第57話 人に与えられた刃
作者の体調不良により、今回の後書きはありません……申し訳ない
~神社~
もう一本の霊刀、水那斬……水ちゃんと共に神社へ帰還。華ちゃんはとても複雑そうな表情していました、無事を確認した後はそのまま何も言わず消えてしまいます。色々と思う所があるのでしょう、それよりもまずは玄内さんに確認を取らないといけません。
「……で、何を聞きたいんだ? 」
「それはもう、この霊刀についてですよ。……あ、一応紹介しますね。私の隣にいるのが水ちゃんです」
『どうも~玄ちゃん、久しぶりやなぁ。まぁ見えてはいないんやろうけど』
彼女が言うように玄内さんには見えていません、しかし彼はその場に胡坐をかきながらで軽く頭を下げます。仮に水ちゃんを使ってたのであれば霊力はあると思うのですが、水ちゃん曰く、動きに合わせて力を発現させていたそうです。
「俺はそいつを託されただけだ」
「託された? 」
『懐かしいなぁ、玄ちゃんがまだシワシワじゃなかった頃やねぇ――』
玄内さんは"託された"事について話し始めます、水ちゃんは脇で補足を。
フムフム……この霊刀、水那斬は暴走した神を殺める為に作られたモノのようです。普通の武器では神様には敵いませんからね、いや斬られればもちろん痛いですよ?
普通の武器で負った傷は速く治るんです。瞬時に治るとまではいきませんが、こう傷口が白い光で覆われてスーッとゆっくり元に戻る感じに。でも霊力や瘴気が宿ると途端に遅くなります。瘴気の方が厄介ですね、私やクロ、スサノさん、八頭さん、あとは璃狐さんと枯狸さんには大きな悪影響を及ぼします。治りが遅くなる程度で済めばいいのですが、最悪の場合は堕ちます。一番分かり易い例えは今回襲撃にきた自称土地神さんですね。
玄内さんが若かりし頃……この村で医者として動き始めたばかりの頃はすでに土地神は存在しておらず、瘴気に蝕まれた人々が多かったそうです。その患者さんの中に霊刀の所有者、"守人"と呼ばれる一族の方がいました。
彼は霊刀の力を用いて戦うだけではなく、瘴気に侵された人々の治療も請け負っていました。しかしある強力な物の怪との戦いで相打ちになり、重傷を負う事に……玄内さんの治療で一命は取り留めましたが、身体は瘴気に侵され、再起不能となってしまったそうです。
諦めずに治療方法を探し、ヒノモト山の山頂にある湖の水が瘴気を打ち消す効果があると分かった時には手遅れ……守人の身体は変異を始めていました。
「人が物の怪になりかけていた? 」
「そうだ。左腕から顔の半分に掛けて肌は灰のようになり、頭部には角、白黒が反転した瞳、容易く肉を斬り裂きそうな牙と爪……誰がどう見ても化け物だ。理性はまだあったがそう長くは保てないと言っていたな」
『ウチも治療はしてたんやけどね、一人じゃ瘴気の進行を抑えるので精一杯やったんよ』
「そして奴はソイツを持ちながら俺に言った」
【俺が化け物になる前に殺してくれ】
「持つ手から煙が出ていた、そしてまだ人である半身では泣いていた。自身の身体が変わっていくのが怖かったんだろう。俺も諦めたくなかったが……それ以外の方法が無かった」
そして覚悟を決めた玄内さんは霊刀を手に取り、彼へ刃を突き立てた。消えるような声で感謝と霊刀を託す事を言われたそうです。その日以降玄内さんは自分が出来る限りの範囲で物の怪を討ち、私が現れるまでの間ずっと一人で戦っていたと教えてくれました。
「ま、お前さんが現れてからは大分楽をさせてもらったがな」
「もっと早く言ってくれれば――」
「その後守人の家行った際に決まりが書物を見つけてな、こう書かれていた。"土地を守る神にこの霊刀の存在を知られてはならぬ"と。ましてやいきなり現れて、"私が新しい土地神です"って言われても信用できるわけないだろう」
それもそうですね、私も信用できません。話によりますと、ただの人間と油断してきた相手をグサリと急所を一刺しする暗殺者のような戦い方をしていたようです。守り人さんの家で得た書物で物の怪の急所を知り、そこを的確に突けるように何度も練習を重ねたとか……水ちゃんも残った霊力を節約しながらですが身体能力を補助していたそうです。
『でもなぁ、度重なる戦闘で霊力はすっからかんになってもうて……』
「さすがに使い過ぎたせいか、顔の無い物の怪を討った次の日から身体は重くなった。一つ目の鍛冶師に見せたが普通に研ぎ直されて終わり。……まぁ切れ味は申し分ないから野盗から身を守る位には使えたな」
『そうなんよ~、まぁ退けるだけで殺めてはおらんけど』
霊刀の力を失っても人を退けるほどは動ける、それって相当の実力者って事ですよね? ですが玄内さんはすかさず補足を入れてきます。"自分の事だけで精一杯だった"と、いくら鍛えていても人の力には限度があります。たとえその事実を知ってても玄内さんに戦ってほしいとは言えませんね……歳の事もありますし。
「そうだな、身体にガタもきていたから丁度良い。マコト、今後はお前がソイツを持っててくれ」
「思考を読まないでください……良いんですか? コレは人に――」
「良いんだよ。別の奴や敵に渡すよりも、お前みたいな"人間味のある土地神"に渡した方がマシだろう」
「はぇ? えっと、あ、ありがとうございます? 」
「話はもう良いな、俺は怪我した奴の様子を診なきゃならん」
ん、ん~……褒められた、で良いんですよね? 玄内さんって基本的に私に対して当たりが強かったので、予想外の言葉に驚いてしまいましたよ。馬鹿にされた気もするのですが、ここは言葉を素直にかつ前向きに捕らえましょう。
さてさて玄内さんが退場し、この場には私と水ちゃんの二人だけとなりました。次の区域の解放について話しましょうかね。
『ほな今後ともよろしゅうね、マコトちゃん』
「よろしくお願いします、水ちゃんさん」
『いや、"さん"はいらんて。水ちゃんって気軽に呼んでええよ』
「分かりました、……あ、敬語は癖みたいなものなので気にしないでください」
とても緊急時とは思えない程、まったりとした会話が続きました。途中華ちゃんが来て真面目な雰囲気になりましたが会話の主導権はあっさりと水ちゃんへ……何度か脱線しましたが、次は八頭さんを救出する方向で話は決まっていきます。
クロも偵察から戻り、取り戻す区域も決まりました。向かうのは"土地開発"の区域、分かり易く言うのであれば村を拡張する際に使われる場所です。空き地や廃墟があり、物の怪の出現頻度も多い為私達が管理している土地……もう少しで地に溜まった瘴気を浄化できそうだったんですけど、それはまた取り戻した後に再開すれば問題はないでしょう。
『八頭を取り戻せれば俺とクロもお前に同行できる、だが奴は"八岐大蛇"……敵はその強大な力を利用してくるかもしれん』
『八岐大蛇……また厄介そうな相手やなぁ』
「ま、まだ八頭さんが敵になったというわけでは――」
「いえ、マコト様、可能性は大いにあります。八頭さまだけではなくスサノ様も囚われておりますゆえ、最悪の場合を想定して準備いたしましょう」
クロの言う通り、なのかも。相手は元ですが土地神、神界の知識も持っているはず……格が上の神をも墜とす方法を知っているかもしれません。
そしてこの時はまだ知らなかった、その区域に"彼女"がいる事を。私とクロにとって最悪の展開になる事を……




