第8話 再建開始、語り手も交代?
ど~も、土地神のマコトです。
何かを忘れてる気がしますが、まぁ良いでしょう。
神界で陽光さんから代行証の手形を貰い、地上に転送されました。
目を開けると境内の真ん中、ちょうど石畳の分岐点に立っている感じです。
陽光さんは前と同じように半透明の状態で私の前に浮いてますよ。
地上ではこれがデフォなんですかね?
「何か変な事考えてるな? 時間は有限、さっさと札を貼ってこい」
「……札? 私、陽光さんから貰った式神のモノ以外には持ってないのですが」
「あ゛?」
彼は少し考えると、頭を掻きながらめんどくさそうに答えてくれた。
何ですか? 陽光さんのクセなんですか、その仕草は?
「馬鹿野郎ぅ、よく探してみな。俺は確かに渡してる」
馬鹿野郎も口癖と、……むむ、ならば探してみましょう。
懐には式神の札がありますし、もしかして袖の中?
「ありました、いつの間にか袖の中にお札が4枚も」
「ここに送る際に仕込んどいた。ソイツで此処を囲うように、敷地の四隅へ貼ってこい」
「何の札かの説明は―――」
「……」
分かりましたよぅ、貼ってきますよぅ……私は鳥居を潜り、下に行こうとするが陽光さんに止められる。
「ちなみに村まで降りる必要はないからな、ほれさっさと行ってこい」
どうやら敷地の端4か所で良いみたいです。
適当な木にでも貼り付けましょう。
「うぃ、終わりましたよ。それであの札は……? 」
「あれはちょっと特殊な結界を形成するものだ、人払いと+αな。さてと……手形を持って此処に立ちな、マコト」
陽光さんは石畳の分岐点を指し、私は半壊した神社を見るように立たされる。
「見事に半壊ですねぇ、よくこれを1週間で直すと言ったなぁ私」
「今からお前にはこの神社の修復を行ってもらう。3~5日間、結界から出ずにな」
「そんなに? 」
「そうだ、お前に渡した手形に宿る力を使ってな。結界から出た瞬間に効果は失われるから注意しろよ? 」
……さすがに色々とマズイのでは? とりあえず異議を唱えてみましょう。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。私が動けなくなったら村の守りはどうするんですか?」
「そこん所はちゃんと考えてある。色々と予定が早まるが、お前に損はない事は確かだ」
「村の事をまだ把握してn―――」
「安請け合いをしたお前の自業自得だ。さぁ始まるぞ、踏ん張れよ」
彼の話が終わると場の空気が変わる、結界が発動したようだ。
……が雰囲気以外特に変化はない、ただ雲の流れや太陽の動きが早い?
そのように感じますね。
「よし、ちゃんと発動したな。次はコッチだ」
陽光さんは私に手を向ける。
光が集まり、それは持っている手形に入り込んでゆく。
次第に手形も姿を変え、光球となり身体に吸い込まれていった。
「おお? いきなり衣装が変わりましたよ? コレは何の―――」
「有職装束。ほれ、集中しろ」
「そんなサピッと言わなくても―――」
「……」
ハ~イ、集中しま~す。
お願いですから無言での対応は勘弁してください。
光を受け入れて数秒後、力が溢れてくる感覚がした。
中から暖かい何かが湧きあがってくる。
暖かい?
……いや、暑くなってきた。少し汗が出てきましたよ。
~5分後~
もう【暑い】ではなく、【熱い】かな? コレは。
夏場に金属の床に立っているような感覚。 汗が止まらない。
~10分後~
……さすがに熱すぎる! 内側から火で炙られるような?! それとも胸部に焼き鏝を押し当てられた?!
どれも体験はしたことないけど、そうとしか言えないッ!!その場に何とか立つがそれも時間の問題、常人なら耐えられないと思う。こ、コレは幻覚ですか? それにしてはリアル過ぎる!
「…………ィ! ……ッ?! 」
喉が焼け、声が出ない。痛い、熱い……何も、見えない……死?
