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土地神ライフ  作者: KUMA
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第58話 最悪の再会


~ヒノモト村 開発地区~


 さて、今回でとりあえず村で解放する地区は最後になります。名前は【開発区】……廃墟が多く並ぶ場所で、村を広げる際に活用しようと予定していた地です。

 水ちゃんと一緒に潜入していますが様子がおかしい、物の怪が一体もいないんです。ようやく見つけたと思えば神社とは反対方向の、村の外目がけて走っていきますし、何があったんでしょうか?


『ええんやん。おかげで楽もできるんやし、その八頭はんって方が待ってるんやろ? はよお迎えに行ってあきまへんとなぁ』

「そうですね、このチャンスを逃さずにガンガン進んじゃいましょうか」


 念のため気配を探ってから道に出ましょう。


 よし、大丈夫ですね。

 堂々と姿を晒しましたがここまで静かだと逆に不気味です……道なりに進んでいると廃墟が多くなってきました。村のおじいちゃん達に聞いた話なんですけど、昔は武家屋敷などもたくさんあったみたいです。でも時が進むにつれて人は離れていき、栄えていた屋敷も廃れたと。

 もしかしたら座敷童の蕾さんもかつて住んでいたは此処の地区だったのかもしれませんね。


「ん、廃墟の奥から声が聞こえませんか? 」

『これは物の怪の声やね、何かに襲われてるみたいな感じや』


 私以外に戦っている人がいる? でも八頭さんは捕まってますし、誰でしょう……まさかシロが? 

 何らかの方法で敵の手から逃れたのかもしれません、彼女なら無理やりにでも突破しそう……とすれば急いで援護に向かわないと!


 私はその場から駆け出し、廃墟の瓦礫を飛び越えていきます。近づくにつれて戦闘音が大きくなっていきます……何か大きい物体が暴れ回っているように、ズズンッ、ズズンと。シロが大技を使った時でもこんな大きな音と振動はなかったですね。


「着いた……ほぁっ?! 」

『待ってぇなマコトちゃん……なんやおっきい蛇さんやねぇ』


 景色が広がるとそこには一匹の大蛇が大暴れしていました、物の怪が溜まっている場所を尻尾で薙いで空中に浮かし、無防備になった所をバクンッと一飲み……次々と食べていきます。動きが止まったかと思えば本体以外に七つの頭を出現させ、大きな口を開きます。


「……水ちゃん、防御の補助をお願いします! 」

『あぁ、広範囲の無差別攻撃やね』


 水ちゃんに霊力を通わせて結界を展開、イメージとしては結界の上へ更に水の膜を重ねるような感じですね。

 大蛇は十分な力を溜めると計八つの頭から熱線が放ち、周囲の物の怪を一掃します。それぞれの首を縦横無尽に動かしながらの無差別攻撃……見覚えがあります、神界でスサノさんと遊んだ際に八頭さんが使っていましたもん。

 あの時は三種の神器を使ったので防御もできていましたが、ここにそのようなモノはありません。運良く熱線はギリギリのところで当たっていませんが、直撃したら終わりです。


「八頭さん……! 私です、マコトです! 」

『マコトちゃん、そんな都合よく声が届くとは――』

『カァァァッ……へ、マコトさん!? わ、わわッ、み、皆熱線止めてぇ~! 』

『届くんかいな……まぁええか。大怪我せんで良かったねぇ、マコトちゃん』


 駄目元で声を掛けてみて良かった、でも敵だった場合の事を考えていなかったのは迂闊だったかもしれません。華ちゃんがいたら"馬鹿かお前はッ! "って怒られてる所ですね。


 襲撃に備えて八頭さんは八岐大蛇状態のまま状況を伝えてくれます。どうやら私が他の区を開放していったことで物の怪の数が減っていき、隙が出来た所を狙って大暴れを開始したそうです。彼女はこのまま他の区を解放しながらヒノモト山の山頂を目指す予定だったと。


「山頂、ですか? 」

『は、はい……実はあの自称土地神さんにスサノさんが連れて行かれたんです』

「それってボロボロの宮司みたいな衣装を着た人ですよね? たしかギシンと言う方ですよ」

『そうです! あの人が近くにいる時はスサノさんでさえ手も足も出なくて……力の封印も強かったのでこの状態にすらなれなかったのですが、離れた今ならと思って』


 ふむ、スサノさんを山頂にですか。あそこには満月湖がありますね、たしか霊脈の源泉も一緒に……おそらく彼女に操作させるつもりなのかもしれません。まだ幼いですが素戔嗚尊ですからね、操作できる可能性は十分にあるでしょう。


「騒がしいと思ってきてみれば」

「その声は――」

『ッ!? マコトさん避けて! 』

『しまった、間に合わへん! 』

「……え? 」

『くッ! 』


 声の方角へ振り向いた時、目の前に薙刀の刃が……当たる前に八頭さんが庇ってくれたおかげで助かりましたが、彼女の尻尾に刺さってしまいました。この薙刀の形状、そしてあの声は彼女しかいない。


『マコトちゃん大丈夫か!? 』 

「え、ええ……八頭さんのおかげでなんとか。でもあの声は――」


「……チッ、仕留め損ねたか」


体勢を持ち直し、声の方角へ視線を移すと彼女がそこに居ました。

しかし様子が何処かおかしい……白いダンダラ模様の羽織は同じですが、あの綺麗な白髪は灰色に、そして肌からは生気が失われています。所々に黒い筋の様な模様が入っており、瞳の色も反転しているではありませんか。周囲には黒い靄のようなモノが漂っています、瘴気でしょうか?


