三体出てきた。冒険者から奪った物か、武器も携えている。

しかも、体中にキズがある手負いのミノタウロス。目が充血し血の涙を流している。

手負いの魔物ほど厄介なものはない。身を守ることを考えずに戦ってくるからだ。

さらに、その後を肌が漆黒のミノタウロスが追ってきている。こちらも、武器を持っている。


「ミノタウロスは、五体じゃないのかよ」

「昨晩のうちに二体倒されたんだろう。後ろの奴に! それより、再編成の指示を出せっ!」

「お、おうっ!」


クラーレは、レオナールの胸倉を掴んで向かせ怒鳴った。

怒鳴ることにより混乱仕掛けたレオナールの思考を正常にもどす。


「どうするのクラーレ」


さすがにミルコは正常である。魔物より面倒くさい取引先との交渉ごとに長けている元女部長である。

レオナールが速やかにチーム編成を変える。

一チーム八名を三チーム作り、通常のミノタウロスを瞬殺に近い速度で倒す。残り六名が黒いミノタウロスの足止めをする。


「一番危険なのは、ミノタウロス三体とギルドメンバーが乱戦になることと、黒いミノタウロスがそれをかき乱すこと」

「レオナールもそこはちゃんと考えたようだわ。でも確実性が乏しい構成かしら」

「黒いミノタウロスにあたる俺たちが、一番確実性が低いからな」

「見たところ黒いミノタウロスは、キズ一つ付いていない。つまり普通のミノタウロスより数倍強いってこと?」

「それに普通のミノタウロスは、追われて出てきたのではなく、俺とミルコを目指して出てきたのだと思う。後ろの黒いミノタウロスもだろうけど」

「どういうこと」

「あいつらは、転生者を殺す目的で生まれたのだと思う」

「まさか。魔物は自然発生するが鉄則よ」

「いや、魔物の王。魔王なら出来る」

「数千年前にこの異世界の神に封印された魔王が復活したということ!?」


クラーレとミルコ。この世界に転生した時からある、この異世界のすべての知識。

この身体の元の持ち主がいないのであれば、何者かに創造され、知識も与えられたと考えられる。

その何者かが、この異世界の神ならば、転生者を殺そうとする魔物を創造したのも魔王と考えが行き着く。


( 俺にとっては迷惑な話しだな。)


再構成されたギルドメンバーがレオナールの指揮で、普通のミノタウロスを各個撃破に向かう。


「話しは後だ。行くぞっ!」

「ええ!」


クラーレとミルコは、ミノタウロスの間を疾走し黒いミノタウロスの前に到着する。

つづいて、レオナールと回復役の人間種のフロマージュ、中距離から魔法攻撃支援のエルフのラタトゥイユ、最後に前衛攻撃型の戦士・ルーローが到着する。

目の前にするとかなり大きい。普通のミノタウロスが八メートルほどだが、この黒いミノタウロスは十メートルを超えていそうだ。


黒いミノタウロスが、大剣を振りかぶって攻撃してくる。散開して攻撃をかわす。

地面が割れ、土が舞う。

その大剣にクラーレが着地し、瞬発で黒いミノタウロスの腕を掛け登っていく。


「そりゃっ!」


黒いミノタウロスの肩まで来ると跳躍し、頭を下に反転して空気を蹴って勢いを付ける。

刀に魔力を注ぎこみ、神風刀の特性である風を纏わせ、黒いミノタウロスの肩を狙う。


ギシャシャシャー---っ!


金属が擦れあうような音が刀と黒いミノタウロスの肌の間で生じる。

クラーレは、身体を一転させて地面に着地後、直ぐに離脱する。


クラーレが攻撃を与えている間にミルコは、黒いミノタウロスの後ろに回り、膝の裏側にダブルインパクトナックルで攻撃を加える。

姿勢を崩させる狙いだ。

固い金属のような衝撃が伝わり、即座に離脱する。


( ノーダメージ?!)