身体中から光が溢れ、白い世界に意識が飲まれそうになった時、陽光さんの声が聞こえた気がした。
でも……身体が、意識が、もう……
「語りで余裕かましてるからそうなるんだよ。ホレ、しっかりしろッ!!」
光は収束し、私の身体をほのかに包むようになった。
陽光さんが手を貸し、力の流れを調整してくれたようです。
「天照の力を一部分って言ったろ? たかがそれ位操ってみろって」
……全く、無茶な事を言う人だ。薄情な村人さんもだけど、これは陽光さんも負けず劣らずです。
しかも自分の力なのに【たかが】って言っちゃいましたよ。
「ほぅ、余計な事を考えるまで持ち直したか」
き、キツイィ……
「見え見えの嘘を言うんじゃねェ。力使って治療までしてやったんだ、普通に話せ」
「……いえ、今でも結構辛いのはホントなんですが」
「口に出るくらいなら大丈夫だな。手を神社に向けろ、式神が出せるはずだ」
言われるがまま手を向けてみると、次々と式神が召喚される。私が最初に出したモノとは違っていた。
いや、顔に白い袋を被ったような姿ではあるが、文字絵ではない。
【棟梁】と書かれた式神を始め、【大工】と書かれたモノが数十体現れる。
「お前ぇさんの神社かい、コレは? 」
……え、式神って話せるの?
「なぁに固まってんだ、お前ぇのかって聞いてんだよ! 」
「ひゃい! い、一応そう、なのかな……?」
「質問を質問で返すんじゃねェっ! 全く最近の若ぇモンは……」
うわぁ……めんどっちぃよぅ、神界に行く前に見つけたアレをさっさと渡してしまいましょう。
「よし、あとは任せたぜ親っさん。 マコトもしっかりやれよ~」
「これをお願いしm……え? ちょっ、待ってくだ―――」
言い切る前に陽光さんは消えしまう。
境内に残ったのは私と式神たちだけ。
彼らはどこからか木材や道具を取りだし、準備を進めている。
「えぇ~……まだ結界の効果も聞いてないのにぃ」
「ほぅほぅ、事情は大体分かった。気に入ったぜ、嬢ちゃん」
まだ話してないのに分かったの?!
「細けぇこたぁ良いんだよ。それよりさっさと力を送ってくれ、外の時間の4日で仕上げてやるからよ! 」
よ、4日? とりあえず手を向ければ良いのかな?
後はこう、何かを注ぐようなイメージで……
「きた……キタキタキタァッ!! よぅっし、お前ぇ等気合入れろぃっ!!」
「「「おおっ!!」」」
棟梁の指示で足場の組み立て、材料の加工等々……作業を進めていく。
私は実際に見た事はないのですが、各動きに無駄がないです、多分。
これならホントにできるかもしれないですよ、皆さん。
※※※
~結界の外 鳥居前~
さてマコトが動けない為、ココからは俺が語らせてもらうぜ。
ああ? 誰だって?
馬鹿野郎、天照大神の陽光だ。
とりあえず下まで降りていくわけだが……
「あの件、連絡しとかんとな」
連絡先は神使養成所。
神使とは神の使者、もしくは神の眷族で神意を代行して現世と接触する者の事だ。
現世でよくあるのだと龍や狐だと思うが、間違ってたらスマン。
マコトへ仕えさせる動物神なんだが……予定より一月早いんだよなぁ。
『はい、神使養成所 ヤマト支店です』
「おぅ、陽光だ。 真神はいるか? 」
『ええ、いますよ。 繋げますね……ショチョー! 陽光さんから―――』
大口真神。
現世の日本に生息していたニホンオオカミが神格化したもの、御神犬とも呼ばれる存在。
ま、この世界では養成所の所長をやってる。
『お待たせいたしました、真神です。本日はどのようなご用件ですか? 』
「チョイと予定が早まってな、例の2体を頼む」
『【シロ】と【クロ】ですか? あの子たちはまだ―――』
「実戦なら降りてから積み重ねりゃ良い、お前も知ってるだろ? 訓練なんて気休めなのは」
『……わかりました。それでは後日書類を―――』
細かい内容は省略させてもらうぜ、手続きの事聞いてても面白くないだろ?
