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物にも心が

身の回りの物が壊れるとき。

それはもちろん長年使ってきて、物理的に劣化が進んだからという事が原因の一つだろうが、何となく、物にこちらの気持ちが伝わるような気がすることはないだろうか。


たとえば、そろそろ買い替え時かなと思って、新しい商品を物色していると、今使っている物の状態が突然変わったり。

そういった場合、よくなるパターンと悪化するパターン両方があると思う。

私は最近その両方を体験した。


まずは悪化したパターン。

これは、パソコンがそうだった。

長年使ってきて今更感があるが、どうもキーボードのタッチが自分に合わないと感じていた。

それに、ここのところバッテリーの蓄電時間も短くなってきたので、そろそろ買い替え時かなと思っていたのだ。次のパソコンはこれにしようかなというところまで決めたところでついにその時がやってきた。

コンセントで電源を取っているのにもかかわらず、使用中に瞬間的に画面に赤い画面が現れるようになってしまった。よく読む間もなく消えてしまうので、表示された文言は覚えていないのだが、やはりバッテリーに問題があるような内容だった。

赤い画面だから、内容にかかわらずよくない状況であることは明らかだった。


元々調子が悪かったのだから、単なる偶然だと考えるのが当然だとは思うのだが、その時どういう訳かそのパソコンが私に訴えかけているような気がしたのだ。

「どうせもう自分はお払い箱なんだろ。これまで散々こき使ってきたのに、あっさり目移りしやがって」とでも言って、いじけてすっかりやる気を失ってしまったかのような。


実際には、物に心が宿ることは考えにくいし、タイミングの問題だとは思うのだが、なんだか他の物に心を移した自分が責められているような気がして後ろめたい気分になったのだ。


また、良くなったパターンはこうだ。

30年以上使ってきた洗面台の水道の水が完全に止まらなくなってしまった。

きっちり蛇口をしめたつもりでも、ポタポタと水が出続けている。

2リットルのペットポトルを下に置いてみると4時間くらいでいっぱいになってしまう状態だった。

さすがにこれでは水道代もばかにならない。

恐らく水道だけの事を考えればパッキンなどの部品を替えればいいのかもしれないとは思ったが、それこそ長年使ってきたし、使い勝手を良くするためにも洗面台ごと新しくしようと思い、業者に見積もりを依頼した。

今使っている洗面台は下が物入れになっていて、車いすでは正面から洗面台に向かう事ができないのだ。


業者に見積もりを依頼すると同時に、洗面台の下の物入れの中身を全部出し、捨てるものと使うものと取捨選択をし、捨てるものは中身を捨て、リサイクルと燃えるゴミに分別し、さぁいつでも取り換えられるぞとなった時、あれだけ止まらなかった水道の水がピタッと止まった。


これは、「やばい、この主本気だ。このままじゃ捨てられる! おい蛇口、水道の水を止めろ」と洗面台が蛇口に指令を出したとしか思えない。

というのは冗談だが、どうしてこうなるんだろう、と私が水道の蛇口をしばらく見つめていたのは事実だ。


良くなるにしても、悪化するにしても、偶然とともに、何らかの力がそこに働いたに違いないと考えてしまうのは、あまりにメルヘンな思考だろうか。


いづれにしても、物にも寿命はあるのだから、いつかは手放さざるを得ない時がくる。

その日が来たら、心の中でしっかりと感謝の気持ちを伝えようと思う。


パソコンは買い替えたが、洗面台の方は業者が忙しいのかまだ見積もりも出ていない。

もうしばらくは頑張ってもらおうと思うが、次に水が止まらなくなったら後はないから...。

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