ありえないほどの防御力。

クラーレとミルコの攻撃でダメージを与えられなかった魔物なんていなかった。


「レオナールっ! こいつは強すぎる。防御だけで守れると思うなっ!」

「わ、分かった!」


レオナールは、フロマージュとラタトゥイユの中間点で陣取っている。この二人に対して攻撃が来るようだったら、盾で攻撃を防ぎ守る予定だった。


ラタトゥイユの詠唱魔法が完成する。


「サンダーボルト・ファイヤー!」


マーブル状に絡まった火炎と雷が黒いミノタウロスを覆い尽くす。

これでも黒いミノタウロスにダメージを与えていない。


黒いミノタウロスが、低姿勢を取り大剣を横なぎしてくる。クラーレ達を一掃するような攻撃だ。

レオナールが、フロマージュとラタトゥイユに体当たりする形で、大剣の範囲から追い出す。

その際にレオナールの背中を大剣がかすめ負傷する。


「ぐうぅっ!」

「レオナールっ!」


クラーレは、地面を蹴って黒いミノタウロスより高い位置まで飛ぶ。

ルーローは、地面に這いつくばってすれすれでかわした。

ミルコは、逆に懐に飛び込み、ダブルインパクトナックルで大剣を持つ腕を外側から打ち込む。

ダメージを与えることはできながったが、黒いミノタウロスが攻撃動作中だったため、腕ごと大剣が流れ、次への攻撃までの時間を稼ぐことができた。

この間に、フロマージュがレオナールに回復魔法をかけて治療を施す。


クラーレは、流れた大剣の軌道を見て、その反対側に力が向くように黒いミノタウロスの頭に蹴りを見舞う。

黒いミノタウロスの姿勢が崩れ横向きに倒れた。


飛び起きたルーローは、大剣を持つ黒いミノタウロスの手首に片手剣で切りつける。危険な大剣を放させる目的である。

同時にミルコが黒いミノタウロスの目に打撃を与える。

どちらもダメージを与えることができない。


( 外皮が堅すぎるっ。)


外からの攻撃が通じない以上、防御を無視するような最上位魔法を使うしかないが、それには千文字以上の長い詠唱が必要になる。

高速詠唱を使ったとしても、戦闘しながらでは二分は時間がかかし、魔力消費も半端ない。


「スリープウェル!」


ラタトゥイユが睡眠魔法を黒いミノタウロスに向けて放つ。

黒いミノタウロスの動作が鈍る。そして、睡眠状態に入った。

精神系魔法が通じる。

糸口が見えた。


「通常のミノタウロスなら二分だけど、こいつは短いかも知れないから気を付けて」

「「わかった」」


クラーレとミルコ、レオナール、ルーローの声が重なる。

クラーレは、地面に降り立ち内部で炸裂する火炎魔法の詠唱を始める。動いていないのであれば、一分で詠唱を終えることが出来る。

ミルコもクラーレの傍により、妖力での氷結魔法の詠唱を始める。

レオナールとルーローは、二人の前に立ち防御姿勢をとる。


三十秒後、黒いミノタウロスが目覚める。


( 早すぎる!)


だが詠唱を止める訳にはいかない。千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかない。


「ラタトゥイユは、俺とルーローに二倍防御魔法を。フロマージュは自動回復魔法を!」


レオナールが指示を出す。その上で回復アイテムの瓶をルーローも飲み込む。

その後防御魔法と自動回復魔法が掛かる。


「三十秒の時間ぐらい稼いでやる。その間に呪文を完成するんだ」


(レオナール! ルーロー! 死ぬ気かっ!)