真神との話が終わり、そのまま村へ向かった所からだ。
~ヒノモト村~
石段を降り切ると、目の前には田畑が広がり、村民は農作業をしている。
周囲には木造の家屋も転々と存在しているが、ほとんどは空き家だ。
雨風だけでなく幾度の物の怪の襲撃も重なったのだろう、所々傷んでいる。
これでも昔はもっと人もいて活気に満ちていたんだぜ?
もう数十年も前に話だがな……
「さてと、そろそろ来るはずなんだが」
空を見上げると2つの光球が降りてくる。
それに気付いた村人たちは石段の前に集まってきた。
もちろん俺の姿は見えていない。
……ん? なんでかって? こっちにも色々あるんだよ。
必要な時以外は人前に姿を現さない、それが一族の約束なのさ。
んでもって、今回はその必要な時。後で始末書を書かなきゃいかんがな。
「子供達は家さ入ってろ、物の怪がもしんねェ」
「さっきの娘っ子はどっただ? あの娘なら―――」
さすがに不審がってるな、どれそろそろ出番だ。
少し上昇して、姿を……
彼は目を瞑り、力を込める。
見た目は少年から青年になり、白い着物ではなく直衣を着た格好へと変わった。
……まぁこんなもんだろ。後は姿を見せて、声にエコーを掛けながら話すだけだ。
『……ヒノモト村の村民よ、我は天t―――』
「ななななんだだっ?! この声はっ!?」
「こ、怖ぇだよ……今度はなんの物の怪だ? あまてってなんだ? 」
おいコラ、人のセリフを遮るんじゃねぇ。【あまて】ってなんだよ、こっちが聞きてぇ。
『落ち着くがよい、我は天照。天照大神 陽光ぞ』
「あ、あまてらす……? もしかして新しい物の怪だが?! 」
「バッカ、あまてらすってのは御天道様の……」
おうおう、与作が御天道様って言った瞬間に顔色を変えやがった。
さすがに知ってるみたいだな。
さっさと用件を話してしまおう。
俺は現在の村の状況、派遣した土地神の事を話す。
再度顔色を変えた村人たちはマコトの事を話している。ただ一人、村人Bを除いて。
あの目、アイツ俺の事まで信じていないようだ。よっぽど嫌な事でもあったんだろうな。
『……土地神が動けない今、我は新たに紳使を2体使わせた。さぁ、姿を現すのだ』
左右に浮いていた光球はそれぞれ姿を変える。
白と黒の柴犬が現れ、同時に一鳴き。
「「ワンッ!」」
『ヒノモト村土地神 マコトの紳使、白柴のシロと黒柴のクロ。しっかり役目を果たすのだぞ……』
そう言って自身の姿を消す。
あ~疲れた、あの話し方は苦手なんだよ。
アイツ等ならなんとかなるだろ、後の事はマコト次第さ。
ど~も、マコトです。
趣向を変えて私が書くことになりました
今回は挿絵でめたるぞんび様(http://ncode.syosetu.com/n5228ct/ @METAZONE_2015)より、私の有職装束の姿を描いていただきました。
Twitterでは固定ツイートに載せていましたが、本サイトではこの話を投稿する際に載せる予定だった為、遅れてしまいました。楽しみにしていた読者の皆様、申し訳ありません。
そして、めたるぞんび様。今回はこのような素晴らしいイラストを描いていただき、本当にありがとうございました!
さて今後の更新予定になりますが、現状ではHeroicを不定期に下げ、土地神ライフは月1更新でやっていくと作者は考えています。 あくまで予定だそうです。
えっと、カンペに書かれているのは以上ですね。
最期まで読んでいただき、ありがとうございました。
今後も『土地神ライフ』をよろしくお願いします、それではまた次の機会に……ではでは~