「シロ、ですよね? 」

「そうだ主殿、アチキの名はシロで合ってる」

「は、ハハ……何の冗談です? さすがに私も怒り――」

「いや、今となっては"元"主殿の間違いだったな」


 彼女は薙刀をもう一本出現させて刃をこちらに向けて構えました……理解の追いついていない私はその場に棒立ち状態、近くに八頭さんと水ちゃんが居るとはいえ無防備です。

 水ちゃんは自身の霊力を使って周囲に水の結界を展開し、八頭さんはさらに囲うように大きな身体で私の姿を隠してくれます。


「え……二人とも何をやってるんですか? シロですよ、私と一緒にずっと――」

『残酷かもしれんけど、マコトちゃん。シロって子はもう……』

『マコトさん気をしっかり! 彼女は敵です! 』

「う、嘘だ……ほら、シロも何か言ってくださいよ」


「……我が主、この地の新たな土地神である"暗鬼"の命により、貴様を討ちに来た」

「――――」


※※※

 

 あの言葉を聞いて、ショックのあまり私は気を失ってしまった。目が覚めた時には八頭さんがボロボロな状態の姿で立っていました。

 どれだけ長い時間気を失っていったのでしょう……水ちゃんに声を掛けるも、返答はありません。八頭さんは私を守りながら簡単にですが状況を説明してくれました。まず、水ちゃんはずっと結界を張って守ってくれていたそうです。そして自身の霊力が尽きてしまい、姿を保持できくなったと。

 その後は八頭さんが代わったのですが、八岐大蛇状態では小回りが利かず、人の姿に戻って応戦……しかし私を守りながらとなると"彼女"と相性が悪く、防戦一方となっているそうです。


「大丈夫、私が時間を――」

「いや、これで終いだ」

「ガフっ!? 」


 結界が砕かれ、八頭さんの身体が薙刀で貫かれた。私の顔にベチャリと血が飛び散り、八頭さんは膝を着いてしまいます……その向こうにシロの顔が見えました。私の姿を見るとニヤリと笑みを浮かべ、薙刀を引き抜こうと八頭さんの身体に足を掛けます。

 しかし力を込めても抜ける事はありません、どうやら八頭さんが手で掴んで止めているようです


「む? 」

「ま、まだ終わってませんよ……シロさん! 」

「死にぞこないめ、フンッ」


 最後の抵抗も空しく、薙刀は引き抜かれ身体から勢いよく血が噴き出してしまいます。雨のように降り注ぎ、周囲を赤く染めていきます。


「あ、あ――」

「マコ、トさん……逃げ、て…………」

「逃がすと思うのか? 」


 目の前に立ちはだかり、彼女は血の付いた刃を向けて近づいてくる。

  

「う、うわぁぁぁぁぁっ!! 」


 無我夢中で札を投げつける、起動させると炎の球体がシロに向けて飛んでいく……その間に転びながらもその場から離れ、体勢を何とか持ち直して向き直ります。


「なんだ、やればできるじゃないか。そうでなくては殺りがいがないってもんさ」 

「はぁ、はぁ……シロっ! 」


 共に村の再興を目指し、頑張ってきた仲間が敵として現れてしまった事をようやく認識しました。 

 信じたくない現実、辛く、悲しい戦いが始まってしまいました。 


お久しぶりです、作者のKUMAです。

先月はちょっとばかし体調を崩してしまい、後書きをお休みさせてもらいました。


さてさて、今回のお話ですが……マコトにとってはとても辛い話になりましたね。

はい、クマさんも感情移入しすぎて書くのが辛かったです。


敵となったシロですが、詳しく描写はしてませんが戦い方は大きく変わっています。本来自身の霊力は身体能力強化や武器に宿して威力の底上げ等にしか使われていなかったのですが、敵なると薙刀の様な形状の霊力弾を発射したり、分身を作っての同時攻撃、瘴気の衝撃波等々……色々と厄介な敵に仕上げております。

書き進めていてマコトがちゃんと戦えるのか不安な所がありましたが、とりあえず武器を手に取って対峙する事までは出来ました。あとは彼女次第となりますが、まぁ何とかなるでしょう。


あ、武器で貫かれてしまった八頭オロチについてですが、ちゃんと生きています。彼女の能力である自己再生能力で傷を治療中ですが、重傷なので気を失いながらの自己再生となり、再生速度は本来の十分の一程度まで下げっています。


……とりあえず今回はこれくらいで終わりましょう。

お話はまた次の機会にでも、ではでは~


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