レオナールとルーローが突進する。

黒いミノタウロスの攻撃をかわしながら、ダメージを与えられない攻撃を繰り返す。

全ての攻撃を捌ききれていない、負傷する。次々と負傷する。

自動回復の速度が勝っているとは、傷を癒してくれるが、二十秒を過ぎたあたりからは疲労が勝り、深い傷を負っていく。

回復アイテムを飲めるタイミングさえない。


残り五秒。黒いミノタウロスは、ついにレオナールとルーローを捉える。大剣がレオナールとルーローの身体を薙ぐ。


「「ぐああっ!」」

「レオナール! ルーロー!」


フロマージュの叫び。

即座に、回復魔法をレオナールとルーローを掛けるが、黒いミノタウロスの大剣が二人に止めを刺してくる。


「ヴィセラ・ファイヤーボルト!」

「内臓凍結!」


瞬時、クラーレとミルコの詠唱が完成され黒いミノタウロスに向けて放たれる。


「グオオオオオオオオオっ!」


黒いミノタウロスの身体が仰け反る。腹が膨らむ。

内側に灼熱地獄の炎と絶対凍土の氷が相乗効果を得て、さらに攻撃力を底上げする。

ダメージが通る。


黒いミノタウロスは膝をついた。しかし---。


「これでも倒れないのか!」

「うそでしょ?」


クラーレとミルコは驚愕の表情を浮かべた。

ダメージは確実に与えた。しかし、倒れない。爆散しない。


黒いミノタウロスがゆっくりと立ち上がると、レオナールとルーローに対して大剣を振り下ろした。

レオナールとルーローは断末魔を上げて、地面に伏した。絶命した。


「レオナール! ルーロー!」

「うそでしょ。二人が死ぬなんて…」


フロマージュとラタトゥイユは、涙をあふれだし口を覆って泣き叫ぶ。

クラーレとミルコも言葉にせずとも悔しい顔を浮かべる。

つまり、全員足が止まっていた。


「ゴオオーーーーーーーーーーーーーォ!」


黒いミノタウロスの雄叫びが発せられる。その咆哮は超音波だった。


「「くぅああっ!」」


全員耳を覆う。しかし、三半規管が狂わされる。特にダークエルフのクラーレとエルフのラタトゥイユは、地面に倒れ込み戦闘不能に陥った。


「クラーレっ!」


叫ぶミルコ。駆け寄ろうとするが脚がふらつき前に進めない。

黒いミノタウロスが、クラーレに対して大剣を振り下ろした。


( クラーレが! マー君が死ぬっ!)


大剣はクラーレに突き刺さらず、数センチ横の地面を穿った。その爆風で土と一緒にクラーレの身体が飛ぶ。


「待たせた。良く持ちこたえてくれた」


普通のミノタウロスを倒して来たギルドメンバーが到着し、一斉に攻撃したため黒いミノタウロスの大剣が反れた。

しかし、その応援の人数も足りない。二十四人中十六人しかいない。


( 八人も負傷で動けないか、それとも---)


ミルコは、悪い考えを捨てた。それよりも、十六人とはいえ援軍がきたことは良かったと思う。

そのおかげでクラーレが助かったのだから。


「みんな。気を付けて。こいつ外からの攻撃は全く通じないわ。異常に防御力が高いわ」

「なんだと!」

「超音波攻撃もあるの。気を付けて!」


ミルコが到着したばかりの仲間に大声で叫んで、黒いミノタウロスの情報を伝えた。

クラーレが、刀を杖代わりにして立ち上がる。


「て、撤退しろ…」


声を絞り出す。


「なんだって!?」

「撤退しろって言っている! ここにいると全員死ぬぞーーーーーっ!」


あらん限りの声で叫んだ。


「なにを馬鹿なこととを」

「そうよ、クラーレ! 全員で掛かれば倒せるわ!」

「鬼ババァ! 現場から離れて感が鈍ったか! 金を払わん取引先からは撤収すべきだろうが!」


難癖を付けては金を払わない企業がある。その上コンプライアンスをこちらに要求してくる。

ある意味魔物の会社。そんなところと取引を続けているとこちらまで共倒れになってしまう。

撤収すべきなのである。


「わかったわ。クラーレ! みんなは防衛ラインまで逃げてくだい。フロマージュとラタトゥイユも一緒に逃げて」

「しかし…」

「この黒いミノタウロスの情報を持って逃げろって言ってんだ。他のギルドに伝えろ!」


クラーレが言っていることは、正しい。

情報を持って帰れば、黒いミノタウロスを倒す手掛かりを見つけられるはずである。

だが人情としては、何人かのギルドメンバーが倒されている以上、背を向けられないという思いがある。


そのとき、黒いミノタウロスが大きな口開けた。


「超音波が来るわ! 耳を塞いで!」

「ゴオオーーーーーーーーーーーーーォ!」


全員、耳を塞ぐと同時に超音波の咆哮が放たれる。

先ほどよりも強烈な超音波。身体全体が激しく揺さぶられる。全員が膝を負って地面に膝を立てる。

黒いミノタウロスが、クラーレを目掛けて突進する。


歪んだ視界の中、黒いミノタウロスが突進してくるのが分かるが、身体が動かない。


(避けられない…な…)


「マーー君ーーーーっ!」


黒いミノタウロスは、突進の勢いのままジャンプし、クラーレの身体を踏みつける。


「ぐはっ!」


地面にクラーレの身体がめり込む。頭蓋骨以外の全身の骨が砕かれた。内臓も殆どが粉砕された。

即死にはならなかったが、死ぬのは時間の問題だろう。

視界の隅に黒いミノタウロスが、クラーレを見下ろす姿が見える。


( やはり、このミノタウロスは俺を倒すためだけに生み出されたようだな)


( ああ。ここで俺は最期を迎えるのか。子供たちとの約束破ってしまったな…)


( 僕たちは、おっちゃ…クラーレおねぇちゃんが、絶対守ってくれると信じてる。だから、僕たちはクラーレおねぇちゃんの力になりたいと思ったんだ。)


ギルドメンバーと一緒にメランジュの門で孤児たちから投げかけられた言葉が脳内を駆ける。


( 僕たちはクラーレおねぇちゃんの力になりたいと思ったんだ。)


教会でフィレとともに暮らしていた孤児たち。

神様へのお祈りを毎日欠かさず続けてきた子供たちが、応援したくれた。

きっと、今でもクラーレが帰ってくるまで、無事を祈ってくれているのだろう。

そんな暖かく無垢な思いによる応援が、クラーレの心の奥に確かな力を与えてくれた。


( そうだ。俺には子供たちの応援があるじゃないか。)


心の奥に意識を潜り込ませる。白い世界の中に金色に輝く光の霊を見つける。その霊を手にとり胸の近くにかざし、おそらく自分を創造しただろう神に問う。


( 子供たちがくれたこの力は、神の力なのだろう)


音声による答えはなかったが、応えはあった。


( 英雄を超える、神力を使える神の子、神人。なぜ魔力を使える)


神からの応え。


( そういうことか。だからダークエルフなのか。)


神からの啓示。


( わかっている。この神の一撃で、あいつを倒して、子供たちを救う!)


天から森を貫く金色に輝く光の柱が降り立ち、クラーレを囲う。


「グオオっ!?」


黒いミノタウロスが、その光を浴びて苦悶の表情を浮かべ、一歩二歩と後退する。


「な、なにが起こってるの!? クラーレ!!」

「何でもないよ。ミルコ。俺は無事だ」


ミルコの叫びにクラーレが応える。

金色に輝く光の柱の中で、浮かぶクラーレ。長い髪が上に噴き上げられ揺らめく。装備も同じように揺らぎ、時々赤いふんどしが見え隠れする。

神力を受け、体中の破損個所が全て癒えていく。


やがて、金色に輝く光の柱が、クラーレを中心にして細くなっていくと、やがて消えた。

地面に降り、髪の毛がふんわりと垂れさがる。

少しだけ全身が金色に輝いている。


「帰ったら子供たちといっぱい遊んでやらないとダメだな」


苦笑するクラーレ。

黒いミノタウロスが、今まで見たこともない行動をとる。クラーレに背を向けて逃げ出したのだ。


「「逃げだしたっ!?」」


圧倒的に優勢だった敗因の一片もない黒いミノタウロスの一方的な戦いだったはずだ。

それなのに逃げ出すとはどいうことだ。


「お前は、ここで、潰える」


クラーレは、腕を黒いミノタウロスに伸ばし手のひらを向ける。


「ゴッズ・ストライク=レイザー・キャノン!」


クラーレの手のひらから、金色の光の束が放たれ、一直線に黒いミノタウロスに向かう。

瞬時。背中からレイザーが突き抜けた途端、身体が風船のように膨らみ爆散した。

黒いミノタウロスは、クラーレの一撃によって倒された。魔石さえ残らずに。


「クラーレ!」

「おわっ!」


ミルコがものすごい勢いで抱き着いてきた。ルナールのオスに抱き着かれれば、当然倒れることになる。

地面に倒されたクラーレの上には、顔をくしゃくしゃにして泣いているミルコがいる。

大粒の涙が落ちる。

クラーレは、優しい顔で応える。


「心配かけたな。すまなかった」

「クラーレが無事ならいいのぉーっ!」

「俺は、大丈夫。死んだりしないよ」

「うわーーん!」


他のギルドメンバーも安堵のため息をついた。だが、喜びの笑みを浮かべることができない。

仲間が十人も死んだのだから。


「ちょっと待ってくれ。神力がまだ残っているうちにやることがある」

「神力?」


クラーレは、ミルコをそっとどかして立ち上がる。

目をつむり、両手を水平に広げる。


( 想像するは、共に戦った仲間たち。)

「ゴッズ・ストライク=リサステイション・アンド・ヒーリング」


クラーレを中心に金色に輝く光のカーテンが広がり、ギルドメンバーとその周辺百メートルほど包まれる。


「なにが起こっているの」

「「げほっ!」」


誰かが何かを吐き出したような声が聞こえた。全員の視線が発生元を見る。


「生き返ったのか?」


レオナールとルーローだった。

ギルドメンバーは、驚愕する。

神官が使う術に蘇生術があるが、それは神殿に行って祈りをささげないと蘇生できないような術だ。

魔法にも妖術にも蘇生させる方法はない。


「他のメンバーも生き返っているはずだ。みんなも傷が癒えてるはずだ」


確かに満身創痍のギルドメンバーの傷も治っている。疲労も回復している。


「クラーレ、どういうことなの。さっきの神力って?」

「話しはあとにしてくれ。みんな揃って凱旋だ!」

「オ、オオーーーーーーッ!」


お茶を濁された気もするが、武器を突き上げ勝鬨を上げた。

蘇生した仲間に肩を貸して、メランジュに向かって凱旋する。


( クラーレの身体の光が収まっている?